自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

脊髄損傷における自律神経過反射、起立性低血圧への対応とリハビリテーション

【スポンサーリンク】

脊髄損傷の自律神経障害のなかに、自立神経過反射と起立性低血圧があります。今回、自律神過反射、起立性低血圧への対応とリハビリテーションについて、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

 脊髄損傷における自律神過反射、起立性低血圧への対応とリハビリテーション

自律神経過反射

自律神経過反射は、一般的に第5、6胸髄以上の高位脊髄損傷でみられる自律神経障害をさします。
具体的な症状は、麻痺域への侵害刺激に対し、収縮期血圧が20-30mmHg上昇することになります。

発症機序としては,急性期の脊髄ショック期から亜急性期において、損傷レベル以下の遠位性交感神経と脊髄の間の反射弓が,上位中枢のコントロール から逸脱することによるといわれている. すなわち, 麻痺域に対する侵害刺激に対して交感神経が興奮状態になり,麻痺域の血管が収縮するが,脊髄の損傷によって,麻痺域からの侵害情報が中枢まで伝達されないため上位中枢からの血圧調節ができず,残存脊髄との間の反射弓が強調され,さらに血圧が上昇する.

美津島 隆「自律神経障害への対応」CLINICAL REHABILITATION Vol.26 No.5 2017.5

侵害刺激の原因は損傷レベル以下の皮膚や筋、内臓等への刺激で、主に膀胱や直腸等の充満によることが多い傾向にあります。
侵害刺激に対し、損傷レベル以下の皮膚、筋、腎、腹部内臓などを支配する交感神経の過剰に興奮により、その部位の血管が収縮し、時には300mmHgを超えるような血圧上昇がみられることがあります。

心拍数では、一般的に心臓に向かう交感神経はは第5、6胸髄以上の脊髄より出ているため、 血圧上昇の反応として、徐脈となる場合が多い傾向にあります。
しかし損傷部位によっては、頻脈(心臓に向かう交感神経が損傷部位より低位から出ている場合)となることもあります。
損傷レベル以上の領域では、血管拡張に伴う顔面紅潮、発汗、皮膚温の上昇、鼻閉等が認められます。
発汗はコリン作動性交感神経の過活動によるもので、頭痛も頭蓋内動脈拡張の結果といされています。
脊髄損傷後の脊髄内の交感神経ニューロンや求心路が変化により、心循環器系異常や過反射を誘発しているという報告もあります。
末梢血管で交感神経系の受容体(α受容体)の感受性の変化を指摘する報告もあります。
過反射の発生頻度はの完全四肢麻痺では発症率91%に達します。

過反射を放置すると、脳内出血や網膜剥離てんかん発作など死に至る合併症を生じさせる可能性があります。
高位完全脊髄損傷者では自律神経過反射によるリスクの認識が重要となります。

自律神経過反射への対応

過反射が起こった場合、過反射を誘発している侵害刺激の除去が必要になります。
過反射の誘因のうち、膀胱または直腸の充満が過反射の85%を占めるとされており、尿閉により膀胱に尿がたまりすぎていたり、便秘により直腸に糞便がたまりすぎている等です。

状況に応じて間欠的無菌的導尿や留置カテーテルの挿入、摘便等を行い、原因除去を行えば症状改善に向かうことが多くあります。
一方で、処置自体が膀胱、直腸への刺激となり、 過反射を逆に誘発させてしまうこともあります。
患者が臥位であれば座位をとらせます。
これは、体を起こすことでわざと起立性低血圧を誘発させ血圧を低下させます。
体を締め付ける衣服等を緩めることは、損傷レベル以下の血管床に血液を貯留させることと、損傷レベル以下からの感覚刺激を軽減させることを目的としています。
症状が落ち着くまでは、少なくとも5分おきに血圧を測定を行います。

収縮期圧が成人で150mmHg以上(青年では140mmHg以上)、6-12歳で130mmHg以上、6歳以下は120mmHg以上が続けば、降圧薬を用いることもあります。
原因がすぐにわからない場合、血圧を下げる目的で降圧薬を用いることもあります。
薬物以外の方法を行っても収縮期血圧150mmHgを超える場合、降圧薬が適応されます。

【スポンサーリンク】
 

起立性低血圧

起立性低血圧は起立位3分以内に収縮期血圧の低下が20mmHg以上,あるいは拡張期血圧の低下が10mmHg以上認められた場合と定義される.

