自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

低栄養と代謝、栄養素の観点から筋力トレーニングの逆効果を考える

【スポンサーリンク】

栄養不良状態で筋力トレーニングを行うと、逆効果となることがあります。今回、栄養に関する代謝とその特徴を知り、筋力トレーニングを行う際の注意点を文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

栄養不良では筋力トレーニングの効果は低下する

栄養不良と代謝

代謝の異化と同化について、

 同化とは、生体内でエネルギーを用いて、糖質、脂質、蛋白質核酸などを合成する過程で、細胞の成長やすべての組織、臓器の維持に必要である。同化がなければ筋肉などあらゆる生体構成成分を合成できず、生命として成立しない。
一方、異化とは、糖質、脂質、蛋白質などを分解して、エネルギーを得る過程である。食事からエネルギーを得る過程も、生体構成成分を壊してエネルギーを得る過程も異化である。

PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 P7

とあります。異化と同化のバランスがとれていれば体重の変化はないことになります。
同化や異化の程度は、食事の摂取量や栄養状態によって異なります。
運動をせずに生体内に貯蔵できるのは脂肪とグリコーゲンであり、筋肉量を増やすには、蛋白質をとりながら運動も行う必要があります。
筋力トレーニングでは筋肉量の増加と蛋白の同化を目的としていますが、そのためにはアミノ酸(筋肉の原材料)とエネルギーが必要になります。
飢餓状態では、筋力トレーニングを行ってもアミノ酸やエネルギーを得るために筋肉の蛋白が分解されるため、筋肉量は増加せず、かえって減少することになります。

栄養素とリハビリテーション

5大栄養素は糖質、脂質、蛋白質、ビタミン、ミネラルです。
糖質で重要なのはグルコースであり、脳での利用やグリコーゲン(貯蔵される糖質)の低下では持久力が低下するため、訓練前に食事でグリコーゲンの貯蔵が大切になります。
飢餓状態での筋肉量の減少には、栄養投与が必要となります。
脂質は過剰栄養で中性脂肪として体内に蓄積されますが、過剰な体脂肪はリハビリテーションの阻害因子となります。
蛋白質は筋肉で貯蔵され、飢餓や侵襲の際には筋肉の蛋白質を分解してアミノ酸が供給されます。このときに筋力トレーニングを行うとさらに筋肉を壊すこととなります。基礎エネルギー消費の1/3は筋肉で行われており、筋肉量の増加は消費エネルギーの増大につながら、太りにくい体質になります。
ミネラルの欠乏で筋力低下に関連するのは、カリウム、リンがあります。

飢餓時と侵襲時の代謝

飢餓状態の代謝について、

短期の飢餓では肝臓のグリコーゲンと脂肪組織の脂肪の異化(分解)が行われる。しかし、グリコーゲンは12〜24時間で枯渇するため、その後は筋肉や腸管の蛋白質の異化で生じた糖源性アミノ酸からグルコースが合成される(糖新生)。長期の飢餓では、多くの組織がグルコースではなく、遊離脂肪酸から産生したケトン体からエネルギーを獲得する。

PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 P11

とあります。
飢餓では体重減少によりエネルギー消費量が低下し、免疫機能低下や創傷治癒が遅れたり、臓器障害も起こり除脂肪体重の30%を失うと窒息死(餓死)に至ります。
このことから、同化よりも異化が優位の患者に筋力トレーニングを行うと逆効果となります。

侵襲時(手術、外傷、骨折、感染症、熱傷など)の代謝の変化について、

傷害気、異化期、同化期に分けられる。傷害期は短いが、エネルギー消費量が低下する。異化期では筋肉の蛋白質や脂肪の異化で、治療反応への内因性エネルギーが供給される。異化期では適切な栄養療法で一部、異化の抑制が可能である。一方、同化期では適切な栄養投与と運動療法の併用が必要である。

PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 P12

とあります。
このことから、異化期に筋力トレーニングを行っても筋蛋白質は増加せず、この時期には安静などの二次的な合併症予防が大切です。
同化期では適切な栄養管理の元トレーニングを行うことにより、筋蛋白質は増加します。この時期は筋力や持久力の向上が大切になります。
侵襲時の筋肉の状態について、

侵襲時、ほとんどのアミノ酸は筋肉から供給される。高度の侵襲では、1日250g以上のアミノ酸が供給される。そのすべてが筋肉から供給される場合、1日1kg以上の筋肉量の減少となる。高度の侵襲後のリハでは、筋肉の喪失が著しいため、侵襲前の栄養状態が良好でも回復には時間を要する。

PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 P12

とあります。
高度の侵襲ではエネルギーや蛋白質を投与しても、異化をすべて防ぐことはできません。余分なエネルギーは脂肪となるため、体重が維持できていたとしても筋肉量が減っている分、脂肪が増えただけになります。
中等度の侵襲では、侵襲前の栄養状態が良好であれば筋力低下は軽度〜なし、栄養状態が中等度障害されていれば筋力低下は中等度、栄養状態が重度障害されていれば筋力低下は重度となります。
このことから、侵襲前の栄養状態と、侵襲の程度を把握することで、適切な訓練を立案することが可能となります。

引用・参考文献