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自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

自動車運転に必要な高次脳機能

自動車運転再開 リハビリ

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 自動車の運転には、身体機能、視覚機能に加えて、高次脳機能も適切に働くことが必要になります。脳卒中などにより障害が生ずると、これらの機能低下が起こり、運転に支障が出ることがあります。特に高次脳機能障害は目に見えずらい障害であり、リスクも見落とされがちになります。今回、自動車運転に必要な高次脳機能について、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

 目次

自動車運転に必要な高次脳機能

先行研究家における自動車運転に必要な脳機能

先行研究として、ロンドン市内をジョイスティックで走る課題をfMRIで調べたものによると、

 運転準備には、前頭前野頭頂葉、小脳が、予期せぬ状況では、後頭葉外側、頭頂葉、島が、プランには上頭頂葉後頭葉外側、小脳、前補足運動野が、交通規則にの遂行には右前頭前野が関連すると述べ、交通規則の遂行という限られた状況について前頭前野における右側の優位性を報告した。

 

とあります。しかし、この結果は実際の運転場面とは異なるという課題はあります。
またfMRIの測定で、ボタン操作による運転ゲームでスピードを上げると前帯状回の活動が特異的に変化したとの報告があります。前帯状回は注意機能における反応選択・反応抑制や誤差のモニタリングの役割を遂行すると言われている部位です。

ドライビングシュミレーターを用いた研究における自動車運転に必要な脳機能

ドライビングシュミレーターを用いた研究によると、健常者では、

直線から右回りへの運転では、右前頭葉、右頭頂葉、右側頭葉、左側頭葉の活動が、直線から左回りへの運転では、右前頭葉、右頭頂葉、右側頭葉、左側頭葉に加えて、左前頭葉、左頭頂葉の活動が優位に上昇した。

渡邉 修・他 「総論・運転中の脳機能画像」 リハビリテーション医学Vol.50 No.2 2013 P94

とあります。
このことから、自動車運転には特に左右前頭葉、右頭頂葉、左頭頂葉の役割が重要であったといえます。

自動車運転に関する脳神経活動

自動車運転における概念的モデルとして、

運転の全体を統括する知的レベル(どこに、どのうような道順で、いつ出発し、いつ頃到着するのか、天候や渋滞の影響を考えた場合の運転計画等)(strategic level)、ついで、運転中に行う安全性に配慮する認知レベル(tactical level)(走行場所に合わせたスピードや車間距離の調整、視界が暗い場合のライトの点灯等)、そして、基本的な運転技術に関する認知レベル(operational level)(アクセル、ブレーキ操作、ハンドリング等の行動)

渡邉 修・他 「総論・運転中の脳機能画像」 リハビリテーション医学Vol.50 No.2 2013 P96

が挙げられます。
strategic levelでは、運転の目的から運転の計画を立案し、実行するまでの認知機能を指します。
運転中には様々な状況が予測でき、それに対するプランを挙げ、その中から適切なものを選択し、判断していくことが必要になります。

左右の前頭前野を主体とする遂行機能が動員される。またこのレベルでは、運転の安全性に対する自己責任の自覚と自己の運転能力の限界を自覚するメタ認知を含む。このレベルは、通常のドライビングシュミレーターでの評価は難しい。

渡邉 修・他 「総論・運転中の脳機能画像」 リハビリテーション医学Vol.50 No.2 2013 P96

tactical level、operational levelでは、変化する運転状況に対する認知と反応が求められます。時間的要素も関与することから、情報処理速度が求められます。また危険予知や感情のコントロールも重要であり、主に前頭前野の背外側や眼窩面の機能が関与します。
運転には主に視覚の重要性がいわれますが、これは走行車線をはみ出さず、前方車両と一定の距離を保つことや、車線変更などに関与する視空間能力、建物や他車と自車との距離感、車庫入れ時のバックミラーに逆に映る空間の認知には右角回を中心とする市空間能力が重要となります。
左右の頭頂葉は方向性注意に関与しており、右角回を中心とする病巣で左半側無視が顕著となります。左角回病変であっても、運転という複雑な課題においては、右への注意が低下し、反応時間が低下することがあります。
また、

運転は連続する動作であることから、視覚性ワーキングメモリを常に要し、主に右前頭前野の関与が想定される。そして、実際の運転操作に向け、視覚情報の運動への変換という過程を含む。そのためには、後頭葉頭頂葉前頭葉前頭前野)のネットワークを要する。

渡邉 修・他 「総論・運転中の脳機能画像」 リハビリテーション医学Vol.50 No.2 2013 P97

とあります。

自動車運転と注意機能

運転では一定時間の注意機能で維持される必要があります。

歩行者や信号機などの特定の刺激に注意するとともに、広告などの運転に関連しない不必要な刺激は消去し(選択性注意)、また新たな刺激に対し、注意を向きなおす、あるいは同時に注意を向ける(分配性注意)、これらの操作を休むことなく継続する(持続性注意)能力が求められる。こうした注意機構は、Supervisitory Attentional Control(SAC)と称され、首座は前頭前野にあるとされている。

渡邉 修・他 「総論・運転中の脳機能画像」 リハビリテーション医学Vol.50 No.2 2013 P97-98

ハンドル、ブレーキ、アクセル操作に関連するものとして、

下肢と左右上肢の協調性および操作方法の記憶(手続き記憶)が必要となる。両手の協調動作には、「拮抗失行」の責任病巣とされる帯状回等の前頭葉内側面の関与が、左手の意図的動作には大脳半球間の離断による「左手の失行」にみられるように、脳梁および帯状回の関与が、また、操作そのものの手順に関する記憶を運動に移す過程では「観念運動失行」にみられるように、左頭頂小葉周辺の関与が想定される。

渡邉 修・他 「総論・運転中の脳機能画像」 リハビリテーション医学Vol.50 No.2 2013 P98

運転中に必要とされる主な脳葉と役割のまとめ

前頭葉では①全般性注意と集中②推定、判断、予知③新規課題の学習に関与しています。
前頭葉では①全般性注意と集中②推定、判断、予知③新規課題の学習④視覚情報に関するワーキングメモリに関与しています。
頭頂葉では①道具の操作②論理的思考に関与しています。
頭頂葉では①全般性方向性注意②空間情報処理③視覚情報に関するワーキングメモリに関与しています。

引用・参考文献

渡邉 修・他 「総論・運転中の脳機能画像」 リハビリテーション医学Vol.50 No.2 2013