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肘の内側が痛い場合の原因の評価!部位同定から運動学的評価まで!

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肘内側の痛みの原因として、肘内側に加わる伸張ストレスが挙げられます。伸張ストレスにより痛みが生じている場合、内側側副靭帯・前腕屈筋群、尺骨神経が痛みを引き起こしている部位として考えられます。今回、肘の内側が痛い場合の原因の評価(部位同定、運動学的評価)について、文献を参考にまとめていきたいと思います。 

 目次

肘内側の痛みの原因の評価!部位同定から運動学的評価まで

肘内側の痛みと伸張ストレス

肘関節では、肘外反時に伸張ストレスが加わり、肘屈曲することでさらにストレスが加わります。
伸張ストレスが存在する場合、内側側副靭帯、前腕屈筋群、尺骨神経に問題がある可能性があります。
尺骨神経が原因となる頻度は低い傾向にあります。

内側側副靭帯、前腕屈筋群に痛みが発生するメカニズム

肘の内側側副靭帯(MCL)は肘外反を制動する役割があります。
内側側副靭帯は前斜走線維(AOL:上腕骨内側上顆の前下端部と尺骨鈎状突起を結ぶ関節包靭帯で)、後斜走線維(POL:上腕骨内側L穎の後方部分と肘頭内側を結ぶ)、横走線維(TL)に分けられています。
前斜走線維の上腕骨側の付着部は肘関節屈伸軸のやや後方にあり、伸展位にいおいては前方線維が伸張され、屈曲位においては後方線維が伸張されます。 このことから、前斜走線維は肘関節屈曲・伸展どの角度でも緊張を保つことができます。
後斜走線維は肘関節屈曲により、伸展時の約2倍伸張されます。
内側側副靭帯では、肘関節伸展時には前斜走線維の前方線維が緊張し、屈曲時には前斜走線維の後方線維と後斜走線維が緊張します。
内側側副靭帯損傷や損傷後の瘢痕化が前斜走線維に生じると、屈曲・伸展がともに制限され、後斜走線維に生じると屈曲が制限され、最終域で肘関節内側に疼痛を生じます。

内側側副靭帯の触診法

内側側副靭帯は上腕骨内側上顆から起始しており、上腕骨内側上顆を触知します。
肘関節軽度屈曲位で内側上顆に指を置き、肘関節を外反させると内側側副靭帯の緊張が高まるのを触知できます。

内側側副靭帯の整形外科テスト:外反ストレステスト

①座位にてセラピストは検査側の肘関節を軽度屈曲位にします
②外反負荷を加えます。
解釈:肘関節外反負荷を加えた際、靭帯の緊張が感じられず、関節裂隙の開大を感じたら陽性とします。
*肘伸展位でも不安定感を感じる場合、不安定性が強いといえます。
*MCL損傷では、肘関節外反を制動できません。
*外反ストレステストで不安定性の有無は判断できますが、疼痛生じることもあります。しかし、その場でMCL由来の疼痛とは判断できず、前腕屈筋群や尺骨神経の評価も行い総合的に判断します。 

内側側副靭帯の整形外科テスト:moving valgus stress test

①背臥位にてセラピストは検査側の肘関節を完全屈曲させ、 外反負荷をかけ続けます。
②肘関節外反負荷をかけながら、急激に肘関節を伸展させます。
解釈: 肘関節屈曲120°〜70°付近でMCL部分に疼痛が生じると陽性とします。
*投球動作に近い状態での検査です。
*投球障害によるMCL損傷におけるmoving valgus stress testの感度は100%、特異度は75%とされています。

前腕屈筋群に痛みが発生するメカニズム

投球動作においては、1回の投球で肘MCLに加わる外反ストレスは、MCLの破断強度(衝撃や疲労などの原因で破壊すること)を超えており、肘外反負荷に対しては前腕屈筋群はMCLとともに抵抗している考えられます。

尺側手根屈筋はどの屈曲角度でも、浅指屈筋は30°〜90°屈曲位で前斜線維の走行と一致するため、尺側手根屈筋と浅指屈筋が外反制動の主な作用を担っていると考えられます。

尺側手根屈筋の上腕頭と浅指屈筋の筋膜は,共同腱を形成し、AOL の後縁に沿って内側上顆から関節包にかけて付着する. 一方, 橈側手根屈筋と長掌筋の起始部は,円回内筋と浅指屈筋の筋膜とともにAOL の上縁に沿って共同腱を形成している. つまり,AOLを前後から挟み込むように共同腱が存在している.
尺側を後方共同腱,橈側を前方共同腱と呼び,後方共同腱が膜状であるのに対して,前方共同腱のほうが索状で,強度が強く,AOLに類似した組織像を呈している.

