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アルツハイマー型認知症のコミュニケーション障害と支援方法

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アルツハイマー型のコミュニケーションの支援では、低下した機能・残存している機能を見極め、それに応じた支援方法を行うことです。今回、アルツハイマー認知症のコミュニケーション障害と支援方法について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

アルツハイマー認知症のコミュニケーション障害と支援方法

アルツハイマー認知症のコミュニケーション障害の背景

アルツハイマー認知症者のコミュニ ケーション障害では、基本的として認知・言語レベルの障害ですが、加齢による聴覚・視覚などの感覚障害も高頻度で伴う場合があります。
聴覚障害(難聴)があっても、補聴器を使用している方が少ないのも現状です。
白内障などの視覚障害では、身体・認知・心理機能に与える影響としてADLやIADLの低 下、抑うつ、言語性記憶・選択的注意などの認知機能、夜間せん妄との関連も指摘されています。

アルツハイマー認知症のコミュニケーション障害の要因

アルツハイマー認知症者の言語機能面では、発話・書字・理解の各側面に、頻度・長さ・ 規則性などにおいて難易度の高いものから順次、容易なものへと症状が進行し、一方で、 音韻的側面は保たれやすいことが言われています。
アルツハイマー認知症の神経病理の分布について、

中心前後回などの一次領域は保存される傾向が明らかである。ついで傍シル ビウス裂領域は比較的保存され,それよりも周辺領域の連合野に障害が強いことが多い。また,前方連合野よりも後方連合野の病変のほうが強いのが普通で,側頭葉の後方下部も病変の強い部位の一つである( Brunら1981 , Whitewellら 2008 )

高次脳機能研究 第 35 巻第 3 号 P51

とあります。
このことから、

言語の音韻的側面や統辞的側面は比較的保たれ,復唱は障害されず, 語彙論的意味論的な障害が主体となる。中心回や傍 シルビウス裂領域の保存が復唱や音韻機能,さらには統辞的側面の保存と関係し,側頭葉後方下部や角回など後方連合野の障害が喚語困難や意味的側面の障害にもっとも関係しているであろうことが推測される。側頭葉後下部は漢字の失書とも関係が深いことが知られている。

高次脳機能研究 第 35 巻第 3 号 P51

とあります。
言語症状の進行としては、喚語困難(呼称障害)から、進行により理解に障害が出現しますが、復唱は比較的保たれやすいです。いわゆる失名詞失語(健忘失語)から超皮質性感覚失語に移っていくようになります。
発話では代名詞や「もの」「こと」など代用語の使用や、遠回しな伝え方がが多くなます。意味性錯語や無関連な語性錯語、音韻性錯語はあまりみられません。
進行すると、発話量はあっても内容語が少なく情報量が乏しく、会話の中で最初の発話意図を忘れてしまうような回りくどい発話になることも多いくあります。
後方連合野だけでなく前方連合野にも障害が及び、意味的側面の崩壊、判断力低下も著目立つようになります。
このような病理から、発話として意味不明のジャルゴンになることもあり、末期には構音障害も出現し、最終的には無言症になります。

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アルツハイマー認知症のコミュニケーション障害のタイプと支援方法

①構音障害が前景に出るタイプ
発話内容はほぼ適切だが明瞭度の低下あり。重度 でなければ義歯欠損・不適合や声量不足による見かけ上の構音障害である可能性が高いもの。支援方法は書字の活用。

②中等度以上の聴覚障害が前景に出るタイプ
左右差のある例は少なく、聴覚障害のため音声言語は不良だが文字言語は良好。支援方法は補聴器使用と文字言語。

③記憶と見当識が低下しているタイプ
表面的なやりとりは成立するが内容が不適切。支援方法は見当識訓練や記憶の補助手段の活用。

④全体的に高得点なタイプ
コミュニケーションは全般的に良好で能力の維持や更なる向上を目指した積極介入の対象となりえるもの。

⑤全体的に低得点なタイプ
単語の理解や意志表示も困難。非言語的コミュニケーション手段の導入が必要。

この類型化は、男女78例、平均年齢80.4 ± 8.0歳、Mini Mental State Examination (MMSE )平均得点 16.8 ± 5.4 点の方を対象としています。
⑤のタイプは、全体の4%ということもあり、大多数は何らかのコミュニケーション手段が残されているといえます。

アルツハイマー認知症者と補聴器

アルツハイマー認知症発症後の補聴器の使用はかなり困難であるとの報告があります。このことから、認知症発症前に補聴器を使用しておくことが重要であると思われます。
MMSE下位項目のワーキングメモリと単語復唱能力が補聴器装用期間と強い関連を示しており、一時的な記憶処理であるワーキングメモリが補聴器装用に重要という事実は、補聴器を着けていること忘れてしまうアルツハイマー認知症者でも装用可能性があるということを示唆しています。

アルツハイマー認知症者とメモリーブック

モリーブックは、記憶障害や認知者とのコミュニケーションツールとして、Bourgeoisにより提唱されたものです。本人から、時系列で聞き取った自伝的記憶を、本人の言語機能に合わせて、 写真やイラストと共にアルバムにまとめたものになります。回想法を利用している点に特徴があります。
モリーブックは、認知症者の会話の状況や心理・行動的症状( BPSD )に対する効果があるとの報告があります。
モリーブックでは、書字・音読・読解などの言語機能を活用し、言語機能面で呼称、漢字書字、 仮名書字が改善する可能性があります。また音読により、特に呼称機能が賦活される可能性があります。これは、残存していた言語機能を選択的に賦活した効果であるとも言われています。

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参考文献

飯干紀代子「アルツハイマー認知症患者のコミュニケーション障害の 神経心理学的分析 : 低下した機能・活用できる機能」 認知神経科学  Vol. 17 No. 1 2015
松田実「アルツハイマー認知症の言語症状の多様性」高次脳機能研究 第 35 巻第 3 号