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リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

精神障害者(うつ・統合失調症)の自信(自己効力感・自尊心)の高め方

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精神障害者では、様々な要因により自信が定着しないことが多く、自分自身や自身の行動に対して自己否定することがよくあります。今回、精神障害者の自信(自己効力感・自尊心)の高め方について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

精神障害者の自信(自己効力感・自尊心)の高め方

精神障害者と自信

精神障害者では、発達途中の発症により正常発達が阻まれ、本来育つはずの自信が定着しない事が多くあります。受容欲求が満たされず、最低限の自信が確立されないことや、対人関係上の失敗体験から自信を失うこともあります。日常生活での孤独感やストレス、不安感が自信喪失につながっている場合もあります。他にも、精神障害による認知機能低下や歪みなどから、自己の過小評価や罪業妄想、被害妄想などの症状の影響を受けて自信が喪失していることもあります。

自信の要素

自信は、「自分の力を信じる(自己効力感)」と「自分には価値がある(自尊心)」という側面からなっています。
自信が強まる要素としては、成功体験、満足、安堵・喜び、関心をもたれる、ほめられる、尊敬される、羨ましがられるなどがあります。
自信が弱まる要素としては、失敗体験、不満足、不安・恐怖、無視される、叱られる、軽蔑される、呆れられるなどがあります。
幼少期から存在を無視されてきているような場合、自己の存在を肯定的に認めにくくなり自尊心の欠如がみられることが多くあります。

自信の構築

自信を無くしている対象者に対し、リハビリテーションではセラピストのかかわりと具体的な作業活動の提供を通して、自己受容による安心感を得て自信を回復させていきます。
自信の喪失は活動性・意欲低下を招き、それが不安を増大させていることもあります。
経験不足や失敗に対する不安、過去の失敗体験が再度起こってしまうのではないかという不安などにより自信を持てず、自己能力や自己価値を認められない状態になっている可能性があります。
リハビリテーションでは、具体的作業活動によりセラピストに受容されていることを実感し、活動への興味・関心を高め、達成感や満足感を感じ取り、対象者が自身の価値観を再構築できることを目標にしていきます。

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気分障害抑うつ)と自信

気分障害の特徴を以下に挙げます。

うつ状態では、思考の抑制により「考えがまとまらない、頭が空っぽになった」など思考の停滞、決断困難、集中困難、記憶力低下が生じる。
観念の発生が遅く、観念の連合は円滑ではなく、着想は非常な努力の末にやっとあらわれる。思考の流動性低下から頭の切り替えができず、同じことをくどくどと繰り返し考えたり、しばしば反復、常同、強迫的な行動も起こる。
思考内容は単純で、悲観的抑うつ的な観念に囚われ続ける。認知面においては、自己価値の過小評価や無価値観が生じ、自責的、自罰的な傾向となりやすく、現在だけでなく過去の些細な失敗すら悔やまずにはいられなくなる。抑うつ気分と思考の流動性の低下のもとで、自己卑下や後悔の念は肥大し、そこに拘泥し、妄想的な思い込みになってしまうことも少なくない。この抑うつ性妄想は仕事や家庭、自分の体のことなど患者自身の身近なことに関連した内容が多いものである。
精神運動面の抑制として、「何をするにもおっくう」、「根気がなく仕事の効率が落ちた」といった状態となり、しばしば身体的な疲労感、倦怠感と重なり、動作や話し方は遅くなり、全般的な活動量の低下がみられ、日常的、習慣的な動作にも時間がかかる。注意は固定し転導性は極端に低下する。また、種々の事柄に関する興味・関心の低下がみられ、特に意思決定が困難となる。

作業療法のとらえかた PART2 P297

うつ状態の対象者は、過去の自分と比較して現状をとても無力で無価値だと認識する傾向となり、周囲からの無理解と安易な励ましは現状を何とかしようと過剰な努力をさせてしまうことにつながります。また、なかなか自己を受け入れることも難しくなります。
安易な励ましは無力感、絶望感を増大させることになるため、ゆったりとした対応で、言葉や態度による励ましはさけ、「今の対象者の状態」がセラピストに受容・許容されているという安心感を与えるようにしていきます。
つかず離れずの心理的距離を心がけて、対象者が望むときにはすぐに対応できる体制づくりをしておきます。
賞賛や励ましを全く行わないというわけではなく、対象者の努力を認めるためのものは必要ですが、対象者の負担となることは避けるようにします。
自信がなく不安の強い場合、活動参加自体や対人接触に対しても否定的なことがあり、活動を導入しにくい事があります。このようなときには、無理に活動を導入せず、ともに時間を過ごす、話を傾聴することから始めていきます。まずは安心感を持ってもらえることが最優先であり、誘いを断ってもセラピストの対応は変化しないということを認識してもらう事が重要です。

