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自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

上肢筋力向上、分離運動促進のためのサンディング作業の筋活動とその設定

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作業療法ではサンディングを用いて上肢の筋力向上や片麻痺における上肢分離運動の促進を図ることがあります。サンディングは台の傾斜角の設定などにより、主に作用する筋活動に差があり、どの角度で、どの程度の負荷をかけ実施してもらうかを設定することが重要になります。今回、サンディング作業の筋活動とその設定について、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

 目次

上肢筋力向上、分離運動促進のためのサンディング作業の筋活動とその設定

サンディング作業を行う目的

サンディング作業では、上肢の筋力低下のある筋の強化や、脳卒中片麻痺者の分離運動の促進、関節可動域の改善等の目的で使用されます。
脳卒中片麻痺者の場合、目的とする動作を誘発し分離運動を獲得する事を目的にサンディングを行う場合は、通常片手で行う事が多くなります。

サンディング台の角度と三角筋上腕三頭筋の筋活動量

遠藤(2000)によると、三角筋の筋の筋活動量は、サンディング台の角度の変化については片麻痺者群、健常者群ともに、サンディング台の角度の増加に伴い大きくなります。
これは三角筋が肩の挙上筋であることから、台の角度が大きくなれば負荷は増大することによるものと考えられます。
上腕三頭筋の筋活動量は、サンディング台の角度の変化については、サンディング台の角度の増加に伴い、片麻痺者群で0°から30°の間は増大していたが、30°か ら45°の問で は減少しています。
姿勢との関係では、片麻痺者群では、体幹を倒していく姿勢の方が筋活動量が多い傾向が見られます。臨床にて、体幹を倒していく姿勢で行うと肘の伸展が行いやすい例が多くあり、この事との関連性があることがわかります。

ブロック形状(山型、棒形)の違いによる三角筋上腕三頭筋の筋活動量

遠藤(2000)によると、三角筋の筋活動量は、サンディング台の角度についてはサンディング台の角度の増加に伴いほぼ直線的に大きくなっています。また、他の作業条件が等しければ、姿勢については体幹を直立位に保持したの方が,加重については加重のある条件の方が筋活動量が多い傾向がみられます。ブロック形状の違いによる筋活動量の差は見られません。
上腕三頭筋については,サンディング台の角度について、加重なしの条件では筋活動量は少なく、サンディング台の角度の増加に伴い変化が少ない傾向が見られ、加重ありの条件では、サンディング台の角度の増加に伴って増大していたが、0°から30°の間の変化に比べ、30°から60°での筋活動量が大きく現われます。
また他の作業条件が等しけれ ば、加重については加重のある条件の方が、ブロック形状については棒型ブロックの方が筋活動量が多い傾向が見られた。棒形ブロックではより前腕回外位での肘伸展となり、上腕三頭筋の力が発揮しやすくなる。姿勢の違いによる筋仕事量の差に一定の傾向は見られなかった。これは姿勢変化があっても前腕の肢位に変化はないためと考えられます。

肩屈曲角度の違いによる肩関節周囲筋の筋活動

サンディング作業時の肩周囲筋の筋活動(三角筋前部、上腕二頭筋長頭、上腕三頭筋長頭、棘下筋、前鋸筋)について、岡嶋ら(2012)によると、テーブル傾斜0度では肩屈曲角度間に有意差はないとしています。テーブル傾斜30度では前鋸筋を除いた4筋において肩屈曲60度と120度間に有意差を認めています(肩屈曲60度→120度の順に、三角筋前部:94.9→40.9%、上腕二頭筋長頭:50.1→27.2%、上腕三頭筋:24.3→50.9%、棘下筋:32.4→66.4%)。テーブル傾斜0度、30度ともに肩屈曲60度では三角筋前部、前鋸筋の順に、肩屈曲120度では前鋸筋、棘下筋の順に平均%MVCが高く、いずれも50%以上を示しています。また、肩屈曲角度の増加に伴い平均%MVCが減少する筋群(三角筋前部、上腕二頭筋長頭)と、増加する筋群(前鋸筋、棘下筋、上腕三頭筋長頭)に分かれ、テーブル傾斜30度の方がその傾向が強かくあります。平均最大張力はテーブル傾斜0度における肩屈曲60度と90度間のみ有意差を生じ、その他の条件間では差はありません。
このことを受け、サンディング動作は、肩屈曲60度では主に三角筋前部による肩屈曲と前鋸筋による肩甲骨外転が、肩屈曲120度では前鋸筋による肩甲骨外転と上腕三頭筋による肘伸展作用がハンドルを前方に推進する力源となっている事が考えられます。平均最大張力は肩屈曲60度と120度間に有意差はないため、肩屈曲120度では三角筋前部と上腕二頭筋長頭の筋活動減少を代替して前鋸筋、上腕三頭筋長頭の筋活動が増加し、加えて棘下による関節窩への上腕骨頭引きつけ作用が増加し、肩屈曲をサポートしていることが推察されます。また、テーブル傾斜角度を上げ抗重力位に近づける程、肩の屈曲角度間における筋活動の変化が大きくなることが示唆されています。

機能向上を図るための設定 

以上のことから、基本的に角度を上げ抗重力位に近くなれば、また負荷が大きくなれば筋活動の変化は大きくなります。
片麻痺者の上腕三頭筋の促通においては、体幹を前方に倒していくような設定のもと、角度を30°までにして行うと筋活動が促されやすいと考えられます。荷重を加えるのであれば、30°から60°での設定が良い可能性があります。またその際棒状のブロックなどを使用し、前腕回外位に近づけて行うことが必要となります。
三角筋前部、前鋸筋の筋活動を促したいのであれば、肩屈曲60°となる角度設定で行い、上腕三頭筋、棘下筋の筋活動を促したいのであれば、肩屈曲120°となる角度設定で行うことがよいかもしれません。
遠藤(2000)は肩の側方挙上、肩甲骨面での挙上も強化する必要性も挙げています。

負荷の設定方法、回数、頻度

筋力強化においては、以下の記事を参考にしながら、負荷量、回数、頻度を設定するとよいかと思います。

happyhealth.hatenablog.com

引用・参考文献

遠藤てる 「脳卒中片麻痺者の一側サンディング作業の表面筋電図による分析 : サンディング台の傾斜角度と, 作業姿勢, プロック形状, ブロックへの加重との関連」東京保健科学学会誌 3(3), 191-198, 2000

岡嶋 雅史他 「サンディング動作における肩関節周囲筋の筋電図学的分析 ―肩の屈曲角度の違いに着目して―」2012 東海北陸理学療法学術大会