読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

依存症、アディクション(嗜癖)と心理ー否認を中心にー

【スポンサーリンク】

依存症やアディクション嗜癖)を持つ人には、特徴的な心理があると言われています。これは病的な心理でなく健康な状態でも時には持つ心理です。なんらかのきっかけや不快感から快に向かいたいという欲求から生まれる感覚と心理です。それが、「時には」から「常時」となったときに特徴的な心理傾向をもつようになっていきます。今回、依存症とアディクション心理的側面について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

依存症、アディクション嗜癖)と心理

パワー幻想

アルコール依存では、アルコールにより酩酊状態になります。
アルコールだけでなく、どのアディクションにも「酔い」といえる状態が存在します。
酩酊状態では、自分がまだ知らない可能性の大きい自分=自己拡大傾向を味わえます。また酔いは誇大的な気分を味わうことも可能です。このような心理的傾向を「パワー幻想」と呼びます。
パワー幻想では、万能感(自分が世界の中心にあり、自分がそれを意のままに操る)、合体感(自分と他者の区分をなくし、他者とともに同じ気持ちである)があります。これらは乳幼児期の退行した心理で、自分の苦労や快感を周囲は言わずともわかってくれるという感覚になります。
何かがあって落ち込んだりした時に、反省ばかりではなく、万能感や合体感を求めて味わい、自分を慰めて乗り越えていきますが、このうような感覚を常に求めなければならない場合、その感覚を得るために使った方法を習慣化することになります。
その方法がアルコール、買い物、ギャンブル、過食であったりします。
ギャンブルや窃盗癖では、金品が手に入るかいなかという緊張感と陶酔感があり、これは自己拡大・誇大傾向になります。拒食行為では自分の体重を思い通りにコントロールするという万能感で、過食は一気に食べる無我の境地と、吐いて体重を調整する万能感があります。
このようなパワー幻想を常に求める人がアディクションを形成するようになります。

他者への依存

 パワー幻想を持ち、外界との関わり方に合体感を求めると、境界線のない関係を他人に求めていくようになります。他者にもたれかかり、他者が自分の考えるように考えることを期待し、あるいは逆に他者が自分に頼り、自分が関係を掌握してコントロールしたいという関係です。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P33

わかってほしい、わかっているという事を強くはびこる関係になります。
このような関係は大人の社会ではほとんど成立しません。それは、人は全く同じように考えず、このような期待は他者にとって依存的、支配的と感じられるためです。
本人は現実に対して強い不安や不満があり、それらをパワー幻想によって否認し乗り越えようとしますが、それが失敗し、そこから生じる不安や怒りなどの感情をまたパワー幻想によって乗り越えようと繰り返していきます。そのうち常時アディクションを使用していくようになります。
依存傾向に付き合ってくれる人がいると、その人に対してより強い依存傾向が向けられ、アディクション継続のために巻き込んでいく事につながります。アディクションは家族や周囲の人を巻き込む事が多い病気です。

依存症と心理的防衛規制

心理的防衛規制について、

 自分の現実や感情をありのままに見て受け入れようとすることを避ける心の動きを「心理的防衛機制」といいます。心の傷やストレスフルな出来事やアンビバレンンツ(両価的)な欲求から生じる不快な感情に、そのまま直面することを避けたり弱めたりして、心を危機から守ろうとする仕組みです。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P34

とあります。心理的防衛機制は誰しもが持っており、心の安全を保つためのものであるにもかかわらず、ずっと規制がかかり続けると逆に心の健康が保てずに病気になることがあります。
心理的防衛機制の代表的なものとして、
抑圧:不快なことを無意識のなかに押し込む
否認:自分のなかでそれが問題だることを認めない
同一化:自分のありのままでなく、尊敬する人との考えなどを自分のものとして取り入れる
分離:自分の感情と認識を分けて否認し、認識だけ意識化する
知性化・合理化:自分の感情には焦点を当てず、理論的な合理的な思考で状況に臨む
反動形成:やりたいことをそのままやるのではなく、逆をやる
反射:自分の感情などを相手が思っていると思う
身体化:抑圧された葛藤が身体症状となって表れる
などがあります。
通常、心理的防衛機制はいくつかの規制が組み合わされながら、不快で困難な状況に直面することを和らげています。
継続的な事象に対して直面化を避け続け、否認し続けた場合、その精神状態に対して幼児的な酔いが求められ、アディクションを使用することにつながります。

