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自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

作業療法士でもわかる歩行のバイオメカニクス!歩行と股関節周囲筋の作用!

リハビリ 歩行

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歩行において、股関節の作用は重要です。立脚期、遊脚期、体幹の安定性など、様々な場面で股関節周囲筋の働きによって歩行は制御されています。今回歩行における、股関節の様々な役割について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

歩行のバイオメカニクス!歩行と股関節周囲筋の作用!

立脚初期における股関節周囲筋の作用

立脚初期において、股関節では大臀筋の働きが重要になります。大臀筋は、下肢を地面に押し付けることで立脚の基盤となり、重心の前上方への移動をさせるのに必要になります。
大臀筋には上部・下部繊維がありますが、それぞれ股関節に対する作用に違いがあります。大臀筋上部繊維では股関節の軸よりも上側に走行しており、股関節の伸展、外転、外旋に作用します。一方、大臀筋下部繊維では股間節の軸よりも下側に走行しており、股関節の伸展、内転、外旋に作用します。
立脚初期の踵接地の直後では、大臀筋下部繊維が収縮し、その後大臀筋上部繊維が活動を始めます。
大臀筋下部繊維が作用する踵接地直後では、股関節を伸展とともに内転させ、支持脚側へ引き寄せる役割があります。その直後、支持脚側に移動してくる重心にブレーキをかけるように大臀筋上部繊維の活動がみられます。このような短い期間での順序性のある大臀筋下部・上部繊維の活動により、重心の支持脚側への移動が安定したものとなります。この時、大臀筋上部繊維の収縮が遅れてしまうと、骨盤は支持脚側へ移動し、骨盤のswayが起こってしまいます。
大臀筋下部・上部繊維が順序良く活動する仕組みは、足部の動きとの関連が考えられています。
大臀筋下部・上部繊維が活動するタイミングと、踵骨外側突起、内側突起が接地するタイミングはよく一致しています(神経学的、運動学的にそのようなメカニズムになるかは明らかになっていません)。

 荷重応答での膝関節の安定と股関節周囲筋の作用

踵設置後の荷重応答では、大きくかかる負荷に対して動的に安定した要素を作っていく必要があります。その際膝関節の動的安定化が得られれば、立脚期は安定したものとなります。
膝関節は、踵接地での衝撃吸収のために伸展位から屈曲位に変わります。膝関節の靭帯は、伸展位では緊張していますが、屈曲位では緩みの位置となり不安定な状態になります。そのため、踵接地後の膝関節では、大きな荷重負荷を吸収するために、屈曲運動を調整しながら膝関節の安定を図る必要があります。
膝屈曲位での動的安定化には、大臀筋による作用が関係してきます。
踵接地後の股関節では、大臀筋の働きにより伸展運動が起こりますが、この大腿骨を股関節周囲に回転させるモーメントは、大腿骨の遠位部を脛骨の関節面上に押し付ける作用があり、それが膝関節の動的安定化につながります。
他にも大臀筋の外旋作用では、大腿骨が脛骨上で外旋しますが、この時脛骨は立脚期にかけて足関節の底屈、外反の動きに連動して内旋します。この大腿骨の外旋、脛骨の内旋により、膝関節は相対的に内旋位となります。膝関節内旋位では、前十字靭帯と後十字靭帯の交差が強まり、関節面において接合力が上がり膝関節の安定化が図られます。

重心移動と股関節

直立立位から右側へ重心を移動する場合、右側へ重心移動するためには重心移動の前に床反力作用点(左右の各足に作用する右足の床反力と左足の床反力を足し合わせた、身体全体に作用する合成床反力)を左側へ移動することが必要となります。
床反力作用点の位置は、身体と床面が接触している範囲における圧力の分布度合いによって決定します。両脚に50%ずつ荷重した立位では、床反力作用点は左右の足のちょうど真ん中になります。
床反力作用点を左側に移動するためには、右側の荷重割合が左側よりも大きくなるように、左側の股関節外転筋を働かせて床面を側方に押し、重力と床反力の釣り合いを崩します。
このとき、股関節外転筋が発揮する筋力に関しては、床面の形状や接地面積、摩擦など、足底と床面との接地条件により変化します。そのためには床面と足部の接地状態を常にモニタリングする必要がありますが、感覚障害や筋緊張異常などにより足底からの感覚入力が低下している場合、外転筋力のコントロールが難しくなります。

