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自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

手・手指変形の解剖・運動学的解釈ー関節リウマチを中心にー

関節可動域 リハビリ

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手や手指の変形が解剖・運動学的にどのような機序で起こっているかを理解することは、リハビリテーションを行う上で欠かせないことです。今回、関節リウマチを中心として、手・手指の変形の解剖・運動学的解釈を、文献を参考にしながらまとめていきたいと思います。

 目次

手・手指変形の解剖・運動学的解釈ー関節リウマチを中心にー

上肢の機能的肢位

機能的肢位とは、手・指の各関節が正常な関節可動域の制限を受けてる場合に、最も機能しやすい肢位の事を言います。
母指対立位、MP、PIP、DIP関節屈曲20度、手関節伸展30度、前腕90度回内位、肘関節屈曲90度、肩関節外転50度、屈曲20度、内旋15度です。
手・手指の変形に対する装具療法では、機能的肢位を維持できるようにする事が基本です。
しかし、患者の状態に合わせ、肢位を設定することも大切です。例えば、手指の変形が強く、ピンチ力が十分でない場合、手関節軽度背屈位よりも屈曲回内位の方が、手が使いやすくなる可能性もあります。

手関節の変形

手関節はその解剖学的な形態から、遠位橈骨端(関節面)から尺側かつ掌側への手根骨の動きが起こりやすいといえます。つまり、手根骨には掌側かつ尺側への生理的な偏位力が常に加わっています。

手関節における生理的偏位力は、手関節の靭帯や関節方包に病的弛みが加われば、手根骨の尺側かつ掌側への動き(むしろ転移)が助長され、結果的に手部は橈側に回旋し、中手骨骨頭は反対に橈側に引かれる。これは、手関節全体でみれば、やや伸展位に位置しながら橈屈(橈側屈曲:外転)が起こることを意味する。この現象は、手指の屈筋群によるMP関節での生理的尺側偏位(示指:内転、中指:尺側外転、環指・小指:外転)を助長させる結果となる。

手の関節の動き・運動の理解 P127

関節リウマチなどでは尺骨遠位端の背側脱臼(遠位橈尺関節亜脱臼)が見られます。これは、下橈尺関節を支持する三角靭帯の損傷により、関節運動のコントロールを失うために起こります。手関節での変形が助長され、日常生活での手関節使用により指伸筋腱を炒める原因にもなることがあります。また、指伸筋の疲労損傷により変形の出現や助長が見られます。機能的に手関節の伸展と回外の障害を引き起こします。

橈骨手根関節亜脱臼(掌側亜脱臼)も関節リウマチではよく見られます。手関節の滑膜炎により手関節を支持する靭帯が弱化することで起こります。遠位橈骨では掌側への傾きが約10度あり、靭帯での支持が弱まることで橈骨上の手根骨が掌側にずれてしまいます。これにより尺側手根伸筋腱が掌側に移動し、伸筋の機能が働かなくなってしまいます。

 MP関節の変形

MP関節の2つの生理的変形力について

 第一の生理的偏位力は側方への力であり、やや回外力が加わる。屈筋腱と伸筋腱はMP関節レベルで、その牽引方向が変えられるため、これらの部位で多少、尺側への力が加わり、なんらかの原因でこれらを支える滑車システム、靭帯、支持組織などが弛むと、この偏位力は助長され、アライメントが著しく崩れる。またこの状態が持続すると可動域は制限を受け、変形・拘縮を引き起こす。

第二の生理的偏位力は掌側への力である。つまみ動作などを行えば屈筋腱は滑車システムで支えられるが、このことは、この部分に負荷が加えられていることでもある。特に、何らかの原因でこの滑車システムに対して病理的変化が加わるならば、弛み、基節骨を含め遠位を掌側に引く力となる。

手の関節の動き・運動の理解 P128

と言われています。

関節リウマチでは尺側偏位(第Ⅱ〜Ⅳ指のMP関節における掌側および尺側に屈曲する変形)がよく見られます。
これは第Ⅱ〜Ⅳ指のMP関節の慢性的な滑膜炎が原因となって起こります。滑膜炎は関節包を伸張させ、MP関節を支持する靭帯に弛みを生じさせます。次に疼痛などにより、虫様筋と骨間筋の反射性スパズムが起こり、手内筋の筋長が最も短くなる肢位をとります。また、MP関節の背側をそうこうする総指伸筋腱は過度の緊張により尺側へ滑り落ちてしまいます。結果、総指伸筋は手指の伸展力を失い、尺側へ屈曲させるように働いてしまいます。
日常生活上、手を使用する動作では、手掌を下、もしくは内側に向けることが多く、重力によっても尺側へ向く事で総指伸筋の尺側への逸脱が助長されている事も考えられます。
このような状態で強い握りやつまみ動作を行う事は、MP関節の掌側への亜脱臼を起こす可能性もあるため注意が必要です。
関節リウマチにおいて日常生活での動作指導が重要になると言われているのは、このような理由からです。

