自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

脳卒中片麻痺者の亜脱臼におけるエビデンスとリハビリテーション

【スポンサーリンク】

脳卒中片麻痺者では肩関節に亜脱臼が見られることがあります。亜脱臼が直接的に肩の痛みに関与しているかは意見が分かれるところですが、三角筋や棘上筋の機能低下があることを考えると、治療対象になります。今回、脳卒中片麻痺者の亜脱臼におけるエビデンスリハビリテーションについて、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

脳卒中片麻痺者の亜脱臼におけるエビデンスリハビリテーション

亜脱臼の病状と病態

肩関節亜脱臼について、

非外傷性に上腕骨頭が肩甲骨関節窩に対し転位したもので、下方への転位が多く、脳卒中後の片麻痺に17%〜81%の頻度でみられる。

 Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

とあります。
肩関節の安定性には筋や靭帯が大きく関与しており、筋の麻痺や靭帯が伸張されることにより亜脱臼が生じやすくなります。

肩関節亜脱臼は肩甲上腕関節において上腕骨頭を関節窩に押し付けて固定している筋群の麻痺によって起こりやすく、特に弛緩性の重度の上肢麻痺において発生しやすい。

 Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

このような筋群には、ローテーターカフのひとつである棘上筋、アウターマッスルの三角筋があります。棘上筋や三角筋の麻痺により、座位や立位・歩行時に上肢の重みで上腕骨が下方に引っ張られ、靭帯の伸張が起き、肩関節亜脱臼が生じます。
上肢筋の麻痺が完全麻痺が重度の場合亜脱臼の発生頻度が高くなります。感覚障害が亜脱臼の原因になるとの見方もありますが、否定的な意見もあります。肩内転筋の痙縮や年齢に関係があるともされています。半側空間無視は亜脱臼の原因にはなりません。
肩関節亜脱臼はX線撮影で、前後方向の撮影で肩甲骨関節窩から上腕骨頭の転位がわかります。

【スポンサーリンク】
 

肩関節亜脱臼に対する上肢スリングとエビデンス

上肢スリングについて、

主に弛緩性麻痺の患者が立位時、歩行時に、上腕骨頭が重力により下方に引っ張られることを防ぎ、亜脱臼を防止、改善するために使用される。

 Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

とあります。
麻痺側上肢の不安定さに対して、歩行訓練初期に有効だとされています。
上肢スリングは長期的に使用すると、上肢の運動や感覚入力の妨げになり、上肢屈曲、内転、内旋位で固定することになり、上肢屈筋の筋緊張亢進につながることもあります。また歩行やボディイメージの低下につながるとして、否定的な意見もあります。
上肢スリングを使用する際には、上記の事を防ぐためにも、ROM訓練を併用していく事が重要になります。
上肢スリングには三角筋や他にも様々なものがありますが、効果や優劣に関してエビデンスの高いものはないとされています。
注意点として、

腋窩をサポートするボバーススリングは肘を屈曲で固定することを避ける狙いがあるが、肩関節亜脱臼の減少効果が証明されておらず、上腕骨頭の外側への変位で軟部組織が損傷しやすいので使用は避けるべきである。

 Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

座位では前腕をテーブル、または車椅子用テーブルに乗せ、車椅子にアームトレイをつけて対応します。

肩関節亜脱臼に対するテーピングのエビデンス

テーピングにより肩関節の解剖学的位置を保ち、亜脱臼予防を行うことがあります。発症後早期に行うことが効果的だとされています。

脳卒中発症後3〜5日に肩のテーピングを上肢スリングと併用すると上肢スリング単独よりも効果的であるが、テーピング単独では上肢スリングほどの効果はない。
肩のテーピングを発症時から行うと肩の疼痛の発症を遅らせることができるが、疼痛の軽減や上肢機能の改善、拘縮の進行には影響はなく、テープによる皮膚の問題や衛生上の問題も指摘されている。

 Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

肩関節亜脱臼に対する機能的電気刺激(FES)のエビデンス

肩関節亜脱臼に対する機能的電気刺激では、棘上筋と三角筋後部線維の両筋に使用されます。これは両筋が上腕骨を肩甲骨に対して正常な位置に保つ働きがあるためです。

強度は上腕骨が軽度の外転、伸展を伴って挙上される強度とする。FESの使用時間は1日1.5時間から6時間まで徐々に伸ばし、週5日、6週間続ける。

 Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

急性期では亜脱臼発生の予防に有効ですが、慢性期では有意な効果はなかったとされています。

急性期のFESは上肢外転筋力を改善するが、慢性期では効果がなく、一方で疼痛のない肩関節可動域については急性期のFESの効果はなく、慢性期では効果があった。
発症からの期間を区別しないメタアナリシス、FESは肩関節亜脱臼の重症度の軽減や疼痛を生じない肩外旋可動域の改善には効果はあるが、肩の疼痛の発生頻度や程度、上肢運動機能の回復、上肢の痙縮には効果はなかった。

 Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10

関連記事

happyhealth.hatenablog.com

happyhealth.hatenablog.com

happyhealth.hatenablog.com

引用・参考文献

越智 文雄「脳卒中片麻痺における肩の痛みーその予防とリハビリテーションー」Journal of CLINICAL RIHABIRITATION Vol.23 No.10 2014.10