重心制御と股関節の両側性活動

重心に生じる加速度の大きさは、床反力作用点と重心線との距離によって決まり、床反力作用点が重心線から離れるほど、重心に生じる加速度は大きくなります。
一方の脚を右側へ大きくステップする場合、左脚(重心を加速させる方向と逆方向の脚)が地面を押し、床反力作用点を移動することで重心に加速度が生じ、重心移動が起こります。すると、転倒しないようにもう一方の脚では、重心の移動してくる方向に脚を踏み出し、新たな支持面を作っていく必要があります。このとき、加速している重心制御のためには、重心の加速度と逆向きで同じ大きさの加速度が必要になります。
このことから重心の制御には、両側の股関節の協調的な活動が必要になります。脚が床面を押して床反力作用点を移動し重心を加速させることに対して、もう一方の脚で重心線を挟んで両脚が対角線上で等距離の感覚で配置されていることが重心のコントロールでは大切になってきます。

歩行での股関節の両側性活動

前途した股関節の両側性活動では、静止状態から一歩踏み出すような場合には、重心制御が行えますが、歩行のように、すでに重心に加速度がある運動ではそれだけでの重心制御は不十分となります。
歩行と重心の制御について、

 すでに重心が加速度を持っているような場合には、力によって重心の位置が直接決まるわけではなく、決まるのは加速度ですから、この加速度がそのときの速度に追加され、新しい速度が決まり、この速度の集積効果重心の位置がようやく決まってきます。したがって、単純に股関節が対極的に相反する方向へ動いて支持面を作っただけでは、重心の動く方向と新しい支持面の位置がずれてしまいます。そのずれによって、重心は別の方向に加速度を持ってしまうので、その加速度を打ち消すために、さらにもう一歩脚を出さなくてはなりません。

歩行の臨床バイオメカニクス P45

とあります。
なお、歩行中に急停止する場合には、最低でも二歩脚を出して止まる必要があります。

歩行中の体幹の安定性と股関節

歩行中、股関節は逆の動きをしており、一方の股関節が伸展している場合には、もう一方は屈曲しており、相反する方向へ同じ速さで動きます。
このような両側性の股関節の活動により、踵接地時に左右の脚は重心を挟んで等距離に置くことが可能になります。
一方の股関節伸展筋群が活動するときには、もう一方は股関節屈筋群が活動しており、その活動は等しいものとなります。この働きにより、歩行中の骨盤の位置を直立姿勢に保つことが可能となります。股関節伸展筋の大臀筋では、大腿骨の伸展と同時に骨盤を後傾させ、股関節屈筋の腸腰筋では、大腿骨の屈曲と同時に骨盤の前傾させます。
このことから、股関節の両側性の活動によって股関節屈伸筋が拮抗するように働くことで、体幹を直立な状態に保つことができています。

 遊脚期と股関節

遊脚期の大腿と下腿の運動は、遊脚初期に大腿が股関節屈筋により前方に振り出さると、下腿は慣性力により膝関節が受動的に屈曲します。
遊脚後期では、大腿の前方回転が股関節伸展筋により調整されると、下腿の慣性力により膝関節が伸展します。
このように、膝関節の運動は股関節の動きから誘発されます。このことから、股関節機能が十分に働くことができれば、膝関節の運動は受動的に起こるため、複雑な制御をする必要はありません。
多くの患者は遊脚期での下肢の振り出しが困難と感じていますが、これは股関節の機能低下によるものと考えることができます。
遊脚期における股関節の機能は、腸腰筋が重要になります。立脚中期以降、重心の前方移動にブレーキをかけるために腸腰筋が遠心性に活動します。立脚後期では股関節は伸展可動域を大きく使い、ステップ長を伸ばしますが、このとき遠心性収縮をしている腸腰筋は伸びたバネのようにエネルギーを蓄えます。反対側の脚が接地するときには、バネが縮まるように求心性収縮に変わり、遊脚でのエネルギーとなります。
このようなことは腓腹筋でも起こっています。立脚後期で重心の回転軌道を上方へ修正するために、腓腹筋の強力な活動により踵離地が起こります。この腓腹筋の活動は、反対側の脚が接地により前足に荷重がかかると、急激に荷重負荷から解放されるため、足関節の底屈、膝関節の屈曲を引き起こします。足関節が底屈すると足部が下腿を前方に押し出し膝関節の屈曲を助けます。また腓腹筋は二関節筋のため、膝関節を屈曲させ遊脚の補助を行います。
これらのことから、遊脚期での下肢の振り出しは、立脚中期以降から開始されており、その相での股関節伸展や踵離地が不十分であると、遊脚は随意的な下肢の引き上げによってなされることとなり、歩行の自律性が失われてしまいます。

引用・参考文献