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肩後方の痛みの部位同定法:上腕三頭筋長頭、後方関節包

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肩後方の痛みの原因として、肩後方に加わる伸張ストレスが挙げられます。伸張ストレスにより痛みが生じている場合、上腕三頭筋長頭・後方関節包が痛みを引き起こしている部位として考えられます。今回、肩後方の痛みの部位同定法について、文献を参考にまとめていきたいと思います。 

 目次

 肩後方の痛みの部位同定法:上腕三頭筋長頭、後方関節包

引用・参考文献

肩後方の痛みと伸張ストレス

肩甲上腕関節において屈曲・内旋・水平内転運動を行う際、肩後方に伸張ストレスが加わります。
肩後方軟部組織の伸張性低下がある場合、投球動作などの繰り返しによって、肩後方に伸張ストレス・牽引ストレスが加わり、疼痛が出現します。
伸張ストレスによる疼痛では、上腕三頭筋長頭と後方関節包に問題があると考えられます。

上腕三頭筋長頭、後方関節包に痛みが発生するメカニズム

上腕三頭筋長頭は関節下結節から起始し、上腕骨後面を走行し、尺骨肘頭、肘関節後方の関節包に停止します。 そのため、肩関節挙上位において上腕骨頭を関節窩に引き付ける作用があるといえます。
投球動作中のfollow through期では、後方関節包とともに伸張ストレスが大きく加わります。
また、肩関節後下方部(6-8時)には侵害受容器が多く、疼痛が発生しやすい部位です。

1941年,Bennettは投球ストレスにより関節窩, 後下方と下方に骨棘が形成され,骨棘は,後方関節包や上腕三頭筋付着部に繰り返し牽引力が加わることにより形成されると報告した. この上腕三頭筋長頭の付着部および後方関節包への伸張ストレスの結果,反 応性の骨増殖が生じたものを報告者の名をとりBennett骨棘と呼ぶ.必ずしも症状を有するとは限らず,症状の有無により,有痛性と無症状に分かれ,無症状であることが大部分を占める.Ferrariは,有痛性のものは骨棘に原因があるのではなく, 疼痛の原因はそれに伴う関節内病変(後方関節唇損傷や腱板関節面断裂)によると述べている.

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肩関節包は上方では棘上筋、前方では肩甲下筋、後上方では棘下筋、後下方では小円筋囲まれており、互いが強固に密着しています。
棘下筋斜走線維と小円筋の関節包側の線維群は、関節包後下方部に直接付着しています。小円筋は肩関節外旋時に後方関節包の挟み込みを防止し、挙上位での関節包の緊張を高め、骨頭を支持しています。
小円筋の伸張性低下やスパズムが生じ、小円筋の機能低下を引き起こすと、肩関節外旋時における関節包の挟み込み防止が行えなくなり、インターナルインピンジメント(肩関節外転、最大外旋の際に大結節と後上方関節窩との間で、後上方関節唇と腱板関節面が衝突する状態)を引き起こす要因となります。
偏った部位に拘縮が存在すると、上腕骨頭のoblique translation(靭帯や関節包の伸張性が低下し、関節運動の最終域に到達する手前で関節包の緊張がピークに達し、上腕骨頭を偏位させる力が発生する状態)を誘発すると考えられます。
これが関節周囲筋のスパズムを発生させたり、周辺組織に侵害刺激を与え疼痛の要因となることが多くあります。

上腕三頭筋の触診法

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長頭:
肩関節・肘関節に作用する二関節筋で、肘関節伸展・肩関節伸展・内転に作用します。
肩関節屈曲位では上腕三頭筋長頭の肘関節伸展力は強まり、肩関節伸展位では肘関節伸展力が弱まります。
触診は腹臥位にて肩関節90°外転位・肘関節屈曲位にて肘を伸展させ、肩甲骨外側縁(関節下結節)にて上腕三頭筋長頭の筋腹の収縮(膨隆)が確認できます。

外側頭:
上腕三頭筋外側頭と内側頭は橈骨神経溝を介し起始部が区別されます。
上腕骨背側骨幹近位部に起始し、上腕背側表層の外側を構成します。
外側頭・内側頭は単関節筋で、肘伸展作用のみとなります。
座位にて肩関節最大伸展位・ 肘関節軽度屈曲位にて保持し、肘関節伸展を行い確認します。
肩関節外旋を加えると前腕に重力による内反トルクが作用し、外側頭の収縮が強まります。

