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リハビリ専門職(作業療法士)の私が、肩こり、肩の痛み、腰痛、膝痛、骨盤トレーニングなど、「自分でできる」をキーワードに対策方法を伝授します。

片麻痺に対する病態失認とリハビリテーション

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片麻痺の存在を無視したり、否認する症状を、片麻痺に対する病態失認といいます。今回病態失認について、文献を参考に知識の整理をしていきたいと思います。

 目次

片麻痺に対する病態失認とリハビリテーション

病態失認の症状と検査

片麻痺に対する病態失認は主に検査者の質問により判明します。
検査では一般的な質問と特異的な質問を用い、段階的に行っていきます。
この両方の質問に対して麻痺側に対する答えが得られない場合、病態失認と判断する事が多いです。
①入院している理由や「具合はいかがですか」の質問について
脳卒中などの診断名を挙げたり、検査が必要と言われたなど、医者にそう言われたという態度を示す。
②「左手を挙げてください」の質問に対して
左手が上がらない事を示すと、動かない事に気づく場合と気づかない場合があります。この時、麻痺側上下肢を体の正面から右側に提示する事が必要です。
半側空間無視や半側身体失認などがないかの評価も重要です。
③「左手が自分の力で上がりますか」の質問に対して
左手が上がらない事を示すと、「疲れている」「痛い」などの理由をつける場合もあります。
④手が挙がっているかの確認に対して
「挙がっている」という場合があり、これを運動性錯覚と呼ぶ事もあります。

下肢の病態失認があると、行動としてベッドから立ち上がろうとしたり、トイレに行こうとして転倒する可能性もあり注意が必要です。
病態失認のスコアとして下記のものがあります(Bisiachら)。

スコア0

自発的に、または「具合はいかがですか」のような質問に対して、片麻痺に関する訴えがある

スコア1

左上下肢の筋力に関する質問に対して、障害の訴えがある

スコア2

神経学的診察で運動麻痺があることを示すとその存在を認める

スコア3

運動麻痺を認めさせることができない

病態失認とともに見られやすい症状として、左半身の固有感覚障害、半側空間無視見当識障害や、半側身体失認があります。また軽いせん妄や思考力、思考柔軟性の低下、問題解決能力などの障害も見られることがあります。
両手動作が含まれる作業により、その失敗と経験に対する学習の有無があるかといった動作面での評価も必要になります。
病態失認には、患者ごとに症状は異なり、
①自分の麻痺に対する知識/意識の障害
②動かないことにその場で気づかない無自覚
③麻痺の結果生じる能力障害に対する無自覚
④他の症状(無視など)による修飾
があります。

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病巣

右半球に多く見られます。島、皮質下構造の病巣が重要であると言われており、また大きな脳血管障害、高齢者、発症前の認知症の存在も発言に関与すると言われています。

メカニズム

病態失認は左半身の重度感覚障害、半側空間無視、知的能力の低下、半側身体失認とともにみられることが多く、複数の脳領域の病巣により障害が複合することで起こる可能性があります。
運動の監視障害説として

Bertiらは、片麻痺に対する病態失認は、運動野と運動前野を含む病巣によって生じるとし、この領域が動作の自己監視に関わっていることを示唆した。すなわち、運動・動作の意識的な監視には、監視される一次過程(運動・動作のプログラミング)から生理学的、解剖学的に近接した運動前野が重要である。その損傷により、運動監視の過程が障害され、一方で、意図した運動の表象が形成されると、現実の運動状態との区別ができず、「動かせる」という誤った信念が生じると考えた。

高次脳機能障害学 第2版 P176

ということが言われています。
病態失認では、運動しようとする際の、先行する計画に基づいた予測情報の優位性が病的に強調された状態と考えられ、実際の運動と運動予測状態との間の比較装置が機能していない状態であるとも考えることができます。

リハビリテーション

病態失認は主に急性期に起こる症状で、慢性期まで持続することは少ないと言われています。
しかし、運動麻痺があるにも関わらず立ち上がり転倒したり、両手が使えるつもりになっており、麻痺があるなりの動作方法の学習が困難といった問題が出る場合もあります。
病態失認に対するリハビリテーションは確立されておらず、エビデンスのあるものもありません。
一つの方法として、患者自らの片麻痺状態を撮影したビデオを見せると、片麻痺の意識が出現したという報告もあるようです。運動の監視障害に問題がある場合、このような方法が有効になるかもしれません。

引用・参考文献