否認の段階

アディクションを使用する人の否認には3段階あるといわれています。
一番目には、欲求を満たせないことや、本人を傷つける現実を否認するために退行的な状態を得ようと酔いを求めたり、嗜癖的な行動に置き換えたりする防衛機制が働きます(一次レベルでの防衛機制)。
二番目には、アディクションを使用し問題が出ているが、問題を認めるとアディクションが使えなくなるためにこれを否認します(二次レベルの防衛機制)。
アディクションの問題を起こしているのを認めないのが第一の否認で、問題があることを認めても自分でやめられるからとコントロール不能状態を認めないのが第二の否認になります。
コントロール不能状態を認めても、一時的な否認が溶解けていないため、どうしてアディクションが必要になっているのか、周囲への迷惑と自分への害がどれだけあったかは苦しいため触れずに、アディクションをやめれば良いとするのが第三の否認となります。
このようにアディクションは心の仕組みから成り立っており、心理的な回復には否認を本人のペースで解除していくことが必要になります。

否認の解除

否認は自分でやめようとしませんが、これは自覚がない否認となっているためです。
そのために行動に矛盾が生じ、本人と周囲の人間関係を悪化させることがあります。
周囲からの指摘があっても本人は否認するため、周囲の人間は問題を認めさせようとして振り回され、本人は否認を続けるため関係が悪化していきます。
防衛機制が解除されるのは、現実に直面しても安全で葛藤しなくてもよい状態になってからとなります。アディクションのある人にとっては、それが必要な一時的な問題があるために、安全で葛藤しなくてよい状態は来ることがありません。そのため、問題が悪化していき、他者からの介入があってはじめて否認解除のきっかけをつむことができます。
心の安全が確保していない状態で否認解除に向かっていくため、否認が本人にとってどれだけ厳しい対処であるのか、本人にかかる精神的負担が大きいことを理解しておく必要があります。

自立と依存の葛藤

アディクションが進行していくプロセスにおいて、依存欲求と自分でなんとかしようとする自立欲求が存在しています。
アディクションの人は、自立依存葛藤を抱えており、自立依存葛藤について、

「自立依存葛藤」は、3歳頃までの幼児が母性的な世界から自律性を獲得していく過程に現れ、自律的にふるまえば捨てられるという見捨てられ不安ともクロスして克服していくもので、誰にでもあります。いったん克服しても、思春期に再び自己確立のための自立依存葛藤の過程があり、20代では経済的な面や住まい方も含めた現実的な自立依存葛藤を経験します。そのほかにも、保護的な環境における人との関係は、誰でも居心地がよいほど自立依存葛藤が刺激されることになります。

対人援助職のためのアディクションアプローチ P38

とあります。
自立依存葛藤を克服できない事情や自立依存葛藤が激しく、そこに対する見捨てられ不安が大きい場合などでは、そこからの苦痛や感情に直面することができず、分離や否認などの防衛機制で処理されることもあります。
アディクションを使う人には、自立葛藤依存が刺激されやすい人が多く、それがアディクションを進行させてしまうことにもなります。

やめられない心理

アディクションの問題を否認しながらも、どこかで気づいていてやめたいと思っていたりもしますが、その時点ではメリットが感じられなくてもコントロール不能状態にあり、自分に対しての葛藤が起こり、苦しい心理状態となります。
やめられない自分を責めたり、嫌悪する気持ちなど、自己嫌悪感が生じます。またやめられない自分への自己評価も低くなります。
周囲への巻き込みにより関係が喪失し、孤立感や孤独感が強まってしまいます。
周りの関わりや言動が厳しいものに感じられ(自分の期待する退行した関係における理解や関わりと異なるため)、被害的な意識が起こりやすくなります。

引用・参考文献