自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

認知症と自動車運転についてー運転の中断と薬物治療、疾患特性と交通事故ー

【スポンサーリンク】

認知症者と自動車運転においては、最近では交通事故の報道をよく目にするようになっています。認知症者の運転を中止させようとアプローチしても、なかなか実現が難しい現状にあるように感じています。そこで今回は、認知症者と自動車運転について、薬物治療や疾患特性と交通事故の観点から、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

 目次

認知症と自動車運転について

認知症者と運転

認知症者は、認知症発症後も多く者が運転を継続しており、特に軽度認知症では運転のリスクが高いにもかかわらず、運転中断に至っているケースが少ないとの報告があります。
認知症患者の運転能力に関する病識について、

認知症患者本人とその家族、主治医に運転の是非について質問をするほとんどの認知症患者が運転能力の低下を自覚しておらず、軽度認知症レベルでは家族も運転が大丈夫と回答していた。

 上村 直人ら「認知症と自動車運転」リハビリテーション医学 Vol.50 No.2 2013 P88

とあり、認知症者はCDR2の中等度以上のレベルでも運転能力の低下への自覚が乏しいとの報告があります。このことからも、認知症者では病識の低下が運転能力の低下の自覚欠如に関連している可能性があります。
認知症者の運転の実態について(認知症患者7329人)、

 運転している認知症患者の6人に1人が交通事故を起こし、事故を起こした患者の約半数は75歳未満であった。また患者の11%が運転を継続しており、そのうち16%に当たる134人が運転中に事故を起こしていた。

 上村 直人ら「認知症と自動車運転」リハビリテーション医学 Vol.50 No.2 2013 P88

 とあります。

認知症者の運転中断と社会心理的背景

認知症者が運転中断に至らない理由としては、本人の拒否、生活上運転が必要でやめられない、運転が趣味・生きがいとなっているなどがあります。
認知症と診断されて、主治医や家族から運転の中断を勧告されても、運転中断に成功したものは少ないとの報告があります。
このようなことから、認知症ドライバーの運転中断においては、主治医や家族からの勧告を受け入れられない心理社会的な要因があるといえます。
この問題は認知症だけでなく、様々な疾患においても共通することであり、運転免許返納で得られるメリットや、移動に関するフォーマル・インフォーマルサービスの充実が求められるといえそうです。

認知症による運転行為と事故

アルツハイマー認知症では、行き先を忘れてしまう、迷子運転や駐車場での車庫入れで接触事故を起こしてしまうような特徴がみられるようです。これは、視空間能力と運転能力の関連性があると思われます。
血管性認知症ではハンドル操作やギアチェンジの誤操作、速度維持困難などで事故を起こしてしまうような特徴があるようです。前頭側頭型認知症では、信号無視や注意維持困難、わき見運転による追突事故が多いようです。これは、前頭葉機能低下によるの衝動性や脱抑制などの行動障害が関連していると思われます。
認知症の背景疾患の違いにより、運転行為や事故の特徴が異なるということを知っておく必要があるといえます。

認知症ドライバー薬物治療

認知症治療薬は根本治療は困難ですが、認知症の進行予防の効果は示されています。
認知症治療薬と運転に関しては、

認知症度ドライバーでは、てんかんのように薬物治療をすれば運転能力の低下をきたさず初回生活に支障をきたさないかどうかという臨床疑問に対するエビデンスはまだ存在しない。

上村 直人ら「認知症と自動車運転」リハビリテーション医学 Vol.50 No.2 2013 P90

とあります。しかし、塩酸ドネペジルが認知機能低下だけではなく、アルツハイマー認知症者の運転能力の維持・継続に有効であり、早期での服用がより有効になるとの報告もあります。

引用・参考文献

上村 直人ら「認知症と自動車運転」リハビリテーション医学 Vol.50 No.2 2013