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脳卒中片麻痺者の運動学習を高める方法:脳機能、感覚入力、運動記憶の定着

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脳卒中片麻痺者のリハビリテーションにおいて、運動学習を図り、目標とする動作の学習を促していくためには、脳機能・感覚入力・運動記憶の定着の側面からアプローチすることが重要です。今回、脳卒中片麻痺者の運動学習を高める方法について、文献をさんこうにまとめていきたいと思います。

 目次

脳卒中片麻痺者の運動学習を高める方法:脳機能、感覚入力、運動記憶の定着

引用・参考文献

脳の機能障害と運動学習

リハビリテーション場面で、獲得したい動作を行う場合の管理するべきエラーの情報が対象者に入力されたとしても、それを処理する脳内機構(認知・連合・自動化)に障害があると、学習効果が妨げられます。
学習に関する脳内機構が障害されている場合、対象者に呈示する情報量と質の管理が重要になります。
ワーキングメモリに障害があれば、情報の同時処理が行えない場合があり、管理するべきエラーの数を減らすように課題の難易度を調整することが求められます。
記憶障害や感覚情報処理過程で問題がある場合には、エラーの認識が行えず、エラーを含む動作をや運動スキルをそのまま学習し、自動化してしまう恐れがあります。これを防ぐためには、エラーを起こさないような学習方法(無誤学習)が必要になります。
無誤学習の代表としては、川平法(促通反復療法)があります。

 

運動学習を行う上で、小脳系や大脳基底核系に障害がある場合、「内的代償に基づく運動戦略の誘導」が必要になります。
小脳失調がある場合、感覚入力での運動制御がどの程度行えるかを評価し、課題の難易度を設定します。目的動作達成に必要な姿勢調節や四肢協調運動のための筋収縮方法を、同時収縮・リラクゼーションによる制御に転換するような戦略が必要です。
パーキンソン病がある場合、自発的な運動開始が難しく、補足運動野の賦活化障害(駄基底核と神経繊維連絡をもつ)が順序動作の障害を引き起こすとされています。そのため、運動タイミングを視覚・聴覚的手がかりとして与え、頭頂葉ー運動前野系を賦活化する戦略が必要です。

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運動学習と感覚入力

適切な運動学習課題の条件は以下の3つです。
①学習者によって認知された具体的な運動目標の設定
②学習目標を表象する具体的な感覚情報の呈示
③適度な成功体験が得られる難易度の設定

このような課題設定は、対象者が内在的フィードバックを処理し、動作のエラーを検出し、運動スキルを自ら修正しようとするため学習効果は高く期待することができます。
課題の難易度については、

運動スキルの修正に必要なエラー情報を供給しながら、それを管理することで得られる成功体験(報酬)が、望ましい運動スキルを強化するレベルに設定する必要がある。

運動学習理論に基づくリハビリテーションの実践 P57

とあります。
臨床場面では、運動課題を再現できない場合が多いですが、運動の制御が困難な場合は、代償手段により課題の難易度を調整し、外在的フィードバック(声かけ、ハンドリング、鏡の使用など)を用いて課題の焦点化とエラー認知を高めます。
外在的フィードバックとして、「目標の達成度が本人にも明確に分かる課題」:例えばペグ移動課題でのペグの本数などは、外在的フィードバック(結果の知識)として用いても、達成度への効果は限られるとされています。
運動課題での感覚情報の入力は、運動麻痺の機能改善に貢献することが示唆されていて、随意運動に連動した電気刺激などは積極的に取り入れることが推奨されます。
後・前大脳動脈領域に障害がない場合、ADL上の上肢操作に関するビデオでの観察学習が上肢機能訓練の効果を高めることが示唆されています。

運動学習と運動記憶の定着

運動スキルは、目的動作を安全・楽に行えるように自動化される必要があり、姿勢制御などを行う場合には日常生活上の様々な動作の中で潜在的に構築されます。
例えば、姿勢制御に問題がある場合、重心を管理してバランス保持可能な支持基底面が狭くなっており、重心がそこから逸脱しないように運動速度・範囲を限定して安全にバランスをとれる制御が自然と身についています。そのため、安全が保障された中での運動学習では、姿勢保持能力を最大限発揮できる課題を設定して、重心管理に必要な様々な感覚情報を運動記憶に「符号化」することが大切です。

バランスに関する問題を意識付けて行うよりも、種々の運動課題の反復による潜在学習によって習得させる方が、会話などの他の課題を同時に実施しながら姿勢を制御する運動スキルを定着することができる。

運動学習理論に基づくリハビリテーションの実践 P57

順序学習(道具使用)では、手順の必要性やルールを理解し、複数の動作を「分節化」する等の情報処理が学習に必要で、「試行錯誤による学習(誤りを繰り返しながらの学習)」がキャリーオーバーが得られやすい可能性があります。
脳卒中者では、適応できる運動スキルも少なく、習得した運動パターンを変化させるためには、難易度を高くした課題の中で、日常で用いる運動スキルへの転移を図る必要があります。

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