 手指の変形①ボタン穴変形

PIP関節屈曲(屈曲拘縮あるいは伸展不可)、DIP関節過伸展の変形です。
主病変はPIP関節にあり、MP、PIP関節の両者に滑膜炎がおこると、手内筋の筋スパズムが生じ、さらにPIP関節の炎症で関節包が弛みます。そこで2つの指伸筋の側帯がPIP関節の両側にずれ落とされ、PIP関節での伸展可動域の減少、消失によって起こります。その一方DIP関節では伸展作用が残っており過伸展となります。
指伸筋の側帯がずれ落ち、PIP関節の運動軸よりも掌側に位置すると、指伸筋の作用がPIP関節において屈曲力へと変化することもあります。
また、中央索が付く中節骨の部分における損傷でも、伸展力の補助を失い、この変形が現れる場合もあります。
ボタン穴変形の改善のために可動域訓練(伸展運動)を行っても、かえってPIP関節の屈曲、DIP関節の伸展力となって、レティナキュラー靭帯短縮を引き起こし、変形を助長する事が多いとの事です。慢性化した変形には、レティナキュラー靭帯の伸張が必要で、PIP関節伸展位でのDIP関節屈曲方向へのストレッチを行います。
そのため装具療法として、3点固定によるPIP関節伸展、DIP関節屈曲位での固定が有効です(DIP関節は自由に屈曲できる方が良い)。

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出典:これでできる リウマチの作業療法

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出典:手の関節の動き・運動の理解

手指の変形②スワンネック変形

PIP関節過伸展、DIP関節屈曲の変形です。
一般的には、内在筋の緊張、浅指屈筋の筋力低下、腱損傷による屈曲力消失、PIP関節の掌側板の過度の伸張などにより、PIP関節過伸展が異常に起こり、DIP関節の屈曲傾向が強調されることで起こります。
マレットフィンガー(槌指)は、腱損傷、剥離骨折、骨折などにより、指伸筋の2つの側帯の損傷でDIP関節の伸展が不可となりますが、このとき指を伸ばそうとするほど、PIP関節での過伸展が助長されてしまいます。

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出典:手の関節の動き・運動の理解

パーキンソニズムなどでの内在筋の過緊張でもスワンネック様の変形が起こりますが、この場合はMP関節の屈曲も伴います。
関節リウマチでは、主病変はMP関節にありMP関節の髄膜炎である場合や、PIP関節の掌側板が破壊され、関節痛などにより内在金筋の緊張が高まり、浅指屈筋の筋力低下、筋張力低下、腱損傷によるPIP関節の屈曲力を失うとさらに変形が強まります。

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出典:これでできる リウマチの作業療法

 母指の変形

母指の変形には、CMC関節の損傷、関節炎などによる第一中手骨基部が長母指外転筋などにより橈側に引っ張られて起こるものや、靭帯損傷により外在・内在筋の筋力のアンバランスの崩れによりIP、MP関節の変形があります。
IP、MP関節の変形は別々に起こらず、それぞれが逆方向に変形するZ変形となります。
Z変形ではIP関節が屈曲位であればMP関節は伸展位となります。逆にIP関節が伸展位で、MP関節が屈曲位となるものを逆Z変形と言います。
母指のMP関節とIP関節が別々に変形する場合は屈伸方向ではなく、側方(橈側)への偏位となることが多いです。この原因としては、日常生活でつまみ動作を行うことが多いためです。
母指の変形はMP関節とIP関節をコントロールする外在筋、内在筋の均衡の崩れにより起こりますが、IP関節の変形が起こると、母指の対立が不十分となり、示指と母指指腹でのつまみが行えません。すると母指の尺側と示指の指腹でのつまみ動作となり、結果としてIP関節の橈側偏位につながってしまいます。

関節リウマチでは、IP関節過伸展、CM関節外転を伴うMP関節屈曲位の変形がよく見られ、主病変はMP関節の滑膜炎となります。
MP関節包の拡大により短母指伸筋の基節骨部の繊維が破壊され、母指内転筋、母指外転筋の腱は拡張し、長母指伸筋腱は尺側に向かい移行します。これにより長母指伸筋の母指伸展作用は失われ、IP関節の伸展作用のみが強まります。そのためMP関節は屈曲位となり、つまみ動作などの際母指は外転を必要とするため、CM関節は外転位となります。

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出典:これでできる リウマチの作業療法

引用・参考文献