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自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

依存症と生育歴の影響ー発達課題の視点からー

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依存症のリハビリテーションにおいて、生育環境の影響を理解することは重要です。生育歴は対人関係の問題や、援助職との関係にも影響することがあるためです。今回、生育歴に関係する、発達課題と依存症の関係について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

依存症と生育歴の影響ー発達課題の視点からー

発達課題とアディクション嗜癖)の関係

人間の心の発達段階では、その段階ごとに欲求を満たすためにクリアされる課題とそれに伴う心の葛藤があります。それがなんらかの影響で十分満たされないで成長し、欲求と葛藤が大人の対人関係に持ち込まれ、常に満たされない状態が続くことは、対人関係における寂しさを抱えることになります。この満たされない思いにアディクション嗜癖)が使用されます。また、発達課題をクリアしていくときに、その人らしさが備わるのですが、クリアしていく時に伴う苦痛にアディクションを使うのではないかとの見方もあります。

新生児(〜6ヶ月)の発達課題

この時期では、快・不快の2つの感覚を味わいます。この感覚は自分からではなく、周囲の環境に委ねられます。自分が周囲の環境に依存していることは理解していないため、不快に対しては怒りを表現することになります。このとき、与えられるまで、もしくは疲れて寝てしまうまで、泣くことで表現していきます。その中で、だんだんと周囲に依存している自分を感じながら次の発達課題に移行していきます。
この段階の課題がクリアされなかった場合(与えられなかったもしくはこの感覚が好ましい)、自分の期待することがこちらから表現しなくても他者から来るべきという考えになり、期待通りにならないと怒りがある人になります。この発達課題に対してアディクションんが使用されることがあります。

幼児期(6ヶ月〜1歳半)

この時期では、

母性とのふれあいのなかで育まれる「基本的な信頼感」や「健康な自己愛」です。これは「自分は望まれて生まれてきた」「自分はこのままでかけがえのない存在だ」という感覚

対人援助職のためのアディクションアプローチ P100

が挙げられます。
この感覚が育まれないと、大人になってからも母性的なまなざしが無条件に全面的に向けられるような関わりを相手に望んでしまいます。その欲求を満たすために様々な対象関係をとり、それが破綻するとそこに怒りや恨みの感情が生じてきます。

この対人関係の課題を解決するために、援助職や今の周囲の人たちとの限界のある関係性のなかで、もう一度「かけがえのない存在」としての自己を確信していくプロセスを長く見守っていくことになります。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P100

幼児期(1歳半〜3、4歳)

この時期の発達課題は、前段階での信頼感や自己愛を得て行われる「自己主張の獲得」「見捨てられ不安の克服」「一人でいる能力」などが挙げられます。
自己主張の欲求が満たされないことで、健康な怒りを感じ、表現をしていきますが、怒りがうまく処理されないと恨みになっていきます。アルコール依存症ではこの部分でのつまづきがあると言われています。

怒りを表現して、相手からどのように欲求が満たされていくのかという体験を経て、ありがとう(感謝)、ごめんなさい(償い)が学習されます。大切なのは、子ども自身の欲求に焦点があたることです。強力な脅迫による抑制や、親が弱すぎて親を滅ぼしてしまう恐怖による抑制は、健康な自己主張につながりません。その場合は、怒りは抑え込まれるか爆発的に表現されるかになります。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P100

見捨てられ不安が生じた場合、前段階の感覚を再確認しながら乗り越えていくことになります。また基本的な信頼感(いつでも母とともにあることへの確信が心に住みつくことからできる感覚)が、一人でいる能力を育てます。
これらがうまく満たされないと、関係を重ねていっても基本的な信頼感が得られず、見捨てられが高いために常に相手に確認をとる、親密な関係をとることを恐れる、相手にしがみつく・試すなどの対人関係をとってしまうことがあります。
自分の怒りに対して、どう扱うかを獲得していないため、抑圧的で深い悩みを持っていきることになります。このような問題にアディクションが使われることがあります。

エディプス期(4歳〜6歳)

この時期の発達課題は、父性による母親からの自立になります。基本的信頼感の元、外の世界に出ていくことになります。
父という存在が、父と母、子どもという世代境界が成立していくことになります。この時期に母子一体のままでは、母親に守られた世界で成長していくことになり、支配的でコントロールされた世界は息苦しくなり、その問題に対してアディクションを使用することになります。

