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リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

脳卒中片麻痺の肩の痛みとリハビリテーションの実際

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脳卒中後の肩の痛みがあると、ADLや様々な動作において困難さが生じる可能性があります。脳卒中片麻痺者の肩の痛みの発生のメカニズムははっきりとした結論が出ていません。今回、文献を参考にしながら、肩の痛みの原因として考えられる要因と、その軽減に向けての方法をまとめていきたいと思います。

 目次

脳卒中片麻痺の肩の痛みとリハビリテーションの実際

文献

亜脱臼と肩関節痛

脳卒中片麻痺者の肩の痛みの原因としては、癒着性肩関節包炎、肩峰下滑液包炎、腱板損傷からの肩峰下インピンジメント、痙性からの筋緊張の異常など、様々なものが言われていますが、はっきりした原因はわかっていません。
亜脱臼と肩関節痛の関係では、関連性が見出せなく、亜脱臼以外に原因があるとの報告もあります。また運動麻痺の程度と亜脱臼の程度は相関するが、亜脱臼と肩関節痛の関係は認めないとの報告もあります。
しかし、亜脱臼を放置すれば肩甲上腕関節包炎や、肩関節周囲炎を招く可能性もあります。

 

肩甲上腕関節胞炎

運動麻痺による寡動(動きが少ない)や不動により起こる癒着性関節包炎で、関節周囲炎を伴うことが多くあります。癒着性変化と肩関節痛には強い相関があると言われています。
癒着性変化では可動域制限は全域に及び、特に肩外転と外旋に強くでて、痛みの程度、痛みの時間帯などは様々な症候を呈します。

肩甲関節周囲炎

脳卒中片麻痺の場合、粘液包炎、腱炎、腱鞘炎、腱板損傷などの成因別には考えずに、大きなくくりでとらえるのが臨床的といえます。
回旋筋腱板の主な構成要素は棘上筋ですが、上腕骨大結節に付着する部分では動脈の血管に富む危険区域(critical zone)があります。この部位では緊張と負荷が最もかかる部位で、肩峰と上腕骨頭に挟まれることから圧迫を受けやすい特徴があります。また、炎症や変性、石灰沈着、断裂などを起こしやすい場所で、片麻痺者ではこのような所見が多く見られるとの報告があります。
上肢の支持性が保たれている場合は危険区域の循環状態は良いですが、支持性が失われると腱板の牽引により循環状態が不良となります。すると虚血状態となり炎症が起こりやすくなります。

脳卒中片麻痺の肩関節痛の特徴

脳卒中片麻痺の肩関節痛の特徴について、疼痛期間が一定しない、自動・他動運動時痛が主で、安静時・夜間時痛が少ないということがあげられています。
炎症性の疼痛では瘢痕形成により疼痛が軽減し、凍結肩に移っていきますが、脳卒中片麻痺の肩関節痛では疼痛期間が数年続く場合があったりと、治療経過が異なります。
炎症性疾患では夜間時痛が特徴的ですが、脳卒中片麻痺による肩関節痛では夜間痛の頻度は少ないことからも、炎症性の痛みとは考えづらいと言えます。

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疼痛の原因

肩関節痛の原因として、肩峰下インピンジメントが原因であるとの報告があります。
運動麻痺により亜脱臼が生じるとすれば、肩峰骨頭間距離は大きくなり、肩峰下インピンジメントは生じないと考えることができます。
疼痛を有する例では肩甲上腕関節の可動性が低下していますが、非疼痛例では肩甲上腕関節の可動性は増大しているとの報告があり、これは非疼痛例では麻痺により肩甲骨の動きが阻害され、上腕骨の動きが先行したためだと考えられています。
疼痛例では肩甲上腕関節の可動性が低下し、肩甲上腕リズムが崩れていることにより起っていますが、これは痙性による異常筋緊張によるものだとの考え方もあります。
肩甲骨の下制・後退、上腕骨内旋方向の痙性が疼痛の原因となりうると考えられています。
また上肢挙上時の肩関節の三次元動作解析によると、疼痛例では上腕骨外旋と肩甲骨上方回旋の不十分さ(肩甲上腕リズムの破綻)との関連性が報告されています。
他にも、他動的な肩関節外転時には、肩に痛みのあるすべての肩関節亜脱臼例において、肩外転に伴い上腕骨頭が上方にすべったことを報告し、上腕骨頭を関節窩に安定化させることができず、烏口肩峰弓に大結節や棘上筋腱が当たり、肩峰下滑液包炎が生じたとの報告もあります。

