自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

手のアーチの解剖・運動学的特徴と浮腫についてー手の実用性向上のためにー

【スポンサーリンク】

手のアーチは指の細かな運動をする上で非常に重要な要素になります。今回は、手のアーチの種類とその構成要素、アーチができるメカニズムなどと、アーチの乱れに繋がる浮腫について、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

 目次

手のアーチの解剖・運動学的特徴と浮腫について

横アーチ

手根骨遠位列が構成する近位横アーチ、中手骨骨頭部(MP関節レベル)が構成する遠位横アーチの2つがあります。
近位横アーチは手根骨間の関節のわずかな生理的動揺がありますが、基本的に動きがないと捉え(静的アーチ)、解剖学的アーチとなります。
遠位横アーチ(MP関節レベル)は、CMC関節(中手骨と手根骨で構成)の可動性によって、手の動きにより動的な変化をみせます。アーチの動的変化は、アーチのカーブの度合い(彎曲度)だけでなく、MP関節間(各中手骨頭間)の幅も変化させます。
外傷や末梢神経麻痺によって内在筋の機能低下や筋萎縮などが見られると、アーチの平坦化が起こり、また中手骨間の幅が狭くなります。時には深横中手骨間靭帯の短縮を引き起こすことがあります。これによりCMC関節の動きが少なくなり、手や指の機能、使用で大きな問題となることがあります。
遠位横アーチは解剖学的アーチで、動的アーチでもあります。

縦アーチ

縦アーチは解剖学的なものを指すものではありません。手の動きの中で変化する機能的アーチで、手根骨、中手骨、基節骨、中節骨、末節骨からなる動的なアーチでもあります。
縦アーチは手の使用の際、機能的にきれいな弧を描く必要があります。
末梢神経麻痺ではイントリンシックマイナス型の変形(骨間筋、虫様筋よりも相対的に指伸筋の緊張が高い:MP関節伸展、PIP・DIP関節屈曲位)となりますが(中枢神経麻痺でもイントリンシックマイナス型となりやすい)、場合によってはイントリンシックプラス型の変形(指伸筋よりも相対的に骨間筋、虫様筋の緊張が高い:MP関節屈曲、PIP・DIP関節伸展位)となることもあり、縦アーチが崩れる原因となります。

対立アーチ

対立アーチは解剖学的なものを指すものではありません。手の動きの中で変化する機能的アーチで、常に変化していきます。
対立アーチは、握りやつまみ動作において特に重要な役割を果たしています。
対立アーチが一時的に平坦化することにより、立ち上がる際の支持手としての役割を果たせる様に、目的動作に合わせて動的な変化がみられます。

手指屈曲時のアーチの形成

屈筋(浅指屈筋(FDS)、深指屈筋(FDP))が収縮することにより運動が始まる。いわゆる屈筋腱の張力が屈筋腱鞘に伝わり、その張力が腱鞘を介して掌側板に伝わる。掌側板に張力が伝達されれば、深横中手靭帯が緊張し、隣接するM-Pjtの位置関係を整えることにより中手骨頭横アーチが形成され屈曲が完成する。屈曲が作用している間、側方支持のため、側副靭帯は緊張し左右方向への制動効果をもたらしている。深屈曲可動域には虫様筋の収縮力が必要となる。

上肢運動器疾患の診かた・考え方 P245

【スポンサーリンク】
 

手指伸展時のアーチの形成

総指伸筋(ED)が収縮することにより運動が始まる。いわゆる伸筋の張力が中央索に伝わることにより手内筋の活動が得られ、伸展運動が惹起される。
伸展運動時は、伸筋の張力が指背腱膜から側副靭帯を介して掌側板に伝わることにより深横中手靭帯の緊張を惹起し、隣接するM-Pjtの位置関係を整えることにより中手骨頭横アーチが形成され、伸展運動が完成する。伸展運動時は、側副靭帯、背側関節包は緩んだ状態になるため、支持性としては期待できないが、虫様筋・骨間筋による動的支持作用により保護されている。

上肢運動器疾患の診かた・考え方 P246

浮腫発生のメカニズム

膠質浸透圧による毛細血管内での体液の移動

手のアーチの乱れにつながる浮腫の、発生メカニズムについて説明していきます。
毛細血管で内では、血液が内皮細胞の隙間と細胞膜を通して循環しています。
毛細血管では半透膜で、ほとんどの物質を透過させることができますが、比較的大きなタンパク質(アルブミンなど)は透過が困難です。このようなタンパク質を膠質といい、体内にとって重要な物質です。そのためこれらを血管内に残すために膠質浸透圧(細胞間液から血管にかかる圧)が常に25㎜Hgで存在しています。
毛細血管内での水や物質のやりとりは膠質浸透圧、毛細血管内の血圧(動脈、静脈)の関係により血液と間質液、細胞内液は常に一定の濃度に保たれています。

動脈の毛細血管では、動脈壁に約35㎜Hgの圧力(心臓のポンプ作用による)がかかっています。これは血管側の血漿の膠質浸透圧25㎜Hgより大きく、血漿中の水や電解質などが細胞側の間質液中にその差の10㎜Hg移動します。
静脈の毛細血管では、静脈壁に約15㎜hgの圧力(血液を流す役割のため心臓のポンプ作用はない)となっています。これは血管側の血漿の膠質浸透圧25㎜Hgより小さく、細胞側の間質液中の水や電解質を血管側の血漿内にその差の10㎜Hg引き込みます。
このように動脈、静脈で浸透圧10㎜Hg差を補っており、この状態では浮腫は発生することはありません。
炎症が起こると毛細血管透過性が上昇し、膠質浸透圧が低下します。そのため大量の液が組織間隙にたまり、浮腫が発生します。この炎症期にはリハビリテーションでの対応はできません。

炎症期以降の浮腫:静脈還流の低下

静脈は皮下組織のすぐ下の走行しています。手術などで皮膚が損傷を受けると、皮膚が硬化することがありますが、これによりその近くを走行する静脈も影響を受けることになります。
静脈は動脈と比較し血管が伸びにくいため、硬化により循環不良が起こると、還流量が低下してしまいます。

炎症期以降の浮腫:動脈圧の低下

動脈は深部に存在し、深部組織に血液を供給しています。深部組織には単関節筋や知覚受容器が多く存在するのですが、骨折などで深部組織が損傷を受けると、近くを走行する細かい動脈も圧迫や牽引を受けることになります。過度な伸張訓練を行うと疼痛を引き起こし、それが交感神経反射を起こすことにつながります。それが動脈を収縮させ、動脈圧が低下することになります。

外傷や骨折による浮腫へリハビリテーションの方針

上記説明から、浮腫への治療方針がわかります。
・皮膚を含めた皮下組織の柔軟性を改善し、静脈還流量を増大する・深部組織(単関節筋など)の柔軟性を改善し、疼痛を伴う血管の収縮を抑制させる
ことが挙げられます。
取り掛かりやすいものは表層へのアプローチのため、まずは静脈還流の増大を図っていきます。
また痛みを伴う皮膚への無理な伸張を避けながら、関節可動域訓練を行います。
良肢位を保持することも重要になります。
深部組織では筋のポンプ作用を利用し筋の柔軟性を確保しながら、徐々に筋の伸張を行っていくことが必要になります。
手のアーチの確保という点で考えると、手内筋のリラクゼーションや収縮運動を行います。また手指に紐(アクリル毛糸)を巻きつけ、外部より圧迫を加える方法もあります。

引用・参考文献