読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

熱傷や外傷を防ぐ!防御知覚の障害と患者指導

リハビリ 感覚

【スポンサーリンク】

痛覚や温度覚は防御知覚とも呼ばれており、普段の生活で熱傷などを受けないようにしてくれています。防御知覚の低下は熱傷や外傷を招く恐れがあるため、患者指導をしっかりと行うことが重要です。今回、防御知覚の仕組みとその障害、患者指導に関して、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

 目次

熱傷や外傷を防ぐ!防御知覚の障害と患者指導

防御知覚と日常生活

防御知覚である痛覚や温度覚が障害されると、手などに熱傷、擦過傷、外傷を受けたり、創傷の回復が遅れてしまうことがよく観察されます。このような場合に、患者は自覚していないことが多いという特徴もあります。
組織が損傷を受けていても気づかずに放置していると感染を引き起こし炎症を起こすこともあります。このようなことが繰り返されることで、潰瘍の形成、骨壊死や骨吸収、深部組織の侵蝕から重度の変形や切断という場合もあります。
また治療のため安静肢位をとりたいが、痛覚が鈍磨しているために患部を動かしてしまい、回復が遅れてしまう場合もあります。
このような障害はほとんど意識されていない場合が多く、重度の熱傷や外傷を負うことで防御知覚の障害に気づくことが多いです。
弱い力や圧迫でも、それが長時間に渡ったり、繰り返されたりすると組織にダメージを与えてしまう可能性があることもあります。

 毛細血管の血液はきわめてわずかな圧迫で阻害され、それが持続すると阻血による圧迫創が発生する。また、摩擦によるストレスは、たとえ弱くても水疱や血腫を形成し、圧迫性潰瘍にまで発展することもある。

知覚をみる・いかす 手の知覚再教育 P18

知覚が正しく働いていれば、圧迫などによる痛みや不快感を感じ取り、肢位を変えたり、道具の持ち方を変えたり、使う部位を変えたりすることが可能ですが、防御知覚の障害があると困難になります。

痛みを感じるメカニズム

痛覚を起こす刺激を侵害刺激と呼び、痛覚に関連する感覚受容器を侵害受容器と呼びます。
侵害受容器は皮膚、皮下組織、筋肉、関節、骨膜、血管周囲に分布する自由神経終末だと言われています。
侵害受容器の繊維には複数の種類があります。Aδ繊維(グループⅢ)は有髄で直径1〜5μm、伝導速度4〜30m/s、C繊維(グループⅣ)は無髄で直径0.3〜1.5μm、伝導速度0.4〜2m/sなどがあります。
Aδ繊維は、強い圧迫などの機械的な侵害刺激に応じる繊維で、機械的侵害受容繊維と呼ばれています。C繊維は機械的のみならず化学的や熱による侵害刺激に応じ、多様式侵害受容繊維と呼ばれています。
機械的侵害受容繊維は強い機械的刺激に反応しますが、皮膚が傷ついている場合や長時間加温された場合は46℃以上の熱刺激にも反応することもあります。

温度を感じるメカニズム

温度覚は温覚と冷覚に分かれます。四肢体幹の温・冷受容器はAδ繊維とC繊維の自由神経終末によって伝えられます。
皮膚の上には温点(温覚のみを引き起こす)や冷点(冷覚のみを引き起こす)と呼ばれる直径1㎜以下の小領域があります。一般的には温点よりも冷点の方が分布密度が高く、そのため温度覚の障害では温覚が冷覚よりも先に、広範囲で障害されます。

熱傷、外傷を防ぐ、防御知覚の再教育

防御知覚の回復が期待できない場合や、知覚が回復してくるまでの期間では、熱傷や外傷を防ぎ、手を安全に使用するための防御知覚の再教育が必要です。
知覚障害があると把握動作において過剰に力を入れてしまうことがあり、擦過傷や皮下組織の損傷を招く恐れがあります。また温度覚の障害では患者の自覚がないことも多く、熱傷などのリスクが大きくなります。
患者指導では、患者の皮膚上に知覚検査の結果を書くことが有効です。どの領域にどのような知覚が障害されているか説明し、注意を促していきます。また残存している部位も示し、それを温度の確認部位として利用します。紙面でマップを作り意識してもらうことも有効となるかもしれません。
患者それぞれで生活様式が異なるため、仕事や日常生活活動、趣味などの作業分析を行い、どのような時に、どこで、どのような危険があるのかを共に確認していくことで、危険への回避方法や手段を検討、実践の中で指導していきます。
特に調理動作では手や前腕の尺側に熱傷のリスクが高いため、注意が必要です。
低温でも長時間接触していると低温熱傷が起こったり、軽い圧迫の長時間の持続でも組織損傷が起こる可能性があることを指導する必要があります。
長時間の道具の使用では、適宜休憩をとったり、道具の握り方を変えるなどの工夫が必要となります。
環境を設定することも重要で、道具の選定、自助具の使用、手の保護のための手袋や指サックなどを用いることも有効になります。
発赤、浮腫、熱感はストレスサインであるため、兆候が出現したら局所を安静させます。皮膚温度計を用いることで熱感の把握が可能になり、周囲より1℃以上高い場合は注意が必要で、周囲より6〜8℃以上高い場合は外傷や炎症を起こしていることを疑います。健康な人の指は2℃以上の温度差の識別が可能であるため、自己にて皮膚温を確認することも重要です。

自分でできる皮膚状態を保つ方法(ソーキング)

末梢神経損傷では、知覚障害と同時に自律神経障害も受けており、そのため発汗異常や皮膚の栄養障害、皮膚の乾燥が起こりやすくなります。
このような状態に対してソーキングにて自己管理をすることが大切です。
1日2回以上、約20分間手をぬるま湯の中に浸し、その後クリーム(植物性オイルやワセリン)などを塗ることで水分の蒸発を防ぐものです。これはタオルで軽く水分をとり行いますが、完全に手が乾いてしまってからでは効果がありません。
また、マッサージとして、親指と人差し指で、指の付け根から指先までつかみながらマッサージしていきます。これを全ての指で行っていきます。
手の甲に対しても、手首から指先へとこするようにマッサージしていきます。
夜間はビニール袋や手袋をはめて寝ることも乾燥を防ぐのに有効です。

引用・参考文献