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リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

脳卒中片麻痺者の肩関節亜脱臼予防とリハビリテーションについて

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脳卒中片麻痺者では、しばしば肩関節亜脱臼が見られることがあります。亜脱臼と肩の痛みについては、亜脱臼がある方全てが痛みを伴うわけではありませんが、痛みとの関連性はあるため、その予防とリハビリテーションが重要になります。今回、方関節亜脱臼予防とリハビリテーションについて、アームスリングの使用も含め、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

 目次

脳卒中片麻痺者の肩関節亜脱臼予防とリハビリテーションについて

亜脱臼発生のメカニズム

脳卒中片麻痺者の肩関節亜脱臼は、発症後の筋緊張が低い時期あるいは筋が弛緩している時期に起こります。上肢機能障害が重症なほど亜脱臼の合併頻度は高くなることがわかっています。
発症後初期には棘上筋や三角筋などの肩関節周囲筋群が弛緩しており、上肢の重さに対し関節窩に上腕骨頭を求心位に保つことができなくなります。さらにその状態が放置されることで靭帯・関節包が伸張され、肩関節亜脱臼が生じると考えられています。
肩関節亜脱臼の発生率は幅広く、亜脱臼のある全ての片麻痺者に肩関節痛があるわけではありません。しかし、亜脱臼を放置していると、腱板筋が牽引され、critical zone(棘上筋腱が上腕骨大結節に付着する部分で、肩甲上動脈、肩甲下動脈の枝、上腕骨の回旋動脈が吻合する血管に富む部分)の虚血が起き、炎症が起こりやすくなります。そのため肩甲上腕関節炎や肩甲関節周囲炎が起こりやすくなります。
脳卒中片麻痺者の肩の痛みに対するリハビリテーションについては以下の記事を参照してください。

happyhealth.hatenablog.com

三角筋やアームスリングを用いた亜脱臼予防の考え方

亜脱臼の予防には、三角筋やアームスリングなどの使用により予防する方法が取られることがあります。その形状には様々なものがあり、メリット・デメリット含めて有効性を検討する必要があります。
上肢の重さを免荷し、上腕骨を関節窩に求心位に保てるアームスリングであれば有効性が高いといえます。また弛緩期では、移乗や歩行中に使用する価値は高いとの方向もあります。その一方で、アームスリングの長期的な使用により、上肢屈曲共同運動パターンを助長する可能性があるとの見解もあります。

アームスリングのタイプ

①肘屈曲タイプ
肘屈曲タイプでは、肩関節内転・内旋位、肘関節屈曲位で上肢を保持することができます。
上肢は体幹に密着し、支持性を高めているタイプで、三角筋やループ式のものが用いられることが多いです。着脱しやすく、値段も安価であることが特徴です。
デメリッットとしては、肩関節内転・内旋位での固定となり、筋肉の短縮や関節拘縮の可能性が高まります。また肘関節屈曲位での固定は、屈筋共同運動パターンを助長する可能性があり、肘関節拘縮の可能性もあります。
麻痺側上肢をバランス反応等に利用できないため、ボディイメージの低下につながることが考えられます。また上肢不使用により体性感覚フィードバックが得られないことも考えられます。
上肢不使用による循環不良や、浮腫の発生が予測されます。
これらを防ぐ意味でも、使用する期間や頻度の設定を適切に行う必要があります。

②肘伸展タイプ
肘伸展タイプでは、肩関節と肘関節の動きを制限せず、肩関節を機能的肢位に保つことを目的として使用されます。
上腕の重さを上腕部のカフで緊縛して引き上げることで肩関節周囲筋の代償機能を持つタイプでは、緊縛の程度により末梢の血流障害を引き起こす可能性もあり注意が必要です。
腋窩部にロールやパッドを挿入し、亜脱臼の整復を試みるタイプでは、腋窩部の圧迫による血流障害と上腕骨頭を外側亜脱臼方向へ押す可能性もあり、適合の評価が必要になります。そのため腋窩のパッドを本人に適合するように作ることで血流障害を防ぐことが可能です。
複雑な構造を持つタイプでは、独力での着脱が困難な場合もあります。
肘伸展タイプでは、歩行時の上肢の振りに関連して、骨盤の回旋運動を妨げにくいとの報告があります。一方、三角巾では骨盤の回旋を妨げてしまうため、歩きにくさを感じることがあります。

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アームスリングの種類とタイプ

図は実用性があると考えられるアームスリングを示しています。

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出典:脳卒中作業療法

オモニューレクサは前腕を緊縛して機能的肢位を保持するタイプですが、血流障害が生じにくい特徴があります。しかし、独力での着脱には課題があります。
肩サドル付肘伸展アームスリングでは、サドルを腋窩に挿入し、体幹の外から肩甲骨下方回旋を支え、亜脱臼整復を試み、かつ独力で着脱できるように改良が加えられてるものです。
鎖骨骨折などで使用されるクラビクルバンドは、両肩関節を後方に固定することに加え、腋窩の軟部組織に圧が加わり、二次的に上腕骨を関節窩に押し上げ求心位を保持する効果があるとの報告があります。

