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自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

注意障害の理解とリハビリテーションに向けての評価

リハビリ 高次脳機能障害

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注意機能には様々な役割があり、それぞれが複雑な制御によって機能し合い、日常生活動作の遂行を可能にしています。今回、注意障害の理解とリハビリテーションに向けての評価について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

目次

注意障害の理解とリハビリテーションに向けての評価

神経心理ピラミッドと注意障害

神経ピラミッドとは、前頭葉機能を基本とした高次脳機能を、土台(底辺)から順に①神経疲労②抑制と発動性③注意力と集中力④情報処理⑤記憶⑥論理的思考力と遂行機能⑦自己の気づきという階層的に分けており、より上の階層が働くためには、その下の階層がしっかり働いている必要があるということを示しています。
これに対応する高次脳機能障害としては②無気力・脱抑制③注意・集中力の低下④情報の処理が遅い、正確に把握できない、脈絡なし、断片的⑤記憶低下⑥遂行機能低下⑦病識欠如などが挙げられます。

・神経疲労
無気力症では発動性の欠如、発想の欠如、無表情、無感動などがあります。
抑制困難症では衝動的、感情の調整が困難、ストレス耐性の低下、イライラ感、激怒、気性爆発、多動症などがあります。警戒態勢ではある刺激に対し反応があるかを示し、神経系を賦活していくためには、この警戒態勢をまず上げていくことが必要になります。
覚醒レベルの評価では精神疾患うつ病など)薬剤の影響も考慮する必要があります。

・注意力と集中力
選択的注意や配分性注意と、その注意を維持するための集中力の低下などがあります。

・情報処理
情報のスピードに対応しながら正確に受信し、相手に伝わるように発信する事に関わります。

・記憶
エピソードや予定を覚えていたりすることに関係します。

・論理的思考と遂行機能
言われた事や本の内容などをまとめたり、同類に分類するための「まとめ力」、様々な発想を思いついたり臨機応変に対応するための多様な発想力に関係があります。
遂行機能では、日常生活上のゴール設定、オーガナイズ(分類整理)、優先順位をつける、計画の立案、計画の実行、自己モニター(検証)、問題解決)に関係します。

・自己の気づき
自己の症状を知り、認識して、それぞれの症状に対する戦略を自ら使用する事で、生活を豊かにしていくために必要な事を理解する能力に関係します。

上の階層の、より高次なレベルでは自覚が生じやすいですが、より下の階層の、基礎的なレベルでは自覚が生じにくいです。

注意の分類と機能

方向性注意と般性注意に分けられます。方向性注意は空間に対して脳が有する注意の偏位的性質を指し、この障害により半側空間無視が生じます。
般性注意では様々な分類があります。
Sohlbelgらによると
持続性注意:持続して、あるいは繰り返して行われる活動の間、一定の反応行動を持続させる能力

選択性注意:複数の刺激に対して、反応の促進や抑制を要求されるような認知機能を持続させる能力

転換性注意:異なった認知課題を交互に行う柔軟性を維持させる能力

分配性注意:いくつかの課題に同時に対処する能力

というように機能分類されています。
加藤によると、
注意の強度
①アラートネス・覚度
外界ないしは内的な些細な感覚信号に注意を向けることができ、無関係刺激を抑制し、適切な警戒態勢を維持できる能力
②持続性注意
ある一定の時間経過の中において、覚度を維持する能力
注意の選択性
①選択性注意
多くの刺激の中から、ただ一つの刺激に反応する能力
②分配性注意
2つ以上の刺激に交互ないし同時に注意を向ける能力
注意の制御
注意を向けるべき刺激の種類を柔軟かつ効率的に変換する、自らの注意の容量を踏まえて適切な注意の分配を行う、また課題の遂行において選択性注意を戦略的に使用する能力
というように機能分類されています。