内側頭:
表層から内側頭筋腹を確認することはできません。
外側頭と同様座位にて肩関節最大伸展位・肘関節軽度屈曲位とし、肘関節伸展運動を反復し、肩関節内旋を加えると前腕に重力による外反トルクが作用し、内側頭の収縮が強まります。

Bennett損傷の疼痛誘発テスト

上腕三頭筋長頭付着部と後方関節包で生じる疼痛を厳密に区別するのは困難ですが、上腕三頭筋長頭の影響をみる検査法にTL (triceps long head)テストがあります。

TL (triceps long head)テスト:
①座位にて肩関節水平内転位で肘関節伸展を抵抗下のもと自動運動させます(肩関節90°外転位にて水平屈曲させ、検者は肘関節伸展運動に抵抗を加えます)。
解釈:肩関節後下方に疼痛が生じると陽性となります。
X線上、Bennett骨棘を認めない場合、上腕三頭筋長頭付着部障害の判別に有効です。

後方関節包の整形外科テスト:後方関節包の伸張テスト

①背臥位にて肩関節肩甲骨面上で外転45°を開始肢位とします。
②肩甲骨を固定し、 肩関節を内旋させます。
解釈:内旋70°まで達しない場合後方関節包の伸張性低下を疑います。 
*棘下筋斜走線維の触診を同時に行い、筋緊張を確認し、筋短縮やスパズムが制限の原因となっていないかを確認します。

上腕三頭筋長頭、後方関節包に痛みが発生する運動学的要因

Bennett損傷の疼痛誘発テストに加え、上腕三頭筋長頭の圧痛、収縮時痛や伸張痛と、関節窩後下方の圧痛の確認を行うことが大切です。
疼痛誘発テストによりBennett損傷が疑われた場合、上腕三頭筋長頭、後方関節包への伸張ストレスが大きくなる原因として5つが考えられます。

上腕三頭筋の伸張性低下
上腕三頭筋長頭の伸張性低下により投球動作でのfollow through期にて上腕三頭筋長頭腱にストレスがかかり、疼痛が引き起こされます。

肩後方の痛み(上腕三頭筋長頭・後方関節包)と上腕三頭筋伸張性低下の運動学的評価 - 自分でできる体健やかブログ

②肩関節後方軟部組織拘縮
肩関節後方関節包拘縮では、可動域制限に加え肩関節のインピンジメントを誘発する要因となります。
後方関節包は肩関節水平内転・内旋位にて伸張位となり、投球動作の反復は肩関節2nd positionにおける外旋が増大し、2nd positionにおける内旋が減少するとされています。
内旋可動域低下は後方関節包の伸張性低下の要因となり、棘下筋や小円筋の伸張性低下により、腱板付着部の伸張ストレスが大きくなると腱板の炎症や損傷、疲痕化を生じ、内側に位置する後方関節包にも影響し、後方構成体の伸張性はさらに低下します。

肩後方の痛み(上腕三頭筋長頭・後方関節包)と肩関節後方軟部組織拘縮の運動学的評価 - 自分でできる体健やかブログ

③腱板構成筋の筋力低下
腱板構成筋、特に肩関節外旋筋は上腕三頭筋長頭とともにfollow through期で上腕三頭筋長頭とともに上肢運動のブレーキ作用があります。
この腱板筋筋力低下は上腕三頭筋へのストレスを代償的に強めます。

肩後方の痛み(上腕三頭筋長頭・後方関節包)とローテーターカフ筋力低下の運動学的評価 - 自分でできる体健やかブログ

④肩甲胸郭関節の安定性低下
IST musclesにはfollow through期で肩甲骨外転に対するブレーキ作用を有します。
IST musclesの筋力低下があると、ブレーキ作用の際に上腕三頭筋長頭のストレスを増大させる可能性があります。

肩後方の痛み(上腕三頭筋長頭・後方関節包)と肩甲胸郭関節安定性低下の運動学的評価 - 自分でできる体健やかブログ

⑤股関節の柔軟性の低下
follow through期では非投球側の股関節内転・内旋運動が重要です。
follow through期に非投球側への重心移動が不十分だと股関節内転・内旋が不十分となり、結果的に肩甲上腕関節の水平内転・内旋が増加します。
投球側股関節の可動域の低下は、follow through期の非投球側へのスムーズな重心移動をを妨げ、結果的に投球側肩後方に大きな負荷がかかり、上腕三頭筋長頭に過剰使用を招くことにつながります。

肩後方の痛み(上腕三頭筋長頭・後方関節包)と股関節柔軟性低下の運動学的評価 - 自分でできる体健やかブログ

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