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自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

依存症と脳科学ー脳の報酬系と記憶系システムー

依存症

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依存症(アディクション嗜癖))が成立する脳科学的側面については、脳の報酬系と記憶系のシステムが関与しています。今回文献を参考に、脳科学についての視点から依存症(アディクション嗜癖))を捉え、その仕組みをまとめていきたいと思います。

 目次

依存症と脳科学ー脳の報酬系と記憶系システムー

報酬とアディクション

人は様々な欲求を持ち、それを満たすために行動を起こします。欲求が満たされると快感を得ることができます。欲求には食べ物、酒、物など様々ですが、これが報酬に当たります。

脳には報酬に反応する「報酬系」と呼ばれる一連のしくみがあります。そこが刺激されると、脳内にドーパミンやエンドルフィンという神経伝達物質が分泌されて快感(報酬効果)が得られることがわかっています。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P17

このことから、アディクションはこの脳内物質をもとめるためにする行為ということがわかります。
ドーパミンとエンドルフィンについて、

ドーパミンは生きる意欲につながる快感が得られ、飲食や成功体験、感謝や賞賛を得たとき、感動したり興奮したりしたときに分泌されるといわれています。
エンドルフィンは、ストレスから解放されようとするときに分泌されるといわれ、性行為や好きなことをしたとき、ギャンブルで勝ったときなどに分泌され、また、出産や傷を負ったときに分泌され、精神的苦痛をやわらげるといわれています。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P17

とあります。
このことから、報酬には生理的欲求に関わることから社会的承認を得ることなど様々なものがあることがわかります。そして、アディクションは条件次第で誰しもが起こってしまう可能性があるといえます。

報酬と社会的強化

報酬は社会のあり方とも複雑に関係しています。
人の場合、回避されるべき不快な体験も、人間関係の接触が報酬になる「社会的強化」という現象が関与してきます。
喫煙が苦であっても、かっこよさや大人の証といった承認の要素が喫煙を成立させることもあります。また飲めることが親しさの証と考える人は、飲むことが快感に感じなくても飲む行為そのものが社会的快感となります。
リストカットや盗癖などの自害・他害行為やモラルに反する行為は、その人にとってのみ評価や成功など意味のある行為となることもあります。これらの行為は個人的に強い報酬があり、その衝動性を抑えることは困難です。
他者にとって不快で、本人にとっても社会的にデメリットとなりますが、そこには本人のバックグラウンド(生育歴や生活歴)があり、本人の認知の特徴を知ることで理解される報酬が存在します。
このことから、アディクション形成までには、個人的な事情による意味や感覚による心理が作用していることがわかります。

記憶とアディクション

アディクションと長期記憶の関係について、

 脳の報酬系システムは、人が生きていくための重要なしくみですから、ある刺激でドーパミンやエンドルフィンが一度放出されると、その刺激や関連する状況は強く記憶されます。そして、報酬を予測したり期待の種を見つけたりと柔軟に活動するようになっていきます。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P19

とあります。
このことから、ある行為から得られる報酬を求め続けていると、それを調整する機能よりも求める機能の方が優先され、求めるための行動を自動的に選択するようになります。
この行為が脳の長期記憶に形成され、その後のアディクション形成の元となります。
アディクションは行動の繰り返しですが、記憶の分類の中でも「手続き記憶」によるものといわれています。手続き記憶は、自転車の乗り方など同じ経験を繰り返すことで長期記憶化されると、期間をおいても記憶されるシステムのことをいいます。

アディクションの定着と修正の困難さ

アディクションとして行為が定着すると、やめていた時期があっても再度始めると、記憶システムによって適度な行為として行うことは困難となってしまいます。
このようなことはアルコール依存症の方でもよくあり、何年断酒していたが、ふとしたことで飲酒したところ、以前と同じように飲んでしまったというようなことです。
長期記憶が忘却することによりアディクションがリセットされるのではないかとの説もあるようですが、長期記憶が忘れるほどの長い期間その行為をしないことや、その行為について記憶が干渉されるほどの別の認知による新たな行動が必要になるようです。

アディクションを認め、本人のそれに関する記憶が書き換わるほどの新しい認知や行動をしていくことが、アディクションをやめることの定着についてより積極的であるといえそうです。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P20

引用・参考文献