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自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

作業療法士でもわかる歩行のバイオメカニクス!Heel Rockerの役割!

リハビリ 歩行

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歩行では、重心のなめらかな移動が不可欠ですが、それを実現するために「立脚期におけるロッカー機能」があります。健常者の歩行では3つのロッカー機能があるといわれており、今回は立脚初期に働くHeel(踵)Rockerの役割について、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

 目次

Heel Rockerと衝撃吸収

歩行周期の中で、最も重心の位置が高くなるのが立脚中期です。踵接地時に重心が最も高い位置から最も低い位置に移動しますが、その高低差は約2〜3㎝となります。
この際の衝撃を吸収する役割をHeel Rockerが担っています。
立脚初期のHeel rockerの時期では、体重の1.2〜1.5倍の荷重がかかると言われており、衝撃吸収がなされない場合、骨、関節、内臓などにはかなりの衝撃が加わることになります。
またこの時、足関節背屈筋群の遠心性収縮とほぼ同時期に、膝関節伸展筋群の遠心性収縮が行われています。
踵接地の際には膝関節は伸展約0度となります。なお、その際膝関節10度屈曲すると外側側副靭帯(ACL)が緩むため、5度の屈曲が限度となります。踵接地後に遠心性収縮をしていた前脛骨筋は、同時に脛骨(下腿)を前方回転させ、膝関節を屈曲させます。この際、大腿四頭筋の遠心性収縮により膝の屈曲にブレーキをかけ、膝関節の屈曲を約15度まで許します。なお、このような遠心性収縮が得られない場合、膝は過伸展してしまいます。
他にも股関節では、踵接地時に骨盤が約4度遊脚側へ側方傾斜しますが、これは立脚側の股関節外転筋の遠心性収縮によりコントロールされ、衝撃吸収としての役割を持ちます。

踵接地以前の衝撃吸収

衝撃吸収はHeel Rocker以前でも行われています。

反対側の足関節底屈筋群が遠心性に働くことによって、重心の前下方移動にブレーキをかけ、接地する下肢の動きをコントロールしている。

介助にいかすバイオメカニクス P100

踵接地側のHeel Rockerと反対側の下肢の働きによって、巧みな衝撃吸収のメカニズムが働いていることがわかります。
筋力低下などで筋機能が低下した場合には、接地による衝撃が大きくなり、関節に負担をかける歩行となってしまいます。
底屈筋群の筋力低下がみられる場合、反対側の踵接地の際の膝屈曲が起こりやすくなり、膝伸展筋の負担が大きくなることがあります。

Heel Rockerの筋活動

Heel Rockerの筋活動について、

 前脛骨筋、大腿四頭筋ハムストリングス、脊柱起立筋など、活動するほとんどの筋が遠心性に収縮して衝撃の吸収に動員されます。

歩行の臨床バイオメカニクス P7

とあり、衝撃吸収があるからこそ体重の1.2〜1.5倍の荷重で抑えられていることがわかります。
遊脚期の終わりでは、足関節が底背屈約0度となり、踵接地した時から約5度の底屈がみられます。この時には前脛骨筋の遠心性収縮により足関節の底屈にブレーキをかけることで、衝撃吸収に加えて足底接地までの時間を遅らせています。
足関節の底背屈0度で踵接地することは、足部の安定性に重要となり、それは距骨の関節面の形状との関連によるものです。

距骨の関節面は上方から見ると、後方が狭く、前方に行くに従い広くなっています。そのため足関節が底屈位にある時には、距骨関節面の狭い部分が脛骨と腓骨の間にはまり込むため、足関節は緩みの位置となり可動性が高まります。一方、足関節背屈位では距骨関節面の広い部分が脛骨と腓骨の間にはまり込むため、足関節は締まりの位置となって、足関節の可動性は制限されます。

歩行の臨床バイオメカニクス P24

このことから、踵接地において適切なHeel Rockerを形成するためには、足関節が安定する、最も適合性の高い底背屈0度に配列される必要があります。

足関節背屈0度に配列できない原因

評価方法:Heel Rocker時下肢の肢位である、股関節屈曲約30度、膝関節伸展0度での足関節背屈角度を確認します。

原因①
腓腹筋ハムストリングスの筋膜の連結(superficial back line:足底筋膜ー下腿三頭筋ーハムストリングスー仙腸靭帯ー胸腰筋膜)による筋緊張の相互作用。
ハムストリングスが高緊張だと、腓腹筋や足底筋膜の緊張も高くなります。そのため、足関節の背屈制限が起こる可能性があります。

