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自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

脳卒中における上肢挙上機能(90度まで)の強化ー筋出力向上を目的にー

リハビリ 脳卒中

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脳卒中運動麻痺における上肢機能で、筋出力の向上を目的とした強化について、文献を参考にその方法をまとめていきたいと思います。
今回は、肩関節30度程度動かせる方を対象としています。

 目次

脳卒中運動麻痺における上肢挙上機能(90度まで)の強化ー筋出力向上を目的にー

0〜90度における上肢挙上と90度〜180度における挙上機能の違い

0〜90度における上肢挙上と、90〜180度における上肢挙上では、主に働く筋肉に違いがあります。
0〜90度では、主に肩甲上腕関節の屈曲や外転、伸展に関与する筋(三角筋)で動きとしては「持ち上げる」動作になります。
一方、90〜180度では、肩甲骨の上方回旋と体幹の動き(伸展・側屈・回旋)なども加わる「突き出す」動作となります。
これに加えて、特に90度以降の挙上では回旋筋腱板の働きも重要になってきます。
主に働く筋肉については以下の表を参照してください。

肩関節屈曲

肩甲骨周囲筋

肩甲上腕関節

90°まで

前鋸筋と僧帽筋下部繊維

棘上筋と三角筋

90°以降

僧帽筋中部・下部繊維

棘下筋と三角筋

 

肩関節外転

肩甲骨周囲筋

肩甲上腕関節

90°まで

僧帽筋中部繊維

棘上筋と棘下筋と三角筋

90°以降

僧帽筋下部繊維

棘上筋と棘下筋と三角筋

筋出力向上の考え方

麻痺側上肢の筋は、筋の出力量と筋力が低下しています。そのため、麻痺側上肢に対して挙上動作を求めた場合、病前と同量の出力のセットとなってしましい、挙上が困難となります。
筋の出力量の不足や、収縮に参加する筋繊維の数が不足、強縮に至らない筋繊維や強縮の持続時間が短いことなどから、上肢挙上機能がうまく発揮できていない状態にあります。
そこで、抵抗(間欠的に)を加えることで、筋出力の向上を図っていきます。
上肢挙上動作への抵抗に対して、より大きな力を発揮しようとすると出力の設定値と実際の出力が向上します。
関節の動きを出現させるためには出力を最初に集中させて、関節運動を加速させていくことも重要です。
そのためにも、抵抗を一気に短時間加えることで、筋収縮に参加する筋繊維数を増やして、筋収縮を高めていく必要があります。
このような間欠的抵抗を、可能な関節運動範囲の全ての角度で行い、筋収縮を行っていきます。

 その角度ごとの、筋収縮量の実行値と筋紡錘を介して脳にフィードバックされた感覚値が、その関節角度の動きを可能にする脳の出力値、すなわち必要設定値(必要設定値は、感覚と前の実行の差を今行った実行値に加えて、次の実行の目標として設定する値)として、短期記憶されると考えられます。

片麻痺 能力回復と自立達成の技術 現在の限界を超えて P122

また、

拡大した設定値は短期的に記憶されているので、ある時間の経過後には元に戻ります。この設定値を中期的な記憶にするには、一定以上の回数の繰り返しが必要となります。患者では運動範囲の設定は痛みの生じない範囲となっているので、少し痛いがしばらくするといたくなくなる範囲に自動介助で動かし、その角度でしばらく止めるようにします。すると設定値が少しずつ広がります。この広がった範囲を自動運動で繰り返すと、中期的な設定範囲の拡大につながると、筆者は経験上で理解しています。

片麻痺 能力回復と自立達成の技術 現在の限界を超えて P121

とあります。

上肢挙上機能強化方法の実際

①肩前方屈曲方向に抗する抵抗を加えます。
*肩関節を痛めないよう、肩関節の後方下より包むように支えます。
*抵抗は一気に短時間に加え、一定時間ごと(間欠的に)に行っていきます。
 1セット10回とし、数セット程度行います。

初めの目標としては、間欠的抵抗により関節運動開始時の出力が増し、力強く加速した関節運動が得られることです。
次の目標は、関節運動が持続的で維持されることです。
より強く動かすよう、短く力強い声かけを行い(「思い切り」、「もっと」など)、持続的な抵抗に変化させていきます。
次の段階では、声かけのみで目標とする関節角度での挙上を、適切で持続された出力により筋収縮を持続し、運動が遂行できるようにします。
1セットの間では、間欠的な抵抗の強さ、頻度、休憩時間を組み合わせながら、内容を考え実行していきます。
決まりきった答えはないため、どのような姿勢(座位、立位、背臥位、側臥位)をとって肩前方挙上を行うかによっても違いがあるかもしれません。
とにかく、患者の筋出力が向上する、有効だと思われる行い方を試しながら行うことが必要になります。

引用・参考文献