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高次脳機能障害と心理反応

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前頭葉の損傷などによる高次脳機能障害では、社会的行動障害が生じることがあり、その対応には遂行機能などの機能障害だけでなく、心理面への配慮も行うことが大切になってきます。高次脳機能障害の対象者と社会(環境)との関係では負の心理反応が問題になることが多くあります。今回、高次脳機能障害と心理反応について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

 高次脳機能障害と心理反応

負の心理反応が発生するメカニズム

負の心理反応(感情の状態)は、社会(環境)との円滑な交流が妨げられることによって生じます。
言語理解、認知、注意、 記憶等の機能障害の存在は、社会(環境)からの情報に対する理解度の低下を招きます。
会話の理解や状況把握と見通しが立てにくい、情報が理解できないことにより困惑や不安が生じます。
言語発話、 注意、行為、遂行機能障害などがあると、 社会(環境)への情報表現能力が低下します。 また会話表現や状況に即した臨機応変な行動ができなくなります。
情報表現が不十分な場合、欲求不満が発生ることが多くあります。
情報表現に失敗すると自己効力感を喪失により無力・抑うつが生じる可能性が高くなります。また不安、欲求不満、 無力・抑うつに加えて、孤独、悲嘆、退屈、焦燥、偏執、妄想等生じることがあります。
困惑や不安、 うまくいかないときの欲求不満、無力・抑うつが生じることは、人間や動物に共通する学習機序によるものです。

ヒトや動物は経験した環境に既知感を持ち (馴化型学習),環境の変化を予測し(パブロフ型学習),そして環境への行動を変える(オペラント 型学習). これらは環境に適応する基本的な学習機序であり,神経基盤は大脳皮質下が中心で,通常は非意識的に機能している.

坂爪 一幸「前頭葉損傷に起因する社会的行動障害への対応」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3

本来であれば、この負の心理反応は行動を適応的に変えるためのものです。
わからない状況に困惑・ 不安を感じるため探索して状況を確かめる、現在の行動が不十分なため欲求不満を感じるので別の行動を試してみる、 結果が出ずに無力・抑うつを感 じるためうまくいかない行動をやめるなどの適応行動をとります。

逃避・回避行動

負の心理反応は心理的に不安定で過剰緊張状態が続く不快(嫌悪)な状態でもあります。
このような状態では、負の心理反応を誘発する状況に直面しての逃避行動や、事前に避ける回避行動の優先順位が高くなります。
健康な場合、逃避・回避行動はある程度制御されおり目立ちませんが、制御機能の障害により顕著な形で生じることがあります。

逃避・回避行動は直接的で単調で定型的になりやすい. 逃避・回避行動が周囲の基準に合わないと社会的行動障害や間題行動とされる.

坂爪 一幸「前頭葉損傷に起因する社会的行動障害への対応」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3

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逃避・回避行動の典型例

・落ち着きのなさ、興奮などがみられ身体を動かして過剰な緊張をまぎらわす(多動)
・歩き回り周囲を確認し安心しようとする(徘徊)
・困惑・不安のない以前の行動を反復し安定を試みる(退行)
・強い刺激を入力して過剰な緊張を紛らわそうとする
自傷行為
・物の破壊や他者への攻撃による大きな音などの体感により紛らわす(他害)
・慣れた活動を繰り返す(固着・固執
・高い水準の活動を保てずに未分化になる(退行) 
・失敗に伴う自己効力感の喪失、嫌悪を事前に避ける
・あきらめや閉じこもり、引きこもり

逃避・回避行動は過剰な緊張を一時的に低減する.緊張の低減は逃避・回避行動を強める強化因子になる.この過程が繰り返されると,逃避・回 避行動は強固になり習慣化する.また逃避・回避行動が状況に直結して即時に現れる早発化や,似た状況で現れる般化も起きる.

坂爪 一幸「前頭葉損傷に起因する社会的行動障害への対応」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3

負の心理反応の認知的解釈

対象者は不安定な心理や過剰な緊張による不快(嫌悪)な状態の原因を考える、負の心理反応を認知的に解釈 (意味づけ)をします。
健康な時には的確に判断できていても、障害により判断力低下や偏執、 妄想等の歪みが現れる場合もあります。

認知的解釈には高次脳機能障害による情報処理の不全や強い疲労も影響する. 感覚を長時間剥奪すると幻覚や妄想が出現する(例:感覚遮断実験). 高次脳機能障害では感覚の遮断はないが,認知機能の障害で環境情報の処理が制限される. 情報の質の劣化や量の低下が大きいと一種の"情報遮断"の状態になる.情報が限られると思考に低下や偏向,非柔軟性が生じやすい.
坂爪 一幸「前頭葉損傷に起因する社会的行動障害への対応」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3

強い心理的緊張感や努力感が常に伴っていると、易疲労性をもたらし、それが慢性化すると、偏執的あるいは神経症的な考えになるなど、思考の偏りが見られるようになります。

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引用・参考文献

坂爪 一幸「前頭葉損傷に起因する社会的行動障害への対応」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3