運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略 P76

円回内筋は上腕骨頭と尺骨頭がに付着し、尺骨頭では関節包を介し上腕骨内側上顆に付着する線維があり、動的な外反支持の機能を有する可能性もあります。 尺側手根屈筋浅指屈筋、円回内筋などの前腕屈筋群は、 外反により大きな伸張ストレスが加わり、その負荷に耐え切れなくなると、付着部の変性が生じ、痛みが生じます。

前腕屈筋群の触診法

①尺側手根屈筋
前腕屈筋群の中で最も尺側にある筋です。
起始部では共同腱を構成し、浅指屈筋と区別して触知することは困難です。
遠位部で尺側手根屈筋の腱を触れ、近位にたどっていきます。
手関節尺屈・掌屈運動を行う際に豆状骨に触れ、腱が浮き出てくるのを触知します。
わかりにくい場合は小指屈曲外転運動を抵抗運動にて行わせます。

②長掌筋
長掌筋腱は屈筋支帯の深層を通過しません。
全手指を対立運動させ、長掌筋を収縮させることで手掌腱膜を緊張させます。長掌筋腱を触知した後、近位にたどっていきます。

③浅指屈筋
手関節掌背屈中間位、MP関節伸展位,DIP関節伸展位にてPIP関節屈曲運動を行います。
尺側手根屈筋の深層橈側,長掌筋深層に位置しています。MP関節屈曲、DIP関節屈曲により長掌筋・深指屈筋の収縮が生じるため、この運動が起こらないようにして浅指屈筋筋腹の幅を正確に触知します。

④橈側手根屈筋
手関節掌屈、橈屈運動を行い、長掌筋腱の橈側で橈側手根屈筋腱を触知します。 近位にたどると、浅指屈筋の橈側にある筋腹を触知できます。

⑤円回内筋
手関節掌屈、肘関節屈曲位にて前腕回内運動を行います。 内側上顆から橈骨に向い指を置き、回内最終域で指を押し返す円回内筋の収縮を触知します。

前腕屈筋群のテスト:wrist flexion test 、forearm pronation test

wrist flexion test:
①座位にて肘関節伸展位、前腕回外位で手関節を掌屈させ、セラピストは背屈方向に抵抗をかけます。
forearm pronation test:
①座位にて肘関節伸展位、前腕回外位から前腕回内させ、セラピストは回内方向に抵抗をかけます。

解釈:肘内側に疼痛が再現されると陽性となります。
*wrist flexion testでは尺側手根屈筋が優位に働くと考えられています。forearm pronation testでは、円回内筋や橈側手根屈筋が優位に働きます。筋収縮により付着部に伸張ストレスが加わり、疼痛が生じます。 

内側側副靭帯、前腕屈筋群に痛みが生じる運動学的要因

外反ストレステストで不安定性生じる場合、内側側副靭帯(MCL) 損傷の可能性があります。
MCL損傷の原因として、肘関節外反での伸張ストレスが考えられます。
不安定性はないが肘内側の痛みを訴える場合、MCLや前腕屈筋群への伸張ストレスによる問題が考えられます。
伸張ストレスの要因として、4つあります。

①前腕屈筋群の伸張性低下
前腕屈筋群の伸張性低下があると、起始部の上腕骨内側上顆に対する伸張ストレスが大きくなります。
MCLを覆う筋があり、 これらの筋短縮でMCLに伸張ストレスが加わる可能性もあります。

②前腕屈筋群の筋力低下
肘関節外反負荷にMCL とともに制動する前腕屈筋群の筋力低下があると、相対的にMCLへの伸張ストレスが大きくなります。
前腕屈筋群の筋力低下によりオーバーワークとなり、前腕屈筋群の伸張性低下につながります。

③外反肘
肘関節は生理的に外反しており、これが増強しているとMCLに対する伸張ストレスが大きくなります。

④肩関節周囲筋筋力低下
投球障害では肩関節周囲筋筋力低下により、肘が下がった投球フォームになりやすく、 前腕が体幹から離れるため、強い外反負荷が肘内側に加わります。