リハビリテーションの基本方針

肩の痛みの予防と早期発見が重要になります。
そのため、麻痺側上肢のポジショニング(昼、夜間)や基本動作(起き上がり、移乗時など)において肩に負担をかける介助になっていないか等を確認していく必要があります。
そのため他職種との連携が重要になり、リハ医との連携から痛みの軽減に取り組む必要があります。

脳卒中ガイドラインと肩関節痛

脳卒中ガイドライン(2009)によると、訓練前に非ステロイド性抗炎症薬の内服を行うことがグレードBで推奨されています。
ステロイド関節内注射は、グレードC2で低いですが、ローテーターカフの損傷がある片麻痺患者へは長期的に痛みの軽減や自動運動での関節可動域の改善があったとの報告があります。
関節可動域訓練はグレードBで推奨されており、早期からの実施により肩の疼痛、拘縮予防が期待できます。その際には、愛護的に訓練を行う必要があります。

リハビリテーションの実際

関節可動域(ROM)訓練では、訓練前に肩関節周囲筋の筋緊張緩和を目的にホットパック、超音波、マイクロウェーブなど)を行うことが望ましいとされています。
関節可動域訓練では、痛みを起こさないように愛護的に行い、痛みの怒らない範囲での可動域にとどめることが必要です。
上腕骨頭は関節窩から逸脱しないよう、骨頭を保持しながら行います。
肩の挙上(屈曲、外転)ではその角度に必要な外旋角度になるように注意します。

肩関節痛を有する片麻痺者では肩関節構成筋群、特に内旋筋群に痙縮があるとの報告があります。そのため屈曲、外転時に必要な肩関節外旋や上腕骨頭の下方へのすべり運動が不十分となり、インピンジメントや腱板損傷を引き起こす可能性があります。
肩関節外旋の可動域制限が肩の痛みと最も相関が強いとの報告もあり、肩関節内旋筋の大胸筋や肩甲下筋へのA型ボツリヌス毒素注射やフェノール注射の有効性も示されています。
痙縮の減弱には、振動刺激を用いた痙縮抑制法の効果を期待することもできます。
バイブレーターを用いて、痙縮筋を伸張しながら肩関節内旋筋を刺激していきます。
刺激し始めには緊張性振動反射による筋収縮が起こりますが、5分程度刺激すると筋収縮の消失と同時に痙縮が軽減されます。
この際の筋の伸張は愛護的に行う必要があります。

肩関節内旋筋群の短縮に対するストレッチ

肩関節内旋筋群の短縮が見られる場合、上腕骨と関節窩における関節運動を妨げ肩関節の可動域制限を引き起こすことがあります。また、そのことが関節拘縮につながることもあり、短縮筋のストレッチは、肩の痛みを予防する上でも重要な役割があります。
以下に紹介するストレッチは可動域制限があっても、対応する筋に指でフックをかけるようにストレッチを行うので、短縮筋の伸長が可能になります。自主練習用となっていますが、臥位でセラピストが行うことができます。

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肩関節内旋筋群の最大伸張位置とバイブレーターの当て方

肩関節内旋筋には、肩甲下筋、大胸筋、大円筋があります。
それぞれの筋には最大伸張位があるため、その肢位に上肢を持っていくことが必要となります。
①肩甲下筋
上部繊維:肩軽度伸展、内転、外旋により上部繊維が最大伸張位となります。
下部繊維:肩外転、外旋により下部繊維が最大伸張位となります。

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出典:肩関節拘縮の評価と運動療法

②大胸筋
鎖骨部繊維:肩軽度外転から伸展、外旋により鎖骨部繊維が最大伸張位伸位となります。
胸肋部繊維:肩外転位から水平外転、外旋により胸肋部繊維が最大伸張位となります。

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出典:肩関節拘縮の評価と運動療法

③大円筋
肩屈曲、外旋により大円筋が最大伸張位となります。

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出典:肩関節拘縮の評価と運動療法

バイブレーターは、軽い圧迫を加えるような力で筋に押し当てるようにします。
その他振動刺激抑制法の用い方として、強制把握や手指屈筋の痙縮軽減に用いられます。
方法は、患者の手関節から手指にかけてできるだけ伸展した状態にし、手掌面にバイブレーターを5分程度当てます。この時手指屈筋の痙縮が軽減し、Fー波でみた脊髄運動ニューロンの興奮水準も低下することがわかっています。

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