読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

片麻痺の上肢の評価とアクティビティを用いたリハビリ

リハビリ 脳卒中

【スポンサーリンク】

脳卒中片麻痺者では、中枢神経麻痺は質的変化(パターン)として捉えられることが多いすが、中枢神経麻痺にも量的変化(筋力)として捉えることも必要になります。また片麻痺者の上肢機能評価には様々なものがあり、どのように上肢機能評価を行っていくかは、リハビリテーションを進めていく上で重要になります。今回、脳卒中片麻痺者の上肢機能評価について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

片麻痺の上肢の評価とアクティビティを用いたリハビリ

片麻痺上肢機能評価にはどんなものがあるか

片麻痺上肢機能評価には、様々なものがあります。
理学・神経学的所見による評価では、ROMテスト、筋力テスト、感覚テスト、深部腱反射があります。
中枢神経障害の回復過程に注目した評価では、Brunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストがあります。
片麻痺上肢の運動機能を運動パターンと課題遂行能力からみた評価では、脳卒中上肢機能評価(MFT)があります。
脳卒中の機能障害を包括的にみた評価では、脳卒中機能評価法(SIAS)、Fungl-Meyer評価法などがあります。

happyhealth.hatenablog.com

片麻痺以外の上肢機能にも使用可能なものとして、簡易上肢機能検査(STEF)があります。
臨床でよく用いられているBrunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストは、治療目標が次の段階であり、機能回復に沿った評価と治療が行えるメリットがあります。また回復段階の理解しやすく、臨床像の把握も行いやすいという利点があります。

中枢性運動麻痺の回復

中枢神経性麻痺では、質的変化のみと捉えられがちですが、中枢性運動機能障害にも量的な筋力低下はあります。Brunnstrom stageと徒手筋力テストを対応させた場合、 stageⅠでは筋収縮が見られないためMMT0となります。 stageⅡはMMT 1に対応します。 stageⅢで十分な共同運動が見られるとMMT3以上となります。このようなことから、運動麻痺の回復過程では質的変化(パターン)と量的変化(筋力)があることがわかります。

Brunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストの特徴と問題点

Brunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストでは、回復段階により分類しています。
Brunnstrom stageではstage1からⅢまでは共同運動が完成する過程となり、stageⅣ〜Ⅵまでは共同運動からの分離となります。
共同運動には屈筋共同運動と伸筋共同運動があります。

 

屈筋共同運動

伸筋共同運動

肩甲帯

挙上・後退

前方突出

屈曲・外転・凱旋

伸展・内転・内旋

屈曲

伸展

前腕

回外

回内

分離運動では、屈筋共同運動と伸筋共同運動の肩甲骨、肩、肘、前腕の各要素が入り混じりながら可能となっていきます。
上肢回復段階のテストにおける主動作筋については、

 

肩甲帯

前腕

屈筋共同運動

上方回旋筋群、菱形筋

三角筋中部

上腕二頭筋

回外筋群

伸筋共同運動

前鋸筋

大胸筋

上腕三頭筋

回内筋群

腰の後ろに手

下方回旋筋群、菱形筋群、広背筋、大円筋など

大胸筋、内旋筋群

上腕二頭筋

 

前方水平挙上

上方回旋筋群、前鋸筋

三角筋前部

上腕三頭筋

 

肘90°で回内外

 

内旋筋群

上腕二頭筋

回内筋群

横水平挙上

上方回旋筋群

三角筋中部

上腕三頭筋

回内筋群

前方頭上に挙上

上方回旋筋群、僧帽筋など

三角筋前部

上腕三頭筋

 

肘伸展位で回内外

上方回旋筋群、前鋸筋

三角筋前部

上腕三頭筋

回外筋群

というようになります。
Brunnstrom stage、12段階グレード片麻痺機能テストでは、上肢の運動をひとまとめにしてみていますが、臨床場面では表のような典型的パターンを示す患者ばかりではありません。
様々な上肢の状態でも同じstage、同じgradeとなることもあります。各テストの動作を行ったときに、分離できつつある関節運動があっても、stageⅢと表現されてしまうことがデメリットとなります。

様々な運動機能をみるための片麻痺の上肢機能評価

片麻痺者の上肢を実用手、補助手など、「良い手」にしていくためには、上肢全体としてみるのではなく、肩、肘、前腕、手関節、手指と個別に評価していく必要があります。
肩の屈曲と外転、肘の屈曲と伸展、上肢を体側につけ肘屈曲位で前腕の回内外など、評価したい動きを行わせ、このときに共同運動の支配下で運動が実行されるのか、もしくは共同運動から分離した単独運動が行われるのかを確認します。また、肩、肘、前腕などにおける随意運動がどの程度可能か、各関節運動の筋力も評価します。このような評価を行うことで、質的(パターン)と量的(筋力)の両方を評価していきます。