⑤肘関節屈曲・伸展可動域制限
肘関節屈曲・伸展可動域制限があると、 肘関節側方安定性が低下します。
肘関節屈曲では上腕骨鈎突窩に尺骨鈎状突起がはまりこみ、伸展時では肘頭窩に肘頭がはまり込み骨性の安定性が得られます。
可動域制限があると、骨性安定性低下により前腕屈筋群の筋力がより必要になります。

尺骨神経に痛みが生じるメカニズム

尺骨神経は下神経束から分岐し、上腕内側を下り、上腕骨内側上顆後方を通り、前腕内側を下ります。
手関節レベルではギヨン管という神経絞扼部位を通り、第4、5指の手内筋とその領域の知覚を支配します。
尺骨神経は肘関節付近で3つの神経絞扼部位を通過します。

①内側二頭筋溝
上腕三頭筋内側頭と上腕二頭筋の間隙で、上腕動脈とともに走行します。
over useにより、上腕二頭筋上腕三頭筋が発達し、上腕筋膜が肥厚すると、筋の間隙が狭くなり、尺骨神経が圧迫されます。

②肘部管
内側二頭筋溝通過後、尺骨神経は上腕骨内側上顆後下方にある尺骨神経溝を通過します。
尺骨神経溝の表層では滑車上肘靭帯があり、 尺骨神経溝を床とし、滑車上肘靭帯を天井とした部位を肘部管と呼びます。
滑車上肘靭帯は上腕骨内側上顆と尺骨肘頭を結ぶ靭帯で、肘関節完全屈曲位で緊張するととされています。
滑車上肘靭帯の肥厚により90°-120°でも緊張してしまうと、尺骨神経が肘部管で絞拒されます。
肘内側の知覚を支配する関節枝は肘部管内で分岐しており、分岐部より高位の内側二頭筋溝や肘部管で圧追されると肘内側に痛みが生じます。

③尺側手根屈筋
肘部管通過後、 尺骨神経は尺側手根屈筋深層を通過します。
尺側手根屈筋は上腕頭と尺骨頭に分かれ、その間のOsborne's bandという腱膜様の組織があります。
尺側手根屈筋における過剰ストレスで腱膜が肥厚すると、同部位で尺骨神経の絞扼が生じます。

尺骨神経の触診

上腕骨内側上顆の下後面にある尺骨神経溝を触知します。
上腕動脈に沿い近位に指を進めると尺骨神経の触察も可能です。

尺骨神経のテスト:Tinel-like sign

①座位にて肘関節屈曲、前腕回外位を開始肢位とします。
②3つの絞扼部位を徒手的に圧迫します。
解釈:肘内側に疼痛が再現されると陽性となります。

尺骨神経のテスト:伸張テスト

①背臥位(枕は使わない)にて検査側上肢をベッドから出します。
②以下の順に上肢関節を操作します。①手関節、手指伸展②前腕回内③肘屈曲④肩外旋⑤肩甲骨下制⑥肩関節外転⑦頸部を対側へ側屈
*患部に伸張感や疼痛、ヒリヒリ感やチクチク感、灼熱感などの異常知覚が生じ、運動が行えなくなるまで実施します。
解釈: 0一10 までのNRS(0を痛みのない状態、10を初診時や治療前の痛みとして聴取する方法)を聴取し、肩関節の外転角度を計測します。
健側と患側を比較し、NRSが高い、あるいは外転角度が小さくなると陽性となります。 *尺骨神経を最大伸張させ、尺骨神経に対する力学的ストレスを大きくし、疼痛を誘発します。
*健常者おいても伸張感、疼痛、異常感覚が生じるため、左右差を比較します。
*性差があり、女性では伸張感などが強く生じる傾向にあります。
*多くは肩関節外転で手に症状が生じます。
*男性で肩関節外転約115°、 女性で約90°とされ、健側と患側、あるいは治療前後の比較で6°以上の違いで統計学的有意と考えられます。

尺骨神経に痛みが生じる運動学的要因

前途した前腕屈筋群伸張性低下や筋力低下、 外反肘、肩関節周囲筋筋力低下に加え、上腕二頭筋上腕三頭筋内側頭の過緊張が考えられます。
上腕二頭筋上腕三頭筋内側頭の緊張が高まると、内側二頭筋溝が狭くなり、尺骨神経に対する摩擦ストレスが大きくなります。

