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手首の痛み(小指側)の評価法!痛みの発生機序から部位同定、運動学的評価まで!

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手首の小指側の痛みの原因として、手首に加わる圧縮・牽引・摩擦ストレスが挙げられます。これらのストレスにより痛みが生じている場合、三角繊維軟骨複合体・下橈尺関節、尺側手根伸筋腱が痛みを引き起こしている部位として考えられます。今回、手首の小指側が痛い場合の原因の評価(部位同定、運動学的評価)について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

手首の痛み(小指側)の評価法!痛みの発生機序から部位同定、運動学的評価まで! 

手首(小指側)の痛みと力学的ストレス

手関節尺屈により尺側への圧縮ストレスが加わります。
手関節背屈/ 掌屈、前腕の回内/回外が加わることで剪断ストレスが生じる場合があります。
橈屈が加わると牽引ストレスが生じることもあります。
圧縮ストレスに剪断・牽引ストレスが加わることにより痛みが生じている場合、三角線維軟骨複合体(TFCC)、下橈尺関節に原因があると考えられます。

手関節の構成として、腱成分の割合が高く、関節運動に伴い腱が摩擦刺激を受けやすい特徴があります。
手関節の橈屈/尺屈運動により、尺側に摩擦ストレスが加わると考えられます。
摩擦ストレスにより痛みが生じている場合は、尺側手根伸筋腱に原因があると考えられます。

三角線維軟骨複合体(TFCC)、下橈尺関節に痛みが生じるメカニズム

三角線維軟骨複合体(TFCC)は、橈骨、月状骨、三角骨尺側の間にあり、三角線維軟骨(TFC)、橈尺靭帯、メニスカス類似体、尺骨月状骨靭帯、尺骨三角骨靭帯で構成されています。
TFCの形態については、遠位部(ハンモック構造)、近位部(橈尺靭帯)、尺側部 (尺側手根伸筋腱鞘と尺側関節包で構成される機能的尺側側副靭帯)の3つの構成要素からなっています。
TFCCの組織は全て尺骨神経支配となります。
橈尺靭帯は掌側と背側に存在し,尺側へ向かうと4 つの線維に分かれます。
TFCCは下橈尺関節安定性の維持、橈骨手根関節の尺側支持機構、尺側への力の伝達と衝撃緩衝作用の3つがあるとされています。
TFCCは回内外運動での安定した橈骨・尺骨の運動に貢献し、橈骨手根関節の可動性を保ちながら強固に支持しています。

下橈尺関節は、橈骨遠位の尺骨切痕と尺骨頭で構成されます。
上橈尺関節と協働して前腕の回内外運動に関与します。
下橈尺関節の安定化ではTFCC以外に骨間膜と方形回内筋の働きがあります。
これらを全て切離すると下橈尺関節は容易に脱臼してしまいます。

三角線維軟骨複合体(TFCC)、下橈尺関節の疼痛誘発テスト:TFCCストレステスト

①検者の一方の手は被検者の肘を下から把持し、 もう一方で対象者の手掌を把持し、手関節尺屈位に保持します。
②手関節を最大尺屈させ、尺側部に軸圧を加え、 他動的に前腕回内外させます。
判定:手関節尺側部痛が生じると陽性となります。
*TFCC,下橈尺関節の損傷や不安定性があると、 軸圧・回旋ストレスがさらに加わり尺側部痛が生じます。

三角線維軟骨複合体(TFCC)、下橈尺関節の疼痛誘発テスト:fovea sign

①机など安定したところに対象者の肘を置き、前腕中間位とします。
②対象者の尺骨茎状突起と尺側手根屈筋腱の間に指を置き、掌側から圧迫を加えます。
解釈:圧迫部位に痛みが生じると陽性となります。
*尺骨茎状突起・尺側手根屈筋の間で、豆状骨近位に尺骨小窩部(fovea)が存在します。
尺骨小窩部や尺骨三角骨靭帯損傷があると、圧迫により痛みが生じます。