共同運動に支配されている運動でも、分離されつつある運動でも、分離された運動でも、各関節に相対的評価である徒手筋力テストを行うと、片麻痺患者において各関節の筋力に差があることが多い。

作業療法のとらえかた P14

片麻痺患者の上肢挙上運動では、肩甲骨と肩甲上腕関節の動きの割合が、非麻痺側上肢と比較して異なることが多くなります。ほとんどの場合、肩甲骨上方回旋の動きが乏しく、肩甲上腕関節の動きにより肩甲骨の動きを代償しています。逆に肩甲骨の動きが少ない場合では、三角筋の活動が低下しています。上肢の効果的な使用のためには肩甲骨の前方突出(外転)も重要になるため、評価しておく必要があります。
12段階グレード片麻痺機能テストでは、スピードテスト(予備テスト含む)がありますが、予備テストは肘伸展での側方への90°挙上で、肩の挙上が十分でないときに行われます。通常のスピードテストでは手を頭上に挙げますが、両者には肩甲骨の上方回旋の差があり、予備テストでは、肩甲骨の動きを肩甲上腕関節で補うことができます。
スピードテストを実施して、最高の回復段階の判定を得たとしても、徒手筋力テストを行うと麻痺側上肢の筋力低下、筋持久力低下、筋疲労をおこしやすい特徴があります。

 手指の回復段階と評価

指の回復段階の動作としての評価には、下表のようなものがあります。

Stage1

随意運動なし

Stage2

指の総握りのわずかな出現

Stage3

指の総握りが十分に可能、総開きは不能

Stage4

指の総開きが自動的に少し可能

横つまみが可能、母指の動きで離せる

Stage5

指の総握りが全可動域で可能

指伸展位で指外転が可能

指腹つまみ、円柱or球握りが可能

対向、3指つまみなどが可能

Stage6

指屈曲位で外転可能、ボール投げ、ボタンのはめはずしなど可能、多少の巧緻性にかけてもほぼ正常動作が可能

横の分離

縦の分離

指折りかぞえ

母指のみ伸展

示指のみ伸展

母指橈側外転

母指掌側外転

キツネ、ピストルの形をつくる

MP屈曲、IP屈曲

MP屈曲、IP伸展

横の分離とは各指間で相互に影響されないことを指し、縦の分離はMP関節とIP関節の間、母指ではさらにCM関節との間の運動で、相互に影響されないことを指しています。
手指の回復段階と、関連する筋との関連を考えることが評価においては重要になります。
手指の集団屈曲は外在筋の屈筋による働きで、集団伸展は外在筋の伸筋による働きです。stageⅣからの分離運動では、内在筋が作用することにより可能となります。
例えば、指を完全伸展するためには、総指伸筋だけではなく、背側骨間筋や掌側骨間筋や虫様筋の働きが必要となります。
stageⅤ〜Ⅵの方に徒手筋力テストを行うと、外在屈筋>外在伸筋>内在筋という筋力の関係ができます。筋力の強い筋肉の方が回復における優位性があり、3つの筋群は同じ回復過程をとらず、筋力の不均衡が生じることになってしまいます。これは内在筋の筋力低下につながり、巧緻動作や協調運動の低下、道具使用の困難などにつながることがあります。
片麻痺者では、筋緊張異常により手の変形を起こすことがあります。総指伸筋の緊張が高いと、MP関節伸展、IP関節屈曲位をとるintrinsic minus handとなります。stageⅤの患者でもintrinsic minus handを示すこともあり、これは普段の手の使用が外在筋中心に働き、内在筋との筋力の不均衡が生じたためだと考えられます。このような場合には内在筋の筋力増強が必要になります。
MP関節、IP関節の筋活動や可動域改善のリハビリテーションについては以下の記事を参照してください。

happyhealth.hatenablog.com

 

happyhealth.hatenablog.com

手関節の回復段階と評価

手関節の運動には背屈・掌屈、橈屈・尺屈があります。
手の使用における手関節の動きでは、特に背屈、橈屈が重要になります。
共同運動の影響が強い場合には、手関節掌屈に尺屈、手関節背屈に橈屈が同時に起こりやすく、掌屈・背屈が橈・尺屈にどれだけ分離して行えるかをみることが大切になります。
手関節の回復段階では、掌屈が橈・尺側手根屈筋の活動により出現し、次に背屈が橈・尺側手根伸筋の活動により出現します。次に橈側手根屈筋、橈側手根伸筋の組み合わせで橈屈が、尺側手根屈筋、尺側手根伸筋の活動により尺屈が可能になります。
手関節の橈尺運動が行えない場合、肩の外転や内旋などを強める代償運動で動作を行う場合があります。