抑うつ作業療法の進め方

抑うつ状態の対象者は自己評価よりも活動能力が高い場合が多く、自己能力より低い作業活動を導入すると、無力感や自己否定感をより高めてしまうことになります。逆に、能力を超える活動や、セラピストの援助を多く受けなければならない作業でも無無力感や否定感情を高めてしまいます。
活動の選択は慎重に行い、対象者の全体像の評価が大切になります。
作業遂行能力評価のために活動を導入しなければならない場合には、ある程度の枠があり、失敗が少なく、あまり努力がいらない簡単な作業を用います。作品として見栄えも良く達成感や満足感が得られやすいものがよいです。
過去に経験があっても、以前より難しいと感じたり、うまくできないこともあり、そのような場合失敗体験や無力感を与えることにもなってしまうため、注意が必要です。失敗が予測される場合、工程変更を行ったり、難易度を調整できるものがよく、あらかじめ難しいことがあるかもしれないと説明しておくことも大切です。
失敗をさせないように常に関与するのではなく、そばにいることで安心感を与え、距離を保ちながら、対象者の反応や行動に注意し、タイミングをとって関与するようにします。必要以上の関与は無能感、達成感、自主性を失わせることにつながります。注意点としては、自殺企図の可能性があります。

特に治療関係が未確立の状態ではその危険性が高いといわれている。治療が順調すすんでいても、ちょっとしたセラピストとのすれ違いにより「見捨てられ感」や「否定された」という感情を抱きやすいものである。経過が長引くと、精一杯頑張っているのにセラピストから賞賛や受容を十分に得られなかったり、失敗による心理的挫折をセラピストに軽視されることなどにより、信頼関係が壊れる場合もある。セラピストの細かな観察と、繊細な配慮は、自殺企図などの事故を未然に防ぐために必要不可欠といえる。

作業療法のとらえかた PART2 P299

罪業妄想がある場合、自身の存在を否定することになり、些細なことが自殺企図につながることがあります。「申し訳ない」「すみません」という言葉に対して、なぜかと聞くと、「親切にしてもらっているのにうまくできない」「親切にしてもらう価値がない」などと発言がみられます。これは活動を行ったことによる無能力感、無価値感が高まった一つのサインとなり、これが継続すると深刻な状況につながることがあります。
しかし、急に活動を中止するのは「見捨てられた」と取り違える可能性もあり、しばらくは活動を控えながら、医師や看護師と連携をとり、状態の改善を図りながら、「見捨ててはいない」と現状について理解していることを穏やかに伝え続けることが大切です。

 統合失調症と自信

統合失調症の特徴としては以下のようになります。

統合失調症は思春期には発症するため、社会的経験が不足し未熟である場合がある。ストレス脆弱性による適応能力の破綻により発症するため、認知機能の障害による経験のゆがんだ認識、被害的内容の幻聴を経験することも症状の特徴上しばしばみられる。奇異な表情・行動により対人関係における孤立化や受容欲求の充足など、対人関係や社会的経験における失敗体験・挫折感を経験していることもある。このため自己に対する自己評価や自己価値観が低くなりがちで、自信の乏しい患者が多いようである。加えて自我機能の低下により、意欲・活動性が低下し、客観的な自己評価ではなく主観的な過小評価により、あたかも自己の安定性をはかろうとしているようにみえることがある。

作業療法のとらえかた PART2 P302

統合失調症作業療法の進め方

対象者の評価では、自信喪失や自己価値観低下につながる要因としては、社会性の未熟さや低さによる対人関係面、精神運動園、認知面、思考面などの障害による失敗体験や挫折感、発達過程での経験不足など様々なものが考えられるため、多岐にわたる評価が必要です。
一見意欲低下がある対象者が、自信がないためにその状態にみえていることもあるため注意が必要です。
治療初期では、治療関係を構築するため、対象者の依存性や受容欲求を満足させ、安心感を与えます。これにより、満足感、安心感を得やすい状況をつくります。
治療関係が構築されてきたら、徐々に治療的距離を離していきます。対象者の不安を考慮しながら、対象者自ら行動できるようにしていきます。セラピストの役割は対象者の判断や自己決定を促し、それを認め、結果について是認・承認を行います。
陽性症状により経験したことを適切に受け止めることができない場合や、言語的フィードバックが正しく認識できない場合、作業により時間と空間を共有し、現実的な刺激を重視して治療を進めます。フィードバックが適切に認知されているかを確認しながら進めます。
注意点としては、対象者の依存・受容欲求を満足させる期間が長くなりすぎると、セラピストに対する固着が起こり、対象者の自己判断や自己決定などを促すことが困難になります。そのため距離の取り方に注意しながら、自律性・自主性を促していくことが大切になります。

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引用・参考文献