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前頭前皮質と行動のコントロール

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前頭葉前頭前皮質は、眼窩前頭皮質、内側前頭前皮質、外側前頭前皮質に区分されます。前頭前皮質では行動のコントロールに関与しており、脱抑制、アパシー、遂行機能と深く関連があります。今回、前頭前皮質と行動のコントロールについて、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

 前頭前皮質と行動のコントロール

参考文献

西尾 慶之「前頭葉の機能とその障害」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26

 

眼窩前頭皮質と意思決定

前頭葉眼窩部損傷により衝動性の充進、ふざけ症、多幸、社会的判断の低下等が出現します。これらは脱抑制と呼ばれることもあります。

脱抑制は欲求や衝動を制御し対人接触・社会活動に適合させる能力の障害であり,局所脳損傷例においては右前頭葉眼部損傷と強い関連があると報告されている. 脱抑制を中核症状とする変性性認知症である前頭側頭型認知症〔frontotemporal dementia, 行動型前頭側頭葉変性症(behavioral variant of frontotemporal dementia)ともよばれる〕の MRI研究においても,右腹内側前頭前皮質後部と脱抑制の関連が示されている.

西尾 慶之「前頭葉の機能とその障害」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3

 

「脱抑制」行動が生じるメカニズムでは、以下のように考えられています。
眼窩前頭皮質が報酬に関連する機能を持つことが考えられており、報酬は一次報酬(飲食物や性的対象等)と二次報酬(金銭等)がありますが、どちらも対象者にとって「良い」 という価値がある点で共通しています。
「良い」「悪い」という価値が人の行動の背景にある最も原始的な動機であり、人がとる様々な認知や行動に影響を与えています。
様々な報酬や価値の中で、眼窩前頭皮質は「価値に基づいた意思決定」に関係しているとされています。

眼窩前頭皮質は報酬に関連付けられた視覚刺激が提示された際に強い活動を示す一方で,報酬そのものが与えられたときには活動をしない. このことから眼窩前頭皮質には「報酬の予測」もしくは「対象に対する価値付け」の機能が備わっていると解釈されている.

西尾 慶之「前頭葉の機能とその障害」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3

このことから、脱抑制では新しい価値を得られず、予測的な意思決定が行えないために、目の前にある「一見価値の高そうな対象」に飛びつく行動であると捉えることができます。

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前部帯状皮質/内側前頭皮質アパシー

眼窩前頭皮質と前部帯状皮質/内側前頭前皮質は隣り合う脳領域ですが、各領域が損傷により異なる行動変化がみられます。
前部帯状皮質/内側前頭前皮質の損傷では、発動性の低下やアパシーがみられます。
両側の内側前頭葉の広範な損傷では無動性無言がみられます。
前部帯状皮質/内側前頭前皮質と眼寓前頭皮質の損傷により生じる症状は異なりますが、両者は報酬や情動の処理、社会的行動等の共通した機能に関連していることが報告されています。
前途した眼窩前頭皮質では、報酬に関連した視覚刺激の提示により強く応答しますが、報酬そのものには応答しないという特徴があります。
前部帯状皮質/内側前頭前皮質では、視覚刺激と報酬の両方に反応する特徴があります。
眼窩前頭皮質が知覚した内容と報酬との関連付けに関わっていますが、 前部帯状皮質/内側前頭前皮質では自己の行為と報酬との関連付けに関わっています。

前部帯状皮質/内側前頭前皮質は価値についての学習やその価値に基づいた行動の選択に関係していると考えられる。 前部帯状皮質/内側前頭前皮質の損傷によって生じる発動性の低下や無為は、行為を駆動する価値や動機の形成の障害に起因するものなのかもしれない。

西尾 慶之「前頭葉の機能とその障害」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3

外側前頭前皮質:遂行機能と作動記憶

遂行機能は計画立案、推論、問題解決能力等に関与する機能とされています。
これらの能力は前途した眼寓前頭皮質(意思決定能力)、前部帯状皮質/内側前頭前皮質アパシー)で述べた価値に基づく意思決定や学習の能力を基礎としています。
上記の事を踏まえ、遂行機能という概念は、外側前頭前皮質に特有の機能を説明するための概念としては不十分となります。
近年では「遂行機能」の代わりに「認知制御」という概念が使用されるようになってきています。

作動記憶は「短時間の情報の把持」「把持された情報の操作・制御」という構成要素があります。
長期記憶では時間や日、場合により年単位で保持されるのに対し、短期記憶では目下の作業が終了した途端に忘却されてしまいます。

長期記憶は海馬およびその周辺の嘆皮質におけるシ ナプス結合の変化を神経基盤にしているのに対して,短期記憶は把持される情報に関係する皮質の持続神経活動(persistent neuronal activity)を基盤としているという考えがある.

西尾 慶之「前頭葉の機能とその障害」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3

最近の研究では、作動記憶課題遂行機能中に外側前頭前皮質の持続的活動が認められないことが明らかとなっています。
前頭前皮質ではなく側頭・後頭・頭頂葉の感覚皮質が短時間情報の把持に関与していると考えられています。
作動記憶の構成要素である「把持された情報の操作・制御」に外側前頭前皮質が関与すしているとされています。このことから、外側前頭前皮質は作動記憶の「記憶」においては関与せず、「操作・制御」において関与するとされています。
作動記憶において制御とは、短期 記憶で把持された多くの情報に対する注意の切り替えです。 一方、外側前頭前皮質は脳内の音韻表象、知覚イメージ、意味,、エピソード等の取り出しにも関与しており、この場合は長期記憶に蓄えられた情報の制御になります。

つまり外側前頭前皮質は,制御される情 報が短期記憶に把持されているものであるのか,あるいは長期記憶として貯蔵されているものであるのかにかかわらず,並列して存在する情報の中 から現在進行中の行動に適したものを選択する役割を果たしていると理解することができる.

西尾 慶之「前頭葉の機能とその障害」Journal of CLINICAL RRHABILITATION Vol.26 No.3

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