片麻痺者の上肢の中枢機能と末梢機能の関係

片麻痺者の上肢動作を観察すると、手指のつまみ動作が机上では可能でも、上肢を空間で高い位置に保持しながらではつまみ動作が十分にできなかったり、上肢挙上位では手関節背屈がうまくできなかったりすることがよくあります。
stageⅤの患者が上肢挙上、肘伸展位でのつまみ動作を行うと肘の屈曲がみられ、動作のスムーズさに欠けるというように、上肢の個別の関節運動は良好でも、全体の動作の中では不十分となり、何回も同じ動作を行うとできなくなることもあります。
これらの動きは、筋力の弱く、筋疲労が起こると生じやすい現象です。分離運動が可能であっても、中枢(近位)の筋の筋力が弱いため、肩甲骨や肩甲上腕関節の固定が努力的となり筋緊張が高まりやすくなります。その結果、末梢(肘以遠)の動きが制限され、分離しつつある動きや分離している動きが行いにくくなります。
このことからも、中枢機能が末梢機能に影響を与えることがわかります。

片麻痺者の筋力評価の必要性

臨床では、片麻痺者が手を使い作業遂行する場合には、中枢(近位筋)の固定力が低下していると、努力性の収縮になり筋緊張が高まり、末梢(肘以遠)の機能が十分に発揮できないことがあります。
これは、中枢(近位筋)の筋力低下の問題があることがわかります。
中枢神経麻痺では質(パターン)の変化を評価することも重要ですが、量(筋力)の変化を評価することも重要になります。stageⅤ前後では単関節での運動も可能になり、徒手筋力測定も可能であり、共同運動の支配下にあるときでも、おおまかに筋力をみておくことも大切な評価になります。
粗大筋力だけでなく、握力、つまみ力をみておくことも、手の使用を促していく上では重要になります。

 アクティビティを通した片麻痺への上肢機能アプローチ

共同運動の出現以降、上肢の動きが出ても各関節の動きには差がある状態です。
肩周囲の主観的問題点としては、「手の重み」が考えられます。これは、正常では感じない上肢の重みを、筋力がないために感じます。この訴えはstageの高い患者でも聞かれ、中枢の固定力が向上すれば「軽くなった」と認識が変わり、易疲労性も感じにくくなります。また中枢の固定力が向上すれば、麻痺側上肢の使用において、努力的な中枢雨の筋収縮が軽減され、筋緊張が異常に高まらずに末梢の機能が発揮できます。そのため、徒手的に肩甲骨挙上、外転、肩甲上腕関節の動きを誘発し、筋力強化を行う必要があります。
共同運動の誘発や分離運動の獲得には、サンディングやワイピング、スケートボードを使用し、分離運動が出現して単関節の運動が行えるようになると徒手的な筋力強化も行います。この際、肩の痛みに注意し、適切な課題を設定していきます。脳卒中片麻痺者の肩の痛みに関しては以下の記事を参照してください。

happyhealth.hatenablog.com


手指の場合も同様に、分離運動が出現したら徒手的に筋力増強を行います。
手指における骨間筋の筋力低下には、手指伸展位(MP軽度屈曲、IP伸展)での粘土(セラプラスト)伸ばしも利用されます。このとき、内在筋の筋力が弱いと、手指屈曲に働く外在筋の浅・深指屈筋が働きIP関節屈曲位となってしまいます。IP関節屈曲位では外在筋の筋力増強となるため、粘土の硬さを適切なものにする必要があります。
肘、前腕、手関節では単独の関節運動を行うことは、筋力増強だけでなく分離運動の獲得も助けます。
手の使用においては、手関節と手指の連動した動きが大切となり、手関節背屈位で手指の使用ができるようにしていく必要があります。
手指の巧緻性や協調性が悪い場合(stageⅤ、Ⅵ)、内在筋の筋力低下と、筋と筋の協調した働きが起きにくいことが原因となることが多くあります。
手指機能がstageⅤ、Ⅵで箸の使用が困難な場合、粘土伸ばしによる内在筋の強化を行います。また、ペグ操作も行い、1〜3指でペグを回転(反転)させてからボードに挿すようにします。ペグの回転は逆回転も行い、ボードに挿すときには手関節が背屈位となるようにボードには傾斜をつけておきます。粘土伸ばし、ペグ操作を十分に行うことができれば、箸の使用は可能となります。
手指の促通の際に手関節背屈が行いにくい場合はコックアップスプリントを使用し、手指の対立位が取りにくい場合には短対立スプリントを使用し、母指外転を補助します。手指操作におけるスプリントについては以下の記事を参照してください。

happyhealth.hatenablog.com

引用・参考文献