自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

依存症、アディクション(嗜癖)問題における複雑性PTSDと虐待サバイバー

【スポンサーリンク】

依存症やアディクション問題のある家族では、暴力や虐待が発生することがあります。飲酒のアディクションのような直接的な虐待(酔って殴るなど)だけでなく、アディクションの対応におけるなかでの虐待(ネグレクト、親の強い支配など)もあります。今回、依存症問題における複雑性PTSDと虐待サバイバーの関係について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

依存症、アディクション嗜癖)問題における複雑性PTSDと虐待サバイバー

生きづらさの症状化とPTSD様症状

依存症、アディクション問題のある家族において、虐待などを経験してきた人たちには、生きづらさの一部が症状化し、心的外傷後ストレス障害PTSD)様症状が出現することがあります。

 特に家族内暴力や虐待を受けてきた人たちのPTSDは、事件や災害など単一のトラウマではなく、複合的なエピソードのなかで重ねて心的外傷を受けてきた上で起こるため、精神医学においては複雑性PTSDやDESNOS(特定不能の極度のストレス障害)という診断概念で理解されています(今のところDSM-5やACD-10など国際的な診断基準には組み込まれていません)。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P146

回復のためには、アダルトチルドレンとしての生きづらさや、症状を工夫しながら過ごしてきた虐待サバイバーとしての価値を他者が認めることが必要になります。
過去の経験から、「人生をより良いものにしたい」という前向きな気持ちが回復には必要となるためです。
そのなかで、医療的な対応や自己の症状の理解、症状に対する工夫を考えていくことが大切になります。

PTSDの症状

PTSDには様々な症状がありますが、薬物療法は限定された症状にしか適応できません。このことから、リハビリテーションには医療的処置だけでは不十分で、症状による生活のしづらさがあることも念頭に入れておく必要があります。そして、まずは現在の生活に対する安全性を図っていく必要があります。
PTSDの主な症状群として下記のものがあります。

侵入症状:
トラウマとなった苦痛な出来事をくり返し思い出すこと。悪夢を見る。その出来事を再体験しているかのような感覚になること

回避症状:
その出来事に関連したものすべてを避けようと努めること。全体的に活動することに興味が持てず、孤立している感覚。人生に対する期待を持てないといった未来が縮小した感覚

覚醒亢進症状
入眠・睡眠維持の困難・刺激を受けやすい、怒りのコントロールができない・集中困難・過度の警戒心・過剰な驚愕反応

記憶について:
短期記憶がなかなか長期記憶にならない(遠い昔の話にならない。昨日あったことのように思い出される)。記憶が一部喪失

対人援助職のためのアディクションアプローチ P148

また、複雑性PTSDやDESNOSの症状群の主な特徴として、下記のものがあります。

感情覚醒の制御における変化(情動のコントロールがしづらい)

注意や意識における変化(健忘や離人感・解離)がある

身体化した症状がある:
消化器系の慢性痛、心肺系などの調子の悪さ

慢性的な人格変化
自分に対するもの:
無力感、癒すことのできない自己損傷の感覚、罪悪感、自己卑下感
加害者に対するもの:
加害者の信念を取り入れる、加害者を傷つけたい願望、加害者を理想化
他者との関係において:
他者を信頼できない。再び被害者になる傾向

意味体系における変化:
絶望感、希望が持てない。以前自分を支えていた信念の喪失

対人援助職のためのアディクションアプローチ P148

このような症状は、そのような体験をすると誰もが行うのではないかと思うくらい整合性のあるものです。
激しい暴力場面の目撃や体験により寝付けず(覚醒状態)、その場をどことなく避け(回避行動)、急に映像が頭に浮かびます(フラッシュバック、侵入症状)が、このような症状が強く定着してしまっている状態にあるといえます。

複雑性PTSDと虐待サバイバーのリハビリテーション

様々な症状に対する基本スタンスは症状を疎まず闘わず、「症状にやさしく」ということが大切になります。
被害者の、加害者に対する認知の歪みも認めるため、援助職に打ち明けなかったり、悪いどころか理想化してしまうこともあります。
このようなことからもリハビリテーションにおいては心理教育が必要で、疾患や症状の理解に加えて、誰もが起こる可能性があることを説明し、それを他者にも理解するよう働きかけることが重要になります。
「忘れる」、「思い出さない」、「悪く言わない」などのアドバイスは意味のない言葉であり、無力感や罪悪感、他者を信頼できない傾向を助長してしまうことになりかねません。
心的外傷を負った場面の責任や外傷を負ったことに関しては「あなたは悪くない」がキーワードになります。

本人に自分の症状群をある程度わかってもらったら、それらの症状群に対し、何らかの対応ができることを理解してもらいます。症状を意図して起こさないようにすることはできませんが、ある程度の逃し方を考えることでコントロールの感覚を持ってもらえるようにします。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P149

関連記事

子供の依存症、アディクション(嗜癖)と家族関係の回復段階 - 自分でできる体健やかブログ

依存症と家族関係〜家族システム論から見た機能不全家族〜 - 自分でできる体健やかブログ

機能不全家族とアダルトチルドレンの生きづらさ〜その克服に向けて〜 - 自分でできる体健やかブログ

引用・参考文献