自分でできる体健やかブログ

リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

身体に対する無視についてー半側身体失認などを中心にー

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身体に対する無視は、麻痺している上肢(主に)が自分のものだという所属感がない症状のことを言います。これには半側身体失認、身体パラフレニアなどがあります。今回、身体に対する無視症候群について、文献を参考に知識の整理、リハビリテーションの考え方についてまとめていきたいと思います。

 目次

身体に対する無視についてー半側身体失認などを中心にー

半側身体失認

麻痺した四肢への問いかけに対して、麻痺肢を自分のものと認めることはありませんが、積極的に自ら他人の手であるとの訴えもありません。
診断方法として

1.検者は、患側の右側からアプローチする。まず、右上肢を持ち上げて、「これは何ですか?」と聞く。これに対して、患者は健常な右上肢を自分のものと正確に認知することが必要である。
2.次に、病巣と対側の左上肢を肘から持ち上げて、手と前腕を病巣と同側(右側)の半側空間に持ってくる。そして、再び「これは何ですか?」と聞く。その際、検者の手と前腕が患者の右半側空間に入らないように注意しなければならない。左上肢を自分のものと認知できない時、(言語性)身体失認と診断する。
3.左上肢の誤認として、妄想や作話がみられれば、それを記録する。

高次脳機能障害学 第2版 P179

がというようなものがあります。
行動観察では、一側の四肢が存在していないかのように振る舞う症状もあり、麻痺側の上肢をベッドや車椅子から垂らしていたり、放置していたりしても気にしないことが見てとれます。

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身体パラフレニア

麻痺がある上下肢(主に上肢、まれに下肢)に関して、それが自分のものではなく、他人のものだと訴えるような、妄想性の誤った認識がある症状のことを言います
訴えとしては「他人の手が体に乗っているから重い」、「この腕は夫の(娘、看護師、医師など)手だ」と言ったりします。また自分とは無関係であり、非実在の人物の手と言う訴えが聞かれることもあります。
半側身体失認は行動観察によりその症状の存在を疑い、患者への質問により診断するという過程があることに対して、身体パラフレニアは患者自らの訴えとして聞かれます。

麻痺した四肢の人格化

麻痺がある四肢に対して、独立した個体や、ペットやおもちゃのように見なして、名前やニックネームをつけて話しかけるような症状を言います。

片麻痺憎悪

麻痺のある上下肢に対して、嫌悪感を示す症状で、その四肢を毛布で隠したり、目を背けるような行動がみられることがあります。また、それが「憎たらしい」、「死んだ人の腕だ」などと言うこともあります。極端になると、健側の手で麻痺のある腕を叩いたりします。

身体に対する無視症候群の発現機序

主に半側身体失認と身体パラフレニアですが、必ず片麻痺の存在があります。また、他の無視症候群との関係でいうと、半側空間無視が合併していることがほぼ必ずみられます。
片麻痺に対する病態失認がほぼ同時に起こるという報告もありますが、病態失認のない半側身体失認や身体パラフレニアもあるようです。
必要条件では、位置感覚の障害の存在が挙げられますが、表在感覚や視野障害の関連性を乏しいと言われています。
位置感覚の障害や、半側空間無視がそれ単体で半側身体失認や身体パラフレニアを起こすことはありません。しかし、関節位置覚の障害があると自分の身体の所属感を阻害することが考えられ、半側空間無視が身体外の表象を障害し、自分の身体の部位と外界の物との区別をあいまいにすることも考えられます。また前頭葉の機能障害のため、自己と外界を区別する機能の障害や、作話が生じやすくなるなどにより半側身体失認や身体パラフレニアが生じる可能性があります。

病巣

前頭葉、側頭葉、頭頂葉を含む広い範囲の病巣で起こりやすいです。

身体失認は側頭・頭頂葉を含む他領域にわたる大病巣で起こるが、前頭葉内側の病巣が含まれることが重要と思われる。また、眼窩前頭葉の機能障害が加わると、身体失認のみから身体パラフレニアになるという。

高次脳機能障害学 第2版 P181

というように、前頭葉を重視する報告もあるようです。

自己身体に対する無視ーpersonal neglectー

指示により健側で自分の身体の麻痺側を指し示したり、触ったりすることが困難な症状を言います。主に右半球損傷の急性期で見られ、半側空間無視を合併していることがほとんどです。
Bisiachらの診断方法として
①患者に左上肢を体幹の横に置いて背臥位をとらせ、検者は患者の右手をはっきりと示して「この手で反対側の手を触ってください」と指示します。
この指示に対する採点として

スコア0

即座に標的(左手)に到達する

スコア1

躊躇と探索の後、到達する

スコア2

探索は中断され、標的(左手)に到達しない

スコア3

標的(左手)に向かう運動が生じない

というようなものがあります。

半側身体失認などのリハビリテーション

麻痺側上下肢に対して非所属感があると、麻痺側の管理不足がみられます。
言語性の手がかりや動作の手順の言語化をしながら、管理を向上することが可能かもしれません。しかし、妄想性誤認がある身体パラフレニアは改善しにくいと言われています。
麻痺側上肢を非麻痺側空間に持ってきても非所属感は改善しないことが多く、非所属感の原因と考えられる半側空間無視へのアプローチを行うことが有効になる場合もあるようです。

引用・参考文献