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高次脳機能障害の評価*Rey複雑図形検査の実施と結果の解釈に向けて

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Rey複雑図形検査(Rey-Osterrieth Complex Figure Test(ROCFT))は、脳損傷患者の視空間知覚・構成機能と非言語性視覚記憶を測定するために、スイスのRey(1941)によって開発された検査です。標準化検査として整備したのはベルギーのOsterriethになります。今回、Rey複雑図形検査の特徴と検査方法について、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

Rey複雑図形検査の実施と結果の解釈に向けて

特徴

Rey複雑図形検査は必要物品が少なく、全所要時間も5分〜10分と短く(再生の条件設定により時間が長くなることあり)実施できます。
図形は上下左右とも対照的ではない幾何学的図形で、点数化してデータの比較が可能です。
非言語性の視覚性記憶も評価できるため、失語症の方にも実施可能です。また被験者にとって教示する内容の理解が容易で導入しやすくなっています。
記憶面の評価以外では、模写における半側空間無視、構成障害、注意障害、視覚性認知、視空間構成なども評価することができます。
注意障害と記憶障害の関係やその評価方法については以下の記事を参照してください。

happyhealth.hatenablog.com

方法

*模写終了時に、後でまた書いてもらうことには触れないようにします。
*模写と再生の間は、言語性課題や雑談などの干渉を入れます(他の模写や描画の課題は挟まない)。
方法1
①Rey複雑図形の模写(時間指定はなし。終わったら声をかけてもらう)
②3〜30分後、Reyの図形を隠し、図形をもう一度書いてもらう。

方法2
①Rey複雑図形の模写(時間指定はなし。終わったら声をかけてもらう)
②Reyの図形を隠し、図形をもう一度書いてもらう(即時再生)
③30分後、Reyの図形を隠し、図形をもう一度書いてもらう(遅延再生)

方法1が一般的な実施方法で時間を要さず、3分後再生で前向性健忘の有無を評価することが可能です。
一方、方法2は即時再生と遅延再生の差を比較することができ、エピソード記憶障害患者は、遅延再生で著名な点数の低下が認められます。

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採点方法と解釈

模写課題と再生課題の両方で、18の採点部位について、
①線の正確さ
②全体図に対する相対的配置
の2点満点で評価するTailorの36点法が一般的です。

模写課題は視覚構成能力の指標となります。方法2で行う即時再生の点数では、視覚性短期記憶の容量を測る指標となります。健常者でも即時再生の点数は模写課題での点数の約半分に低下します。しかし、重要なことは健常者では即時再生と遅延再生を比較するとほとんど点数の低下がみられません。

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模写(点)

即時再生(点)

遅延(点)

左上の十字(大きな四角の外)

 

 

 

大きな四角

 

 

 

対角線の十字

 

 

 

2の水平二等分線

 

 

 

2の垂直二等分線

 

 

 

2の左側に入っている小さな四角

 

 

 

6の上の小さな区画

 

 

 

2の内側の左上にある4本の平行線

 

 

 

2の右上の三角形

 

 

 

10

9の下の短い垂直線

 

 

 

11

2にある三点のついた円

 

 

 

12

2の右下にある3と交わる5本線

 

 

 

13

2の右にある三角形

 

 

 

14

13にくっついているダイヤモンド

 

 

 

15

13の三角形の中にある2の右端に平行な垂直線

 

 

 

16

4の右に続く、13の中の水平線

 

 

 

17

中央下の十字

 

 

 

18

左下で2に接する四角形

 

 

 

 

合計36点満点

 

 

 

判定基準:
①形が正しい
      位置も正しい:2点、位置は不正確:1点
②歪んだり不完全だが形がわかる
      位置が正しい:1点 位置も不正確0.5点
③欠けている、または判別不能:0点

Rey複雑図形検査の正常値
健常人:30名:平均年齢68.1歳(標準偏差6.5、年齢範囲55〜78)

 

平均

標準偏差

範囲

模写

35.7

(0.6)

34〜36

3分後再生

18.8

(5.7)

10〜31

中国で行われた年代別平均値と標準偏差を算出した研究では51〜61歳では9点以下,61〜70歳では6点以下,71〜80歳では0点以下をMCIの半定基準としています(教育歴8〜15年)。

この判定基準によるアルツハイマー認知症への移行率は, 1年あたりで18%であったとされる(Guo et al 2009) 

運動による脳の制御 P110

この検査では視覚性記憶だけでなく、視覚認知、視空間構成、運動機能(巧級性)も関係している評価であり、成績低下があった場合、どの要素による成績低下なのか、もしくはこれらの要素の相互作用によるものなのかなど様々なことが考えられ、解釈を複雑にしています。
臨床においても、知覚や視覚運動、巧級性などの要素や、課題への反応の性質について注意する必要があります。
この検査では複雑な言語的教示が必要でなく、被検者は課題内容の理解が容易となるため、言語性記憶検査と比較して教育歴や文化的背景の影響を受けにくいとされています。

Guo らは,ROCFを用いた基準によりMCIを判定したところ,物忘れ外来を受診した対象者のうち27%が該当したが,2年後の再調査ではそのうち55%が健常値を示したことを報告している(Guo et al., 2009) .WMS-RLM (11%)に比較すると,正常へと戻る割合は顕著に高く,ハイリスク判定のための評価指標としての欠点と考えられる.

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引用・参考文献