三角線維軟骨複合体(TFCC)、下橈尺関節の疼痛誘発テスト:プラス・バ リアンス

①肩関節外転0° 、肘90°屈曲、前腕回内外0°にてx 線撮影を行います
②正面像で、橈骨尺側関節面と尺骨関節面の高さの差 (バリアンス)を計測します。
解釈:土1mmではゼロ・バリアンス、+2mm以上でプラス・バリアンス、-2mm以上でマイナス・バリアンスとします。
*プラス・バリアンスでは痛みの原因はTFCCにあることがお多くなり、尺骨短縮手術の適応となります。
*マイナス・バリアンスでは、尺側手根伸筋や尺側手根屈筋の腱鞘炎による痛みの可能性があります。 

三角線維軟骨複合体(TFCC)に機械的刺激が加わる運動学的要因

①前腕回内外可動域の制限
特に症状や引き金もなく回内外制限を呈している場合があります。
デスクワークや家事などで前腕屈筋・伸筋の筋疲労が徐々に進行すると、いつの間にか前腕回旋を肩関節内外転、手関節掌背屈、橈尺屈などにより代償していることがあります。
ゴルフのスイング動作ではグリップした状態で前腕回内外、橈尺屈運動が要求されるため、 回内制限があるとTFCCに圧縮・剪断・牽引ストレスがかかりやすくなります。

②握力低下
長時間テニスや野球の打撃をすると、回数を重ねていくとグリップを握る力が弱くなります。
テニスのフォアハンドやバックハンドでは、それが自体がTFCCへのストレスになっています。
握力低下で手関節固定力が低下し、手関節掌背屈+橈尺屈の代償動作が生じます
すると、TFCCと下橈尺関節のストレスが大きくなります。

③母指内転筋の短縮

④長母指外転筋の筋力低下
TFCC損傷例のテニスラケットのグリップ動作では、握力低下や尺側不安定性があると、手掌に母指球筋を押しつけ、手関節橈屈してグリップする代償動作を認めることがあります。
尺側手根屈筋・尺側手根伸筋の機能低下での手関節尺側の不安定性は、握力低下を生じさせやすくなります。
日常生活での把持動作で、母指と示指・中指によるつまみ・把持動作を多用する傾向にあります。
尺側の動的不安定性や握力低下がある場合、母指の手掌への押しつけにより把持機能を保っており、このとき母指には母指内転筋によるCM関節掌側内転・MP関節屈曲の作用が働いています。
母指内転筋の過活動による過緊張は同筋の短縮を引き起こします。
拮抗筋の長母指外転筋の機能低下も起こります。
母指内転筋の過活動により手関節の橈屈が優位になり、TFCに牽引ス トレスが生じます。
長母指外転筋は橈屈筋で、尺屈に対する制動作用があります。
筋機能低下により尺屈時のブレーキ作用を低下させ、TFCCに対する圧縮ストレスが大きくなります。

⑤手関節の背屈可動域の低下
手関節背屈可動域低下があると、代償的に尺屈、回外可動域が大きくなります。
起きあがり動作やハンドル操作なとで軸圧ストレスが加わると疼痛が生じます。

尺側手根伸筋腱に痛みが生じるメカニズム

尺側手根伸筋は上腕骨外側上顆、尺骨後面から起始し、小指中手骨底背側に停止します。
尺側手根仲筋腱はTFCCの一部で、尺側の支持機構としての役割があります。
尺側手根伸筋腱は尺骨遠位端の尺骨溝を通過し、この部分に1.5-2cm程の幅のバンド(subsheath )があり、これが尺骨遠位レベルで腱を安定させていると考えられています。
このバンドには摩擦ストレスが加わりやすくなります。
回外運動で尺側手根伸筋腱は摩擦ストレスを受けます。

尺側手根伸筋の疼痛誘発テスト:ECU synergy test

①机など安定したところに対象者の肘を置き肘関節90°屈曲位、手関節中間位、手指伸展位とします。
②対象者に前腕最大回外を指示し、母指から中指を把持し、対象者は母指を外転させる方向に抵抗します。
解釈:尺側手根伸筋腱に沿い痛みが出れば陽性となります。
*前腕回外位で母指外転運動をすると小指側も伸展し、手関節は尺側方向へ力が入ります。
この運動が尺側手根伸筋の活動を促し、尺側手根伸筋のsubsheathに炎症がある場合、尺側手根伸筋腱が尺側手根伸筋腱溝から亜脱臼する方向へ浮き上がるため、疼痛が生じます。