美津島 隆「自律神経障害への対応」CLINICAL REHABILITATION Vol.26 No.5 2017.5

脊髄損傷後の急性期では、起立性低血圧はよくにみられ、四肢麻痺では82%、対麻痺では50%に発生するとされています。
原因は脊髄障害による遠位性交感神経活動レベルの低下、それに伴う反射性の末梢血管収縮の欠如です。

交感神経活動の障害のため下肢末梢血管収縮反応が不十分となり, 麻痺域以下に血液が過剰に貯留され,静脈還流量が減少した状態となる.さらに,運動麻痺により下肢骨格筋の収縮による筋ポンプ作用が期待でき ないことである. これにより,心臓に還流されてくる血液量が減少するため,拡張末期心室容積も減少し,Frank-Starlingの法則により,一回心拍出量の低下をまねく.
その場合, 健常者では心拍数を増加させることで血圧を維持しようとするが, 特に第5, 6胸髄レベル以上の高位脊髄損傷者の場合,損傷による交感神経系の障害のため徐脈に なることが多く, 心拍数の増加による代償が不十分であり,心拍出量が減少してしまう. この結果,血圧の低下をもたらし,脳血流の低下を招き,起立性低血圧に伴う諸症状を引き起こすことになる.

美津島 隆「自律神経障害への対応」CLINICAL REHABILITATION Vol.26 No.5 2017.5

最近では、遠位性交感神経活動の障害による末梢血管収縮不全の他に、末梢血管自体にも問題があるされています。
最近では、脊髄損傷者では、一酸化窒素が末梢血管において過剰分泌されている可能性が示唆されれています。
そのため末梢血管に血液貯留が起こり、血圧低下をきたすことになります。
他にも要因としては、脊髄損傷により腎への交感神経が断たれ、腎交感神経活動に障害をきたすと、腎血流量増加によりNa利尿がつき,Naが排泄されます。 結果として細胞 外液の低下、低Na血症となり起立性低血圧が起こりやすくなります。
長期臥床による圧受容体の感度の障害等も原因となりえます。

起立性低血圧への対応とリハビリテーション

薬物と薬物以外の治療があります。
薬物以外の治療法としては、 腹帯、弾性ストッキングの利用、FES (functional electrical stimulation)、運動、水分と塩分の摂取等による体液量の調整等があります。
腹帯や下肢弾性ストッキングは、立位時に血液が貯留しやすい腹部血管床や下肢に対し、外部から圧迫を加えて静脈還流量を増加させ、血圧を上昇させます。
腹帯のみでは心循環器系にほとんど影響がないとの報告があります。
また長期装着による効果や装着期間などについてもほとんどエビデンスはありません。

FESは下肢血管周囲筋を一定時間毎に収縮させることで、筋ポンプ活発により静脈還流を増加させる方法です。

randomized controlled studyでは,起立ストレスに対して心循環応答の変化を最小限にする有力な治療法であると報告されている.

美津島 隆「自律神経障害への対応」CLINICAL REHABILITATION Vol.26 No.5 2017.5

下肢の運動は自動運動、他動運動いずれの場合でも起立に伴う中心静脈量の減少を補う効果が認められています。

脊髄損傷患者の起立性低血圧に対する運動の効果については,四肢麻痺者における上肢の運動では,座位に対する耐性はないのに対し,下肢の受動的な運動では血圧が上昇したという報告がある .
また水分と塩分の摂取による体液量の調節につ いての効果は,細胞外液量を増加させ,座位に対する耐性を高めることにある.脊髄損傷以外の起 立性低血圧には効果があるとされているのだが, 脊髄損傷者の起立性低血圧に対する単独の治療法 としてはまだ十分なエビデンスが得られていない.

美津島 隆「自律神経障害への対応」CLINICAL REHABILITATION Vol.26 No.5 2017.5

引用・参考文献

美津島 隆「自律神経障害への対応」CLINICAL REHABILITATION Vol.26 No.5 2017.5