自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

脳卒中片麻痺における「痙性麻痺」4つの症状とニューロリハビリテーションの考え方

【スポンサーリンク】

脳卒中片麻痺リハビリテーションでは、痙性麻痺という運動の異常要素にアプローチすることになります。痙性麻痺には4つの症状があり、「伸張反射の異常」「異常な連合反応」「共同運動パターン」「運動単位の動員異常」からなっています。この症状を理解しておくことは、自分が今何に対してアプローチしているのかが明確になります。今回、痙性麻痺の4つの症状と、ニューロリハビリテーションの考え方について文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

 目次

脳卒中片麻痺における「痙性麻痺」4つの症状とニューロリハビリテーションの考え方

伸張反射の異常(伸張された筋の過度な筋収縮反応:痙縮)

伸張反射の異常は、発症初期の自動運動がない段階から他動運動によって観察されます。
臨床では、腱反射、筋の被動性検査での抵抗感などで評価され、痙縮と呼ばれることもあります。

 痙縮とは、「反応強度が筋の伸張速度に依存する相同性筋伸張反射が病的に亢進した状態」と定義され、上位運動ニューロン病変の主症状である。痙縮は、伸張反射の亢進・筋緊張の亢進を特徴とし、重度になると、クローヌスや折りたたみナイフ現象が出現する。

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント P88

伸張反射における脊髄レベルでの制御は、まず筋の伸張刺激で筋紡錘が興奮し、その活動電位がⅠa繊維などの感覚ニューロン(求心性)を上向し脊髄に入ります。シナプスを介してα運動ニューロン(遠心性)へ伝達され、遠心性神経の興奮は神経筋接合部を介して伸張された筋を収縮させます。この情報伝達経路を「反射弓」と呼び、単シナプス性反射(脊髄内で求心・遠心神経間で一つのシナプスを介する)ともいいます。
伸張反射では、この反射経路に加えて、上位中枢での多シナプス性反射の経路もあります。筋の伸張により生じた活動電位は、脊髄後角に入力され前角のα運動ニューロンへ伝達し、同時に上位中枢に入力され、脊髄内の前角に戻り筋収縮を生じさせます。この経路では視床・体性感覚野・基底核・小脳・連合野・運動野などが関連しています。

伸張反射の亢進には、

①γ運動ニューロン活動の亢進、②筋の形態学的変化による筋紡錘受容器の感受性向上、③Ⅰa終末部でのシナプス前抑制の低下、④Ⅰa繊維の発芽形成、⑤シナプス後膜の感受性増大、⑥α運動ニューロンへの興奮性入力増大、⑦α運動ニューロンへの抑制性入力の減少

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント P88

が要因として挙げられ、複数の要因が関連していると考えられています。最近では、筋紡錘求心神経によるα運動ニューロンの発芽により、筋紡錘からの求心性入力が増え、α運動ニューロンの興奮性が高まることで伸張反射の亢進が起こるという説が有力となっているようです。

中枢からの制御を失った脊髄では抑制現象が起こり、運動ニューロンは機能解離状態に陥る。その後、機能解離を起こした運動ニューロンは時間経過とともに徐々に過興奮状態へと変化する。さらに、末梢伝導路の一部から発芽が行われ、本来、中枢からの制御を受けていた運動ニューロンのスペースまで末梢伝導路が占有することで求心性入力が増加し、α運動ニューロンの興奮性が増加すると考えられている。

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント P89

このことからも、伸張反射の亢進は中枢神経による制御ではなく、末梢からの信号にのみ支配されることで過興奮状態になっているといえます。

異常な連合反応

連合反応とは、

身体の一部が、随意的な努力、または反射による刺激によって動作を行おうとすると、他の身体部位の肢位が変化したり固定したりする自動的な動作

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント P90

と定義されています。
ある筋群に随意的に呼び起こされた収縮は、それに機能的に結びつきのある他の筋群の収縮を引き起こし、これは活性化される運動単位の数と発射頻度が多いほど現れやすくなります。脳卒中片麻痺患者では、随意運動に関連して、連合反応が起こりやすくなります。片麻痺者の場合、量的な面では連合反応の閾値が低く、現象が広範囲になります。質的な面ではいつも同じ筋群に出現し、これらの筋群は共同運動パターンに含まれています。片麻痺患者のでは、ある筋群が活性化すると、どのような課題においても常に同じ筋群が活性化されてしまいます。
連合反応のメカニズムは明らかになっていませんが、伸張反射の亢進により生じるものと考えられています。