絞扼部位での破格(変異)、ガングリオン、骨棘変形などの要因の関与もあるため、X線、CT、 MRI、エコーなどの画像所見の評価も必要です。

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運動学的評価:前腕屈筋群の伸張性低下

関節肢位変化による可動域測定、筋ストレッチ前後の可動域を計測します。
橈側手根屈筋と尺側手根屈筋は、 橈・尺屈に作用しますが、橈屈可動域は小さく、制限の有無を可動域測定にて判断するのは困難です。そのため伸張感がどこに生じているかを確認していく必要があります。

 

前腕回外

背屈

手指伸展

ROM測定

判定

円回内筋

緊張

変化なし

変化なし

手掌屈、手指屈曲位で前腕回外を左右で計測

左記の肢位で他の前腕屈筋群の緊張低下し、左右差があれば円回内筋の短縮があります。

橈側手根屈筋
尺側手根屈筋

緊張

緊張

変化なし

手指屈曲位で手背屈可動域を左右で計測

手指屈曲位にて浅指屈筋の緊張低下し、手背屈制限には橈・尺側手根屈筋が関与します。左右差があれば橈・尺側手根屈筋の短縮があります。

浅指屈筋

緊張

緊張

緊張

手指伸展位と屈曲位で手背屈可動域を左右で計測

手指伸展により浅指屈筋が緊張し、背屈角が制限されます。左右差があれば、浅指屈筋の短縮があります。

 

運動学的評価:前腕屈筋群筋力低下

身体発達が不十分な状態でのover useや、廃用性筋萎縮などにより生じます。
筋力評価は徒手筋力検査法(MMT)に準じて行います。

運動学的評価:外反肘

肘外反角は正常では10〜15°です。 15°以上を外反肘と呼びます。

運動学的評価:肘関節屈曲、伸展可動域制限

可動域計測ではend feelの評価が重要になります。
正常な肘関節のend feelは骨性で、屈曲時に軟部組織伸張性end feelとなします。
肘関節前面に伸張感がある場合、上腕筋・上腕二頭筋の伸張性に問題があると可能性があります。
上腕二頭筋は二関節筋(肩関節と肘関節をまたぐ)であり、肩関節を他動的に屈曲位や前腕回内位にした際に、伸展可動域が拡大するかを確認すると、上腕二頭筋の関与を判断していきます。
肘関節屈曲可動域制限は、上腕三頭筋、その深層の脂肪体拘縮が強く影響します。

運動学的評価:上腕ニ頭筋・上腕三頭筋内側頭の過緊張

上腕二頭筋は肩関節・肘関節屈曲に作用する二関節筋のため触診加え、肩関節伸展位での肘関節伸展角度測定とend feelの確認を行います。

上腕二頭筋に対するトリガー組織判別テスト:
上腕二頭筋による肘内側痛を対象とします。

①座位にて他方の手で肩甲骨を上方回旋位で固定し、もう一方の手で手掌を把持し、手関節背屈、前腕回内、肘関節伸展位にて肩関節を伸展させます。
解釈:上腕二頭筋のストレッチにて筋緊張軽減し、肘内側の痛みが軽減すれば、上腕二頭筋による圧迫の可能性があります。
*内側二頭筋溝にて尺骨神経の圧迫があると、上腕二頭筋の緊張が軽減することで症状が軽快します。
*ストレッチにより症状が強く生じる場合、疼痛が生じない範囲でストレッチを行います。

上腕三頭筋内側頭に対するトリガー組織判別テスト:
上腕三頭筋内側頭による肘内側の痛みを対象とします。

①座位にて肘屈曲位とし、上腕三頭筋を把持し、近位背側へ伸長させ、その際上腕三頭筋内側頭を外側ヘ直接移動させます。
解釈:上腕三頭筋内側頭のストレッチにより筋緊張が軽減し、肘内側の痛み軽減すれば、上腕三頭筋内側頭による圧迫の可能性があります。
*内側ニ頭筋溝での尺骨神経の圧迫では、上腕三頭筋内側頭の緊張軽減により症状が軽快します。
上腕三頭筋内側頭は収縮時に内側へ移動するため、ダイレクトストレッチでは筋腹の外側移動でより伸張感が得られます。
*ストレッチにより症状が強く生じる場合、疼痛が生じない範囲でストレッチを行います。

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