片麻痺による非麻痺側凸の機能的側弯症から、肩関節外転位となり亜脱臼を起こす場合や、体幹の前傾による上腕骨頭の前方への亜脱臼に対し、肩甲上腕関節と脊柱のアライメントを整える姿勢の改善という目的でも、市販のクラビクルバンドの使用は簡便であると考える。

脳卒中作業療法 P685

アームスリングの適応

上肢の回復段階に応じたアームスリングの目安として、Br-stageⅠでは亜脱臼の有無に関わらず、弛緩期には使用することが推奨されます。
Br-stageⅡ・Ⅲでは亜脱臼があったり、麻痺側の管理が不十分な場合使用が推奨され、アームスリングを外す目安としては、連合反応により亜脱臼が整復される等、肩関節周囲筋の筋緊張が十分である場合や、上肢屈筋群の筋緊張が亢進し、関節拘縮が予測される場合があります。
Br-stageⅣ〜Ⅵでは、痛みがあったり、弛緩性麻痺の持続で亜脱臼の増悪が予測される場合、麻痺側の管理が不十分な場合に使用が推奨され、アームスリングを外す目安としては、上記の兆候がなければ基本的に使用はしません。
麻痺側の管理については、脳卒中発症後の認知機能低下や、高次脳機能障害や感覚障害により麻痺側上肢の良肢位が保てない場合があります。
肩の痛みは患者の意欲に関与し、痛みがある方にとっては、アームスリングが安心感をもたらすこともあります。
アームスリング単体での亜脱臼の改善は難しく、予防・現状維持としての使用を考えることになります。上肢機能の状態などを考慮し、適切なスリングの選択が必要になります。

三角巾の正しい付け方

 亜脱臼の予防として三角巾がしばしば使用されますが、その正しい使用方法を知っておく事は、患者に負担をかけない上でも非常に重要と言えます。
①三角巾の二等辺三角形の頂点を丸く結びます。
②固定する上肢の肘を曲げ、手のひらを上向きにした状態で、丸く結んだ部分に肘をおさめるように腕の下に三角巾を通します。
③固定側の上肢の肩を覆うようにし、三角巾の一端を体の背面に回していきます。
④手のひら側の一端を背面に回し、背中の真ん中あたりで両端を結びます。
*前から見たときのチェックポイント肩の高さが左右同じであるか、肘が十分曲がっているか(下垂していると下方への牽引が働く)、手のひらが上に向いているかの3点に注意します。
*横から見たときのチェックポイントは、肩の位置に対して肘が後ろ側に引けていないかに注意します。

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出典:よくわかる首・肩関節の動きとしくみ

亜脱臼のリハビリテーション

亜脱臼のリハビリテーションにおいて、脳卒中ガイドライン2009では、機能的電気刺激がグレードBとして推奨されてます。
関節窩に上腕骨頭を求心位に保つことを目的として、電極を棘上筋、三角筋後部線維に貼り付け、1日に約2〜6時間の治療を行います。これにより肩関節亜脱臼改善が示されています。
また、肩屈曲や外転における上腕骨頭のコントロールでは、棘上筋や三角筋の強化が必要であり、高電圧パルス電流を1日15分、自動運動と同期するように電気刺激療法もあります。

家庭でできる、低周波治療器を用いた亜脱臼のリハビリテーション

低周波治療器を用いて、棘上筋、三角筋後部線維に電極を貼りつけ筋収縮を促していきます。
棘上筋、三角筋後部線維への貼りつけ位置は、図を参照してください。

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棘上筋は肩甲棘の上にあります。三角筋後部線維は肩峰の後方部分にかけて走行しています。
モードは「おす」で強度は8程度で行います。
なお、家庭用低周波治療器を用いた亜脱臼に対する電気刺激に関してはエビデンスはありませんが、筋収縮を促す点で、使用する価値はあると感じています。
低周波治療器の使用上の注意点については以下の記事を参照してください。

happyhealth.hatenablog.com

棘上筋の選択的収縮

棘上筋の選択的収縮の方法と、その根拠を示していきます。
棘上筋のみの収縮を行うには、肩甲骨を下制しながら、肩関節を外転させます。
肩関節を外転する際には、僧帽筋上部線維は肩甲骨の挙上に働きます。そこで、僧帽筋上部線維の働きを抑えるために肩甲骨を下制しながら肩関節外転を行う事で棘上筋が選択的に収縮することが可能になります。

 引用・参考文献