中枢からの制御が低下した結果、脊髄前角細胞の興奮性が増大し、運動させようとしている筋とは関係のない筋群への収縮(運動)が観察されると考えられている。

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント P91

共同運動パターン

共同運動パターンとは、一定の固定したパターンでしか運動できない症状です。

上位中枢の損傷により、脊髄運動ニューロンが中枢からの抑制より解放されることで、筋の組み合わせの少ない、統合度の低い原始的な運動パターンとして出現しているのである。

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント P91

運動単位の動員異常

運動単位の動員異常とは、

適切に脊髄運動ニューロンを量的および質的に調節できない状態であり、大多数の片麻痺患者の症状として最もめだつ症状である。

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント P92

ここでいう量は活性化させる運動単位の数、発射頻度により筋グループを収縮させる能力で、質は活性化される運動単位の同期や、協調的に筋グループを調節させる能力をいいます。
運動単位の動員調節には、

動員する運動ニューロンの種類と総数による調節、運動ニューロンの発火頻度による調節、運動ニューロン活動相による同期的・協調的な調節が必要となる。

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント P92

運動単位の動員は、中枢からの下行性伝導路の破綻で症状が生じると考えられています。伸張反射や連合反応の異常、共同運動パターンが改善されても、運動遂行に低下が認められるような場合、運動単位の動員異常が認められることになります。

 ニューロリハビリテーションへの応用

ニューロリハビリテーションでは、運動の異常要素を制御させることが目的となります。
伸張反射の亢進により連合反応や共同運動パターンが生じると考えられており、伸張反射の制御を目的に脊髄運動ニューロンの過興奮を制御させ、適切な運動単位の動員を図り随意運動へとつなげていきます。
この制御には、シナプス前抑制や脊髄内の介在ニューロンの賦活性が関連があります。

筋紡錘からⅠa繊維を上行する信号は、シナプスを介して運動ニューロンへと伝達される。この時、Ⅰa群繊維のシナプス前終末に介在ニューロンが働きかけ、シナプス前終末から放出される神経伝達物質の量を抑え、Ⅰa群繊維から運動ニューロンへと伝達される信号量を低減する機構がシナプス前抑制である。
反射活動を抑制したい場合、高次中枢は、下行路を介してシナプス前終末に作用する介在ニューロンを賦活させ、伝達される信号量を低減させるのである。特に、能動的な運動時にシナプス前抑制が起こり、高次中枢は筋肉を活動させると同時に重要性の低い感覚入力を脊髄レベルでシナプス前抑制を使って効果的に抑制していると考えられている。

リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント P93

シナプス前抑制は運動の準備段階から行われており、運動準備期での脊髄レベルでの運動ニューロンの興奮性は、高次中枢により高まっているはずですが、脊髄性の反射が亢進しないのは、シナプス前抑制の作用によるものだと考えられています。これは、中枢からの運動指令を優先させるために、末梢からの刺激入力が運動ニューロンへ直接伝達されないよう高次中枢が抑えているためだと考えられます。
また運動準備において、刺激(感覚)に対する予測(イメージ)や注意も作用していると考えられています。
そのため、脊髄性の伸張反射では、注意や意識を向けることでも制御可能になる可能であるといえます。
このことから、中枢による制御には、運動準備期での体性感覚刺激に対する注意や、得られる感覚を予測(イメージ)することが重要で、これらの要素を課題として提示していく必要性があります。
体性感覚の識別はこれらの要素を含む課題であり、知覚探索の運動を要求させますが、伸張反射の異常に対しては他動運動での課題が中心となり、連合反応、共同運動パターン、運動単位の動員異常では自動介助から自動運動で筋出力を要求しながらの課題となります。
重度の運動麻痺では、他動運動による伸張反射や連合反応の制御が可能になってから、徐々に筋出力を要求しながらの識別課題を行い、連合反応や共同運動パターンを制御させながら運動単位への動員へとつなげていきます。

引用・参考文献