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リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

前頭葉損傷におけるメタ認知、障害への気づきとメタ認知訓練の方法

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前頭葉損傷では、メタ認知過程に障害が起こることがあり、自己の内的情況の理解や社会的認知の障害が生じます。自分自身の障害に対する全般的な気づきや自己モニタリングに障害が生じることで、日常生活遂行が困難になることが予想されます。今回、前頭葉損傷におけるメタ認知、障害への気づきとメタ認知訓練の方法について、文献を参考にまとめていきたいち思います。

 目次

前頭葉損傷におけるメタ認知、障害への気づきとメタ認知訓練の方法

メタ認知とは

メタ認知過程(meta-cognitiveprocess)とは、

自己の内的状況の理解(自己意識,想起意識,認知と情動の統合)と,それを基盤として生じる他者認知(心の理論)や社会的認知を担う。この機能に障害をもつ患者は,社会的判断を適切におこなうことができず,さらには,共感性の欠如,無関心,自己投影を必要とするユーモアの無理解,といった症状を示す。前頭極(ブロードマンの10野)との関係が想定されている。

柴崎 光世「前頭葉機能障害の認知リハビリテーション明星大学心理学年報 2012,No.30,23―40

とあります。
メタ認知過程に障害が生じると、障害への気づきや、自己モニタリンング、誤反応の修正が行えない、自身の自己評価と他者の他者の客観的評価の不一致が起こるなど、日常生活を遂行する上で困難が生じることがあります。

障害への気づきを促進させるリハビリ:遂行の予測と結果のギャップの自覚を促す

障害への気づきを促進させる方法として、対象者が課題実施前にそれに対する遂行の予測をさせ、課題終了後に予測と遂行の結果のギャップを比較し、対象者に自覚させることを通して、対象者の自己意識の修正を図るものがあります。
 Youngjohn&Altman(1989)の症例(グループで行う)では、上記の方法を用いて検証されています。

遂行の予測:
対象者が行う課題(自由再生課題または計算課題)を提示し、課題に対する遂行レベル(記憶課題の再生数または計算問題の正答数)を予測させます。

課題実施:
課題を実際に遂行します。

結果の比較:
予測値と実際の成績を記したものをみて、遂行の予測と実際の成績のギャップ(不一致)について、対象者同士で議論します。

このような課題を通し、自由再生課題、計算課題で各2試行ずつ行ったところ、2課題ともに、1回目では予測値が実際の成績を大きく上回っていましたが、2回目では予測と実際の成績の不一致が小さくなり、予測精度が有意に向上したとされています。

Youngjohn&Alt-man(1989)において観察されたこのような課題遂行の予測の改善は,患者の自己の認知障害に対する気づきの増加を示唆していると考えられる。

柴崎 光世「前頭葉機能障害の認知リハビリテーション明星大学心理学年報 2012,No.30,23―40

遂行の予測と結果のギャップの改善には、行動療法的アプローチによっても改善されます。

脱抑制や社会的行動障害のリハビリ:行動療法的アプローチ - 自分でできる体健やかブログ

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このような方法による自己の気づきの獲得は限定的なようで、Goveroverらの研究によると、日常生活での困難に関するメタ認知を測定する測度(self regulation skills interview:SRSI)では訓練後の改善がみられましたが、脳損傷による身体的・認知的・行動的変化への全般的な気づきを想定する測度では改善が認められなかったとされています。
介入により自己への気づきの改善を促すことは、同時に対象者の不安を増加させる可能性もあり、セラピストは訓練中の対象者の反応や心理的状態を評価しておくことが必要です。

障害への気づきを促進させるリハビリ:役割交換法

Own-sworth,et al.(2006)では障害への気づきを促進させる方法として役割交換法が用いられています。
この訓練では調理課題が選択されており、まず、対象者の母親が調理を行い、ベースラインで対象者が失敗したのと同じエラーを行うのを対象者に観察させます。
母親がエラーを起こしたら、対象者は母親を止めてエラーを説明し、修正した正しい行動に導きます。
次の段階では、ベースラインで対象者が調理を遂行している場面をビデオにて観察させ、ビデオ再生中に対象者がエラーを起こすとそれを同定し、修正するように求めます。
また、これらに合わせ、タイマーを使用し3分おきにレシピ確認を行ったり、調理後に対象者と遂行状態について議論・フィードバックする機会を設けます。
このような訓練を8週間行ったところ、誤反応の発生頻度が減少し、誤反応に対する自己修正の頻度が増加したとされています。またその効果は介入後4週間維持され、同様の介入が他の活動においても効果的であったとされています。

Own-sworth,Quinn,Fleming,Kendall,&Shum(2010)によると,メタ認知訓練は反復訓練よりも誤反応への気づきや誤反応の自己修正の改善に有効である。他方,先のOwnsworth,et al.(2006)では,メタ認知訓練により患者の誤反応への気づきが増加した後でも,自身の障害全般に対する患者の気づきについては大きな変化が認めれなかった。 したがって,特定の課題条件下での誤反応への気づきが認知リハ的な介入によって促進されても,そのことが患者の抱える障害全般に対する気づきへと発展していくのは難しいように思われる。

柴崎 光世「前頭葉機能障害の認知リハビリテーション明星大学心理学年報 2012,No.30,23―40

引用・参考文献