原因②
腓腹筋の緊張と、足底筋膜の緊張の合力により、踵骨と距骨が前方に押し出されます。
そのため足関節背屈時に距骨が脛骨と腓骨の間に滑り込む動きが制限され、距骨のインピンジメントが起こり、背屈制限が起こります。

原因③
後脛骨筋の緊張も足関節の背屈制限を引き起こすことがあります。
これは後脛骨筋の底屈によるもとというよりも、脛腓関節の可動性を低下させることによるものと考えられます。
足関節の背屈時には、距骨の広い関節面(前側)が脛骨と腓骨の間に滑り込みますが、後脛骨筋の高緊張により腓骨の運動(挙上、外旋、外開)が制限されると、距骨の広い関節面を受け入れるスペースが作れないため、足関節の背屈は制限を受けやすくなります。

Heel Rockerと踵骨接地位置の関係

常歩行でのHeel Rockerでは、 踵骨の外側突起から接地し、その直後に踵骨内側突起の接地となります。
踵骨外側突起での接地時の床反力は、踵骨のわずかな回内方向への傾斜を起こします。この時、後距踵関節面に圧縮力が働き、それにより距骨と踵骨は関節面における骨性の安定性を得ることが可能となります。
内側距踵関節面では、踵骨上にある距骨のわずかな活動性を許します。この動きは、路面環境に合わせて距骨の下で踵骨の動きを可能にし、路面の傾斜具合によって脛骨の傾斜を防ぐ働きがあります。
以上のような、骨性の安定性が得られない場合、踵骨は靭帯や筋により安定性を確保しなければならず、不安定な踵接地となったり、過剰な筋活動で固定された足部での踵接地となり、様々な路面状況に合わせた歩行が難しくなります。

Heel Rockerと足のアーチ構造

Heel Rockerでの荷重の受け入れには、足のアーチの適切な構造を保持しておくことが重要になります。
これには後脛骨筋と長腓骨筋の同時収縮により、足のアーチの構造を安定させる必要があります。
後脛骨筋は、内側楔状骨と第1中足骨の基部に付着し、内側の安定化を図ります。長腓骨筋は立方骨に付着し、外側の安定性を図り、足底を走行しながら第1中足骨にも付着し、内外のユニットを連結し安定性を高めています。

Heel Rockerと前方への回転

Heel Rockerによる衝撃吸収メカニズムでは、活動するほとんどの筋が遠心性収縮を行っていると述べました。
しかし、遠心性収縮ばかりでは体を前方に回転することはできず、接地するたびに重心が一度停止し、また前方に回転していくようなスムーズさに欠けた効率の悪い動きとなってしまいます。
そのため前方への回転運動を作り出すために、踵の形状を利用して、前方への回転を行っていきます。
脳卒中片麻痺者では踵接地が困難ば場合が多いですが、それではHeel Rockerが十分に働かず重心が一度とまってしまい、前方に回転するために随意的に動いていく必要があります。これでは効率が悪く、疲れやすい歩行となってしまいます。

前脛骨筋の遠心性収縮による膝屈曲と着座動作との関係

着座動作での筋活動は、全て伸筋の遠心性収縮によるものです。
着座動作では、先に股関節を屈曲してしまうと、膝関節の屈曲が得られにくくなります。
そこで、膝関節屈曲を起こすために、前脛骨筋の遠心性収縮により脛骨を前に倒し、大腿四頭筋の遠心性収縮も加わりブレーキをかけながら膝を屈曲させていきます。
これは、立脚初期のHeel Rockerの衝撃吸収のメカニズムと同じような筋活動となります。そのため、着座動作が上手くいかない場合は、立脚初期が上手く行えていない可能性があります。
なお、着座動作において伸筋の遠心性収縮を促す場合には、上肢に持ったターゲットをリーチングにより机上に置き直すような形をとり、体幹と下腿が平行な位置関係をとりながら着座していくと促しやすくなります。

引用・参考文献