自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

手の触覚障害に対するリハビリテーション

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手の知覚機能を評価し、リハビリテーションへと進めていく上では、「感覚鈍麻」などという結果だけからでは何もわかりません。知覚改善のためには、知覚が運動や動作にどのように影響しているかを把握することが大切です。今回、手の触覚障害に対するリハビリテーションについて、文献を参考にまとめていきたいと思います。

 目次

手の触覚障害に対するリハビリテーション

探索、識別機能の特徴

探索、識別機能に障害があると、襟元のボタンが閉められないなど、視覚的に確認できないところの対象物の位置や方向がわかりにくくなります。また対象物の材質、形状、大きさ、重量が識別しにくくなります。
探索、識別に関する知覚が障害されると、その都度視覚で確認しなければならず、作業スピードや正確性が低下してしまいます。
対象物の特徴を知覚するためには、対象物を実際に手にとってはじめて識別できます。
そのためには自分の手指を能動的に動かし、「なでる」「探る」「押す」といった探索的な動きが必要となります。
また容器の中から物体を取り出すには容器と物体の識別が必要で、いくつかの物体の中から目的物をとりだすような、複雑な識別を行ってこともあります。

探索、識別機能に対するリハビリテーションの考え方

物体の持つ性質を識別するためには、手で能動的に触れて物体の特徴を抽出することを再学習していくことが必要になります。
初めの一歩としては、まず日常使用する物品がもつ物理的な性質を取り出し、識別が容易なものから識別が困難なものへと順次識別させます。
物品の識別ではなく、物品のどのような性質を識別させようとしているのかという視点が大切になります。
手指の動かし方により識別しやすい性質も異なるため、どのような手指の動かし方をすればどの性質が識別できるのかという事を再学習してもらいます。
指を押し付ける強さや指を動かすスピードが適切に調節されたものでないと識別力は低下してしまいます。そのため、運動麻痺がある上肢、手指では識別に対する動作を獲得していく必要があります。
ざらざらやすべすべ(紙やすりなど)している性質の検出には、速順応型の感覚受容器が関与しているため、手指を物体の表面に対して水平方向に動かす事が必要になります。
柔らかさ、べとべとなどの性質の検出には、遅順応型の感覚受容器が関与しているため、物体の面に対して手指を垂直に押し付けたり離したりすることで圧縮性や反発性を識別します。
物体の形状や圧縮性は物体を把握し、圧縮することで識別することができます。
伸展性や重量は物体を引っ張ったり、手に持って垂直方向に動かすことで識別することができます。
物体の性質の識別が可能になったら、日常物品を使用しての識別を行っていきます。
まず、識別しているものが何かを答えさせます。それが可能になれば、より複雑な刺激の中(豆の入った容器など)でも物品が識別できるようにしていきます。
同時に複雑な識別が要求される課題としては、容器の中に類似の物品を入れておき、その中から特定の物品を取り出すといったものもあります。

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探索、識別機能に対するリハビリテーションの実際

閉眼で様々な性質を識別させていきます。手をどのように動かすことで識別したい知覚情報が作れるのかを再学習してもらうことが目的となります。
自ら能動的に指を受容器特性に応じるように動かすことによって、特定の受容器の感受性を選択的に高め、認知力を向上させることができると言われています。
柔軟性(しなやかな、硬い)、圧縮性(柔らかい、硬い、押しやすい、押しにくい)、伸展性(伸びやすい、伸びにくい)、緻密性(目のつまった、目の粗い)、摩擦性(ざらざらした、滑りやすい)、反発性(弾力のある、ぐにゃっとした)、平滑性(滑らかな、粗い)、冷温性(冷たい、温かい)、肉厚感(厚い、薄い)、重量感(思い、軽い)、形態(球、角のある、エッジのある)などの性質を識別していきます。

①材質の識別
静的触覚:
スポンジなどの弾力性、圧縮性の異なる物体(2組)に対して、上から手指を押し付けたり、握り込むことで垂直に力を加え同じものを特定させたり圧縮性、反発性、伸展性の程度を識別していきます。

動的触覚:
手触りの異なる材質を用意して指でこすり、平滑性、摩擦性の識別を行っていきます。
*指を強く押し付けるように識別する場合があるため、力が入りすぎないように指導していきます。
動的触覚では、指を動かす速度と垂直方向の力のコントロールを学んでいくことが重要です。

②形態の識別
患者の手指運動機能に合わせて物体の大きさを選択し、数種類の形態を2組ずつ用意します。形態を特定させたり、同じ形態の物品を選んでもらいます。

③日常物品の識別
物の性質や形態の差が大きい物品→同じ性質で形態が異なる物(全て金属で形態に違いがある)→同じ性質で形態の似ているものへと進めていきます。
次に複数の刺激を組み合わせた状況での物品の識別を行います。段階付けとしては、容器の中の物品を取り出す→容器に米、小豆などを入れ、その中に物品を複数個入れ取り出す→その中から指定された物品を取り出すなどと進めていきます。

注意点:
1日3〜4回、1回約15分程度で、集中できる環境で行います。
視覚を使わせず行います。
過剰な負荷は避けます。
強い筋収縮を起こさせないようにします。
スピードの速い探索を行わないようにします。
健側を使用し対象物を固定しないようにします。
*触覚の回復が困難な場合、固有感覚などの利用による探索・識別機能の獲得を目指します。

参考文献