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リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

トランスファーパッケージ的な考え方をもとに作業療法の展開を考える

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CI療法の構成要素のひとつに、Transfer packageというものがあります。これは、日常生活での麻痺側の使用を促すための手段のひとつとなっており、このような考え方を知っておくことで、リハビリの進め方もかなり違ったものになると思われます。今回、Transfer packageの概要と実施方法を中心に、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

 Transfer package的な考え方をもとに作業療法の展開を考える

参考文献

天野 暁ら「Transfer package」CLINICAL NEUROSCIENCE Vol.35 no.5 2017.5

Transfer packageの概要

Transfer packageは、CI療法をの構成要素のひとつであり、日常生活での麻痺側の使用を促す(訓練での麻痺側の使用を実生活へ反映させる)ための介入手段です。
Transfer packageはその言葉から、いくつかの構成要素があります。
①行動契約
②モニタリング
③問題解決
④自宅技能課題
⑤活動スケジュール
⑥自宅訓練
などがあります。
麻痺側の日常生活での使用のための心理学的側面として、「自己効力感」「認知された障害」が挙げられます。

 

①行動契約

行動契約では、麻痺側上肢を医療施設以外においても出来る限り使用するということをセラピストと対象者の間で契約をかわすことです。
本人、状況によっては家族や介助者なども含まれます。
麻痺側上肢を使用する具体的な日常生活上の課題を挙げたのち、それらを文書化し、対象者・セラピストが署名します。
麻痺側上肢使用の契約書を作成するため、これらの手続きは通常訓練初日に完了しておく必要があります。
・麻痺側上肢を良くして何がしたいか
・麻痺側上肢の回復には、麻痺側を日常生活でしようしなければならないことの説明
・資料や動画などから、過去の対象者の長期的な回復を確認してもらう
などを行う必要があります。

②モニタリング

対象者自ら麻痺側上肢の使用に注意・関心を向け、麻痺側上肢での活動を観察するように誘導する手順、すなわちセルフモニタリングのことをさします。
麻痺側上肢使用についての日記の記載(毎日)や、日常生活課題での麻痺側上肢の使用頻度と使用感についての記載を行います。
モニタリングにより麻痺側上肢使用への認識を高め、実生活への使用・参加を定着できるように促していきます。

③問題解決

モニタリングの内容についてセラピストと対象者で話し合い、成功体験や、麻痺側上肢の使用がうまくいかなかったことのエピソードの共有を行います。
そこから、セラピストは具体的な解決策(自助具、環境調整、麻痺側上肢の役割の修正など)を提案し、問題を解決していきます。
セラピストが当たり前だと思っていても、対象者からすると「はっ」とするようなこともあるため、常にアドバイスを心がけるようにする姿勢が大事です。

④自宅技能課題

まず、対象者が日常的に自宅で行っていることを把握します。
対象者の1日の生活スケジュールや生活の流れを把握し、その中で、対象者が自宅で麻痺側上肢を使用する課題を1日ごとに10個決めていきます。
決定した課題は用紙に記載し、訓練終了後に対象者に渡されます。
課題選定では、対象者が比較的易しいと感じる課題5個、残り5個は挑戦的(少し難しい)な課題を選定します。
最終的には、麻痺側上肢を参加させた活動を毎日30分程度行えるようにすることで、セラピストからのモニタリングと問題解決策の提案が毎回なされます。
以下の記事をご覧いただくと、課題選択のためのツールの事が書いてあります。

麻痺側上肢の使用を促進するツール:ADOC for Hand、HSAチェックリスト - 自分でできる体健やかブログ

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⑤活動スケジュール

医療施設での活動内容の記録を対象者に提供します。
情報提供により、改善を訓練内容の変化・経過から実感することが可能となります。
モチベーションアップは、より訓練に積極的に参加してもらうことにつながります。

⑥自宅訓練

自宅での自主トレーニング(15〜30分)をさします。
集中訓練期間中では、自宅技能課題の代わりに導入されることが多いようです。
自主トレと自宅技能課題を同時に行うことは対象者への負担を強め、心理的な負荷もかけやすいことも考えられるためです。
自宅にある物品を使用することで、自主トレをうまく導入できると、集中訓練後に自主トレをスムーズに導入できるメリットがあります。
セラピストが10課題程度選定し、その中から対象者が1〜2課題を選び、1日30分程度訓練を行います。

心理的側面:自己効力感

自己効力感は、「ある活動を自分で行うことができる、と自分の遂行可能性を認識していること」です。
日常生活のなかで麻痺側上肢が「使えている」という達成感から自己効力感は向上すると考えられます。
麻痺側上肢の積極的な使用がどのようなリハビリ効果が出るのかという認識を持ってもらうこうが大切です。
自己効力感の向上は、さらに積極的な麻痺側上肢の使用につながります。

心理的側面:認知された障害

認知された障害とは、「ある活動を行う上で、対象者が物質的、あるいは心理的に困難を強く認識すると、その活動を行わずに現在の行動を変えようとしない」という考え方です。
そのためセラピストは、ある活動を行うことは、対象者にとって利益があるという認識を持ってもらうようにすることが大切です。
また、物質的な困難に対しては、環境調整や課題の難易度調整を行い、心理的障害には正のフィードバックや問題解決方法の提案、誤った情報の訂正などを行います。

アウトカムの評価

評価ではmotor activity iogが使用されています。

Motor Activity Log(MAL)の概要と評価方法 - 自分でできる体健やかブログ

Transfer packageは短期間での変化だけでなく、長期効果も得られることが報告されています。
また、CI療法終了後からもさらなる機能改善がみられるため、Transfer packageが重要な役割を担っていることが考えられます。
また、脳の変化としては、Transfer packageを含むCI療法と含まないCI療法の比較では、Transfer packageを含むCI療法では感覚運動野における上肢領域と海馬において組織密度の観点から有意に増大がみられたとの報告があります。

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