尺側手根伸筋の疼痛誘発テスト:carpal supination test

①机など安定したところに対象者の肘を置き、肘関節90°屈曲位、 前腕回外位、手指伸展位とします。
②対象者の示指から小指を把持し、手部全体を他動的に回外方向にひねります。
解釈:尺側手根伸筋腱に沿い痛みが生じれば陽性となります。
*尺側手根伸筋の手指から手根部を回外方向にひねると、尺側手根伸筋が伸張され、腱の緊張も高まり、subsheathへの摩擦ストレスが大きくなります。
*尺側手根伸筋腱に炎症があると尺側部の疼痛が出現します。

尺側手根伸筋腱に機械刺激が加わる運動学的要因

①前腕回内外可動域の制限
前腕回内外可動域の制限を代償するため、手関節尺屈が強くなり、尺側手根伸筋への摩擦ストレスが大きくなります。

②母指内転筋の短縮
母指内転筋短縮では、動作時の手関節の橈屈が大きくなり、尺側手根伸筋への摩擦ストレスが大きくなります。

③長母指外転筋の筋力低下
長母指外転筋の筋力低下は、尺屈動作の制動力を低下させ、手関節尺側への摩擦ストレスが大きくなります。

④尺側手根伸筋の短縮
尺側手根伸筋が短縮した状態での尺屈や回外は、尺側手根伸筋腱やsubsheath間の摩擦ストレスを大きくさせます。

運動学的評価:前腕回内外可動域制限

以下の記事を参照してください。

肘の内側が痛い場合の原因の評価!部位同定から運動学的評価まで! - 自分でできる体健やかブログ

末梢神経障害による手のしびれの原因と部位同定、運動学的評価 - 自分でできる体健やかブログ

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運動学的評価:握力低下

左右差から評価します。
一般的には利き手が非利き手よりも握力は大きくなります。
測定ではグリップ幅が示指PIP関節を90°屈曲するように調整します。
示指一環指、中指一小指に分け測定し、左右差を検討すると、橈側優位なのか尺側優位なのかを評価します。

運動学的評価:母指内転筋の短縮

母指内転筋が手関節尺側部痛に影響するかは、母指内転筋のトリガー組織判別テストを行います。

母指内転筋に対するトリガー組織判別テスト:
母指内転筋、手関節尺側部痛を対象とします。
①手関節掌屈位とし、手関節掌屈筋群をゆるめます。
②母指CM関節の掌側外転で伸張します。
解釈:ストレッチにより母指内転筋が緩み、グリップ動作など疼痛があった動作で痛みが軽減すれば、母指内転筋による尺側部痛の可能性が高くなります。
*母指内転筋短縮で、グリップなどの動作で尺側への圧縮ストレスがあると、母指内転筋の柔軟性が改善により痛みが軽減します。

運動学的評価:長母指外転筋の筋力低下

長母指外転筋は母指の橈側外転・掌側外転の主動作筋です。
長母指伸筋も母指の橈側外転に作用します。
長母指外転筋を優位に活動させるため、母指IP関節屈曲し、相反抑制で長母指伸筋の張力を減弱させた状態で母指の橈側外転運動を行います。

運動学的評価:尺側手根伸筋の短縮

尺側手根伸筋の伸張性の低下に対しては、トリガー組織判別テストを行います。

尺側手根伸筋に対するトリガー組織判別テスト:
尺側手根伸筋、手関節尺側部痛を対象とします。
①肘関節屈曲位、 上腕骨遠位で肩関節を内旋方向に固定します。
②前腕回外位にし、手関節を橈屈しながら、わずかに掌屈して伸張します。
解釈:尺側手根伸筋がゆるみ、尺側部痛が軽減すれば 、尺側手根伸筋短縮による摩擦ストレスの可能性が高くなります。
*尺側手根伸筋腱が過緊張だと、伸筋支帯での内圧が上昇し、摩擦ストレスが大きくなります。
*ストレッチにより症状が強くなる場合、筋をダイレクトストレッチします。

運動学的評価:手関節背屈可動域の制限

以下の記事を参照してください。

末梢神経障害による手のしびれの原因と部位同定、運動学的評価 - 自分でできる体健やかブログ

引用、参考文献