脳卒中と注意障害

脳卒中後の約7〜8割に注意に関する機能低下があるといわれており、軽症例を見逃さないために、注意障害に対する知識と普段から注意障害がないかを疑う姿勢が必要になります。
注意障害の症状としては、「物事に注意を集中できない」、「落ち着きのなさ」、「課題を継続するのに促しが必要」、「すぐに他のことに注意がそれる」などがあり、日常生活において作業遂行の困難さにつながることがあります。
注意障害のどの要素が障害されるかにより症状は異なりますが、「集中力の低下」、「情報処理の低下」、「記憶力の低下」、「易疲労性」、「いらいらしやすい」、「頭痛やめまい」などの症状は共通してみられやすいです。

注意障害の観察ポイント

対象者が何かの作業遂行をする際、材料や道具を整然と配列しなおすだけで作業遂行がスムーズになる場合、選択性注意障害の可能性が高くなります。
作業を遂行しながら人と話すことができない、話し始めると作業が中断するという場合、分配性注意障害の可能性が高くなります。
作業中、相手に話しかけられても気づかない、調理の際やかんの湯が沸騰していることに気づかないような場合、転換性注意障害の可能性が高くなります。

注意障害のスクリーニング評価

先ほども述べましたが、脳卒中患者の約7〜8割に何らかの注意障害を有していることを考えると、脳卒中患者全例においてできるだけ早期にスクリーニング検査を行うことが重要であるといえます。
臨床でよく用いられている検査は、MMSE(Mini-Mental State Examination)があります。

標準注意検査法の各検査項目と注意機能の関係

標準注意検査法(CAT)は、注意機能全般を評価することが可能で、7つの下位項目があり、年代ごとの標準値があります。
ADTは難聴や失語症に配慮する必要があり、VCTは視野や視力、眼球運動障害、半側空間無視がある場合、検査できない可能性もあります。

検査項目

目的

Span(記憶範囲)

①Digit Span:数唱
②Tapping Span:タッピングスパン

単純な注意の範囲や強度を検討する検査、アラートネス、覚度に関する能力、短期記憶

Cancellation and Detection Test(抹消・検出課題)
①Visual cancelation tasks:視覚性検出課題
②Auditory detection test:聴覚性検出課題

聴覚、視覚を用いた選択性注意

SDMT(Symbol Digit Modalities Test)

PASAT(Paced Auditory Serial Addition Task)

MUT(Memory Updating Task:記憶更新課題)

上中下検査

注意の分配能力や変換能力、注意による認知機能の制御能力、ワーキングメモリ

上中下検査では葛藤条件の監視機能

CPT(Continuous Performance Test)

持続性注意

持続性注意検査

・CPT検査

・抹消試験
指定された文字や記号を抹消していきます。1つの抹消よりも、複数の抹消の方が困難となります。

選択性注意検査

・抹消試験

・Stroop test
文字の意味と文字の色という同時に目にする2つの情報が干渉し合います。

・Trail Making Test(A・B)

happyhealth.hatenablog.com

・上中下テスト

・PASAT

・聴覚性検出検査

転動性注意検査

・SDMT(Symbol Digit Modalities Test)

・Memory Updating Test(記憶更新検査)

配分性(容量)注意検査

・シリアル7(100から0までの連続減算)

 Pacing障害とその評価

様々な動作場面において、性急な行動がみられたり、ゆっくりできない患者もいるかと思います。食事場面でスプーンでおかずを口いっぱいになるまで運ぶようなこともしばしばみられ、現状に関係なく動作してしまうことが特徴的です。
このような現象は、Pacing障害により起こっていると考えられます。
Pacing障害は、右半球に起因し、特異的な注意行動の障害になります。
頭頂葉損傷患者では、運動を企画するシステムと、実運動を照合することが難しくなり、運動行為が報告されなくなります。そのため、予測と結果が照合できなくなり、Pacing障害が現れます。
その評価には一辺200㎜の正方形の線の上を、2分間でできるだけ遅くなぞってもらいます。
結果の解釈は、右手では359㎜左手369㎜未満を正常とされています。
食事場面でのPacing障害には、「スプーン何杯分で口の中がいっぱいになるか?」という問いに対し、予測した答えと実際の動作による照合をさせ、モニタリング機能を高めていきます。ただし、かなりの反復により、モニタリング機能を高めていかなければなりません。

 参考文献