児童期・学童期(6歳〜12歳)

この時期の発達課題は「社会化」で、学校という集団でルールと調和を学び、勤勉性と劣等感の葛藤を乗り越えていきます。

この時期に、学校という環境側の要因、送り出す家庭における要因、本人にある何らかの問題などが相まってつまづくことがあり、そのSOS行動として現れるのが不登校や家の中でできるアディクションです。ゲーム依存や摂食障害のほか、抜毛や指しゃぶりなどの生理的な感覚を求めるアディクションが見られます。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P101

思春期・青春期(13歳〜20歳〜35歳)

この時期の発達課題は、「親からの精神的自立の一歩」「心理的離乳」などがあります。青春期になると、自己像の確立と、自分らしさを社会と調和していく課題となります。
この時期の獲得テーマとして、

親からの精神的自立の一歩
心理的離乳、秘密を持つことが始まります。これが持てないと、人との関係における境界線を理解する感覚が身につきません。

自我同一性のある程度の確立
個性の主張が始まります。親との葛藤が激しくなる時期で、スムーズに達成されることもありますが、家族のなかで取り入れた価値が窮屈な超自我となっている場合は、「ぶっこわす」くらいのエネルギーが必要になります。

性別を含めた自己像の確立
異性への関心を通してジェンダーに基づいた自分らしさを自覚し、世の中と調和していくための課題です。このときになんらかの理由で性別不快、性的成熟への拒否、女性性・男性性の乱用などが表現されることがあります。

自我理想と等身大の自己
理想の自己と現実の自己に折り合いをつけて、等身大の自己をつくり始めます。その際、こんな自分でも大切に思えるという健康な自己愛が働かない場合、理想と現実の極端な二極を激しく揺れ動き、摂食障害などのアディクションが見られることがあります。

能力と環境にふさわしい職業・生き方の選択と準備
等身大の自分が見えてきたもののそれが受け入れられず、絶望するか、自我理想に留まろうとするかの葛藤を経験しつつ、自分を受けいれて生き方の模索を始めます。

自己の主体的な倫理観の確立
親や社会の価値観の再検討を通して見につけますが、これができていないと次の世代の課題である育児がつらくなることがあります。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P103

が挙げられます。
このような発達課題に生じる葛藤に対してアディクションが使用されることがあります。
一次嗜癖と発達心理の関係性を見ていくことは、本人が自分の回復のために何が必要かを理解するために必要となります。

アディクションの原因や回復は、親や周囲の責任にするものではありません。子供時代に戻って立ち直すことはできないし、一人で頭で考えていても感覚というものはつかめません。現在の対象関係を活用して自分というバランスを取り戻す、あるいはもう一度健康な自己愛を自分で育て上げるといったプロセスが大事であり、援助職はそれを見守ることが求められます。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P103

成人期(35歳〜60歳くらい)

この時期の発達課題は「親密性・生殖性」「生産性」です。

親密な異性と生活し、親になり、次世代家族を形成していくとともに、社会では職業的なコミットメントを確立し、人材の育成や社会的業績、知的・芸術的な創造を行います。家庭や社会のなかでケアや教育する役割を担い、義務と責任を拡大して引き受けていくことがテーマです。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P104

友人の結婚など、おめでたいことを聞いて心理的苦痛を持ったり、なかなか仕事につけず葛藤したりと、社会のなかで孤立感や剥奪感、停滞感などにより苦しくなることがあり、そこにアディクションを使用することが見られます。

老年期(60代〜)

この時期の発達課題は「統合性」です。
前段階の生産性や役割・責任の縮小や喪失を経験する時期で、自分の人生を受け入れられるかの評価が行われます。負の評価になると絶望感があります。
人生が受け入れられない場合、別の人生を生きようと再出発しようとしますが、時間的な制約があると、不全感が生じます。このような時のSOSとして、また逃避や緩和のためにアディクションが使用されることがあります。

老年期(完結期)

この時期の発達課題は、心身機能や能力の喪失を受けいれていくことです。様々な喪失体験や生活の縮小の中で、その日を無事に過ごせるかが焦点となっていきます。

死は、周囲の者から生物一般の死まですべて近しいものになり、そのなかでできることを、現実的な感覚よりは超越した感覚で越えていきます。一方、それが叶わず絶望の感覚をもつことがあります